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最近の記事

【彼の煙草】

 目が覚めると部屋にわたし一人だった。彼は、あの人はもう居ない。  思い出と寂しさを置き去りにしてわたしの元を去った。 「あっ──これって」  煙草だ。テーブルの上に見慣れた煙草が置いてある。彼の忘れ物。  煙草を吸っている彼の姿が好きだった。  わたしは慣れない手つきでその煙草を咥え、火を付けた。 「げほっ……まずっ」  初めての煙草。どこか懐かしい味がした。

    • 【共に】

      「それじゃあ行こうか」 「うん。よろしく」ぼくは手を差し伸べた。  きみは嬉しそうに、ぼくの手を握りしめた。  小さくて少し冷たい手。思わず力が入った。  反応するようにきみは握り返してきた。  どこまで行けるかなんてわからない。それでも進もう。  きみと一緒ならどこへでも行ける。そんな気がするんだ。

      • 【因果】

        「──それじゃあ、さよなら」 「あ、うん。じゃあね……」  彼女は素っ気なくにそう告げるとぼくに背を向けた。  何も言えず彼女の背中を見つめていると、彼女がこちらを振り返った。 「……ありがとう」 「あっ──」ぼくは言葉に詰まった。  それは彼女に想いを告げたときの返事と同じ言葉だ。  始まりと終わりが同じ言葉なんて因果なんだ。

      【彼の煙草】

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