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「鍋を食べた夜」

今泣いたカラスがもう笑う
――ではなく――
逆なのだ
笑っていたはずなのに
泣くのではなく 怒りだす…

こってり こってりと
絞られました ワタシ

この何カ月 いや この何年――20何年か

ぼくの この行状について…
絞りにしぼられて――

そんなこと言う 訴える
その相手は 唯ひとりなのだけれど
矛先を向けられた存在である
ぼくは 反論もせず 反論もできず

「ご説ごもっとも
 はい 反省しております――」
頭を下げ 泣いたふりをする

向こうは 酒も入っており
時間がたつにつれ ヒートアップ
テーブルをたたき
「わかってるよね わかってるよね」
と 連呼する

何を どうわかれと 言うのか――

はいはい――
おっしゃるとおりでございます
何を言われても
反省の姿勢を見せながらも
受け流す
もちろん 向こうもそれは見透かす

おっしゃる通りにいたします――
反省しているのです――
ひたすら身を縮めて言い続ける

役所で働く あなたや息子の
迷惑になってはいけない
身辺はきれいにしておかねばならない
わかっております
そうしております
恭順の姿勢を見せ
反省 更生の姿勢――その意思表示をする

こういう時――
ああいう時――

今 この状況下では すべて
ガス抜きの場にするのである

言葉にも
態度にも
向こうの怒りを増幅させるようなことを
見せてはいけない――
それに尽きる
そんなことはわかっている

ぼくは とにかく
嵐が過ぎるのを待つ

ほんの10分前まで
夫婦2人 穏やかに
鍋をつついていたはずの「夜」
夜だったのに――

いやいや
そんな穏やかな時だから
何かが起きる
何が起きても
おかしくは ない…

鎮まらない 嵐は…ない

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