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売り手の味方!あの名アドバイザーに聞くM&Aノウハウ②【ブルームキャピタル・宮崎社長】|Vol.289-291

今回はM&A BANKお馴染み、売り手支援に特化したアドバイザリーとして知られるブルームキャピタル代表の宮崎氏、3度目の登場です。
今回は、氏がこれまでに支援してきた‟高額売却事例”から抽出されたノウハウをお届けします。
売りやすい・評価されやすい会社とは、売るタイミングはいつ決めるべきか、そして、気になる超高額ディールについても伺いました。

▶宮崎社長の出演動画 一気見はこちらから◀

■宮崎淳平 株式会社ブルームキャピタル 代表取締役社長
ライブドアグループ、株式会社セプテーニ・ホールディングス、株式会社社楽にてM&Aアドバイザリー業に従事。その他にもプライベートエクイティ投資案件、資金調達案件、及びファンド組成・運営を多数経験。2012年にブルームキャピタルを創業。同社は会社売却に特化した日本随一のファームとして知られている。『会社売却とバイアウト実務のすべて』著者。

#289  【高額売却事例から伝授!】売りやすく高評価される会社の条件

売却しやすい会社

①利益が出ている会社
将来利益を評価して意思決定できる買い手ばかりではない
「今」利益が出ているのは買い手にとってわかりやすい魅力

特にバイアウトファンド(PEファンド)はEBITDA3億以上を望む
2~3年前までは1億円以上が基本スコープだったが、ファンドも規模拡大している
ファンドとしてはよりリターンの大きい案件を好む
銀行が提示するLBOローンの条件が厳しいことも影響
一時的な要因による利益の上下より長期的な傾向を見られる

*LBO
買い手が借入を使って買収する方法。ファンドがよく用いる手法だが、一定規模の金額でないと成立しない。

②相場よりも安く買える会社
類似会社との比較やDCF法からの算定よりも安ければ買われやすい

より高い倍率で買われやすいのは、利益水準が大きい会社
利益規模が小さければ「自分でもできる」と思われる場合もある
利益が2~3億以上出ていれば希少性が高く、買い手からの引きも強くなる
営業利益が5~10億円規模になると、10倍以上で買われる可能性も出てくる

LBOの審査では実質の営業利益を見られる
節税や役員報酬・保険等は割り引いて評価される

評価されにくい会社

①市場が小さい
数年後に大きくなる見込みがある市場で利益が出始めている場合は評価される

②人に依存している
社長の力によるところが大きい会社、被リンクで持っている開発会社など

③収益のぶれが大きい
理論上も企業価値評価が下がる

④一発型のビジネルモデル
収益は大きいがいつ上がるかわからないものは評価しにくい
積み上げ型であれば価値が見出しやすく、収益のブレも小さくなる

⑤法的リスクがある会社
薬事法、下請法、立地法などの違反が疑われる場合は安くなりやすい

コロナの影響は?

本質的にはないものとして評価するのが正しい
いつかは収束する、収束すれば業績も戻るはず
交渉上はコロナを理由に評価を下げられるだろうが、気にしていない可能性も高い



#290  【高額売却事例から伝授!】売却するタイミングの決めかた

売却時期はどうやって決めるべき?

①市場の景気がいいとき
半年単位で市場環境は変わるので、動きを見逃さないように

②金利が低いとき
調達がしやすく、市場にお金がまわる

③競合他社が積極的にM&Aを仕掛けているとき
他の企業もやろうと考えている

買収経験がある会社は慎重になっていることもある
以前のディールで失敗しているケースに注意

市場も会社の業績もいい=売り時 とも限らない

売った後、経営者が何をしたいのか が大事
売る段階によって得る金額も違う、金額によって売却後にできることも変わる
売却を先送りする場合の企業価値向上の蓋然性とも比較すること

何をしたいかが決まっていれば、必要な金額もわかる
たいていの事業は3億円あればできる
またイグジットできる自信があるなら、調達も活用すればさらに元手を抑えられる
投資銀行に高額を預ければ、利回りで生活費を得ることも可能

今の時点で10~20億で売れる、でもさらに30~40億円分まで伸ばすことができそうなフェースに入っている場合は特に、経営者個人の人生設計について話すそうです。

売り手にとっていいM&Aとは

①価格が高い

②価格以外の条件がいい
特に時間が貴重な若い経営者にとって、キーマンズロックは重
アーンアウトや表明保障の最適化も大事、買い戻し条項にも注意

*買い戻し条項
売買契約をする際、一定の場合に対象物を売り主が買主から買い戻す特約を設けることがあり、その条項のことを指す。
ベンチャー投資をしている大企業は支配権が移動するM&Aの際にも買い戻し条項を入れることがあるが、売り手からすれば取締役選任権も持つ買い手にも責任があるため、承服しがたい。
宮崎さんの経験からは、そのように伝えればほとんどの場合理解を得られるとのことなので、安易に聞き入れないよう注意しましょう。
(ただし残っている契約がある場合は、買い戻し条項を入れておかないと不本意な譲り方になってしまうおそれもあります)

ファンドに持っていくタイミングは、余裕があれば考慮する

出資を受けやすい条件は多少あるが、それに合わせていくほどのことではない
ファンド組成直後は投資ニーズが高いのは事実
ただし、最初の案件は失敗できないので、リスクの低いものが好まれる



#291  超高額ディールはどう起こる?

超高額ディールはどう起こる?

パターン①EBITDA10倍~20倍の高額ディール
利益5億以上、入札方式で、ファンドがLBOを活用して買うことが多い

パターン②EBITDAでは測れない程の高額ディール
買い手が大手の事業会社であることが多く、さらに2パターンに分かれる
1.削減できる高額なコストがあり、実態の利益が決算書上よりかなり大きい場合
(コスト例:役員報酬、保険、広告費、減価償却 等)
2.確実にシナジーが見込める場合
(公告収益化していない数億単位のユーザーを抱えている 等)

‟確実にシナジーが見込める場合”とは
購買層と似ている大量の新規ユーザーを抱えている
そのうちに何%かに確実にクロスセルできる商品やチャネルを持っている

超高額ディールには必ず‟トップ5レベルの人物”が関わっている
大規模ディールが決まるときはそれなりの立場の人物がディール責任者として動いている

とはいえ、売り手側がトップ5の人物を引っ張り出してくることはできません。
売り手側にできるのは、やはり相手にそのくらい魅力を感じてもらえる会社にすること、より魅力を感じてもらえそうな買い手を見つける努力をすること、この二つだろうとのことでした。



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