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散花集第1期(001-100)

100
花は散ります。有機体は解体します。存在は空想です。有機体とはみなさんのことです。2017/3-2018/4
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2018年3月の記事一覧

086

ATMからお金を引き出そうとしたら、紙幣の代わりに手紙が出てきた。そこには面会謝絶の旨が明記されていた。

085

むかし好きだったロボットのおもちゃが動かなくなっていたので修理に出した。大卒になって帰ってきた。

084

失業して家をなくした男が防寒のために段ボールを探している。段ボールは何も知らずに家を探している。家は男を探している。

083

下手な絵を描くと目の肥えたイーゼルが暴れて振り落としてしまう。

082

近年、子供を産んだ人形の夫婦を人間として扱えという声が大きくなっている。

081

泥棒が金庫を開けると中から持ち主が出てきた。

080

まだ夢と現実の区別のついていない赤んぼがビルの二階と三階を入れ替えて遊んでいる。

079

鉛筆で描いた家に住んでいる。

078

卵を割ったら中から出てきた何かが目にも留まらぬ速さで物陰に身を隠した。

077

「星を拾った!」と興奮して見せてきた姪の鞄を覗き込むと、中が宇宙になっていて底の方に地球によく似た星があった。驚いて顔を上げると見たこともない生命体がじっとぼくを見ていた。

076

美術館に来ている。珍しいことに順路が二つに別れていた。せっかくなので友人と二手に別れて進むことにした。ぼくの進んだ矢印の先には「病気」と書かれていた。そういうテーマなのだろう。わくわくして進むと、空間がぐにゃぐにゃ歪んでいるように見えたり、学芸員が医者の格好だったりした。さらに進むとベッドが並んでいる小部屋が現れてそこで数人の患者が療養していた。この空間全体が作品なんだろうかと思っていると「そちら

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075

プレゼントをもらった。箱を開けるとまた箱がある。その箱の中にも箱がある。「これなに?」と聞くと、彼女は素晴らしい笑顔でぼくの頭上の蓋を閉めた。

074

踊っている女性をカメラに収めた。しかし写真を見ると寝そべっている彼女がいた。そんなはずはない。この人はずっと踊っていたのだ。この不思議な現象を本人に問いただすため、こちらに来るよう指示した。彼女が踊りをやめると今度は写真の中の彼女が立ち上がって踊り始めた。

073

虫取り網を背負って出掛けた少年が飛行機を捕獲して帰ってきた。