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対応関係と背理法を使って反論をする

今回のnoteも、本人訴訟の「論理学」です。「対応関係と背理法」について述べていきます。

まず「背理法」とは、第75回noteで説明した演繹法の一つで、「ある事実を仮定して、その仮定のもとで演繹を進めていくと矛盾が発生することを示すことで、その事実を否定する」という手法です。「対応関係」とは、「その仮定のもとで演繹を進めていくと矛盾が発生すること」をみるプロセスと考えればよいと思います。

次の具体例で見ていきましょう。

ソリューション営業部には、勤続年数、営業成績、残業時間のすべてが異なる従業員A、B、Cの3人がいる。同部門の総務課長は、この3人について次の①②③を把握している。

① Bの勤続年数は、2番目に営業成績が良い従業員の勤続年数よりも長い
② Cの勤続年数は、Aの勤続年数よりも長い
③ 残業時間が最も長い従業員の勤続年数は、Bの勤続年数よりも長い

ではまず、「対応関係」表を作成してみます。

対応関係‗1

次に、この「対応関係」表に、①の状況を反映させてみます。すると、「対応関係」表は次のようになります。

対応関係‗2

つまり、①から、従業員Bの勤続年数の長さは3位ではないこと、従業員Bの営業成績の良さは2位ではないこと(従業員Bは営業成績の良さが2位の従業員とは別人であること)がわかります。よって、この「対応関係」表のようになります(赤色のバツ印)。

次に、同表に②の状況を反映させると、次の表のようになります。

対応関係‗3

つまり、②から、従業員Cの勤続年数の長さは3位ではないこと、従業員Aの勤続年数の長さは1位ではないことがわかります。よって、この「対応関係」表のようになります(オレンジ色のバツ印)。

そして、同表に③の状況を反映させると、次の表のようになります。

対応関係‗4

つまり、③から、従業員Bの残業時間の長さは1位ではないこと、従業員Bの勤続年数の長さは1位ではないことがわかります。よって、この「対応関係」表のようになります(黄色のバツ印)。

以上の「対応関係」表からわかることは、「従業員Bの勤続年数の長さは2位である」ということです。とすると、次の表のようになります(緑色のバツ印を追加)。

対応関係‗5

つまり、勤続年数の長さは、Cが1位、Bが2位、Aが3位ということになります。そこで、もう一度、①「Bの勤続年数は、2番目に営業成績が良い従業員の勤続年数よりも長い」を見てみます。

すると、Bの勤続年数の長さが2位なので、①から「2番目に営業成績が良い従業員」の勤続年数の長さは3位ということになり、すなわちその「2番目に営業成績が良い従業員」で勤続年数の長さが3位の従業員はAということになります。このことを表に反映すると、次のようになります(青色のマル印とバツ印)。

対応関係‗6

さらに、もう一度、③「残業時間が最も長い従業員の勤続年数は、Bの勤続年数よりも長い」を見てみます。

すると、Bの勤続年数の長さが2位なので、それよりも長い勤続年数を持つ、つまり勤続年数の長さが1位の「残業時間が最も長い従業員」はCということになります。これを表に反映させると次のようになります(グレーのマル印とバツ印)。

対応関係‗7

具体例における①②③の「対応関係」からわかることは、

■ 勤続年数の長さ:1位はC、2位はB、3位はA
■ 営業成績の良さ:1位はBまたはC、2位はA、3位はBまたはC
■ 残業時間の長さ:1位はC、2位はAまたはB、3位はAまたはB

ということになります。ここでは、確定できていない情報を仮定してみることで、それが「あり得る」ことなのか、それとも「あり得ない」ことなのかを明らかにしています。つまり、「背理法」の手法が使われているのです。

背理法は、労働審判や民事訴訟において反論をするとき、有効な手法になる場合があります。相手が主張する事実が存在すると仮定して演繹を進めると、どうしても矛盾が発生してしまうこと、他の立証された事実と整合しないことを示すわけです。ぜひ、この対応関係と背理法の手法を参考にしてみてください。

今回は以上です。ここまでお読みいただきありがとうございました。次回をお楽しみに!

街中利公

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