ぼくは　あんたと同じ
残酷な目をした男を見た
目しか見えない　この時世
あんたと同じ目をした
男　女　男　女　若者　年寄
この東京にはずいぶんと大勢の
残酷な目をした輩がいる
あんた　目だけで
残酷な人間だと分かる
前は顔が見えたけれど
目だけになっても　それは変わらない
マスクで顔の半分も分からない
目だけしか見えない
男　女　男　女　若者　年寄
人の波が　波が　波が
音を立てずに押し寄せる
きょうも
地下鉄のエスカレーターを上がり
改札口に向かう途中
残酷な目を見た
目だけで残酷とわかる男
一瞬
あんたか　と思った
違った
あんたよりは　ずっと若い男だった
でも　同じ目つきで歩いてた
目が同じだから
あんたじゃねぇか　としばらく見ていた
男　女　男　女　若者　年寄
人を　人とも思わず
自分第一で生きてきて
人を　人とも思わず
踏みつけてゆくことを
平気でできる連中
残酷さ　冷酷さをたたえた
あの目
同じ目をした　あんたと同じ目をした
そんな連中の前で
大勢が　僕と同じように
尻尾を巻いて生きてゆく
そんな小者も　数限りない
それが世の中さ　この東京さ