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■心のささえである自分の詩

「詩の本」を読んで(31)

◇黒田三郎「詩の作り方 」 明治書院、1993年5月刊)

僕は2020年暮れから詩を書き始めた。読み始めたのもその1-2カ月ほど前で、まだ3年に満たない。
何度も書いてきたが、「現代詩」に関心を持ったきっかけは、北村太郎の存在をたまたま日経新聞の文芸欄で読んで知り、その半生を描いたドラマ「荒地の恋」(WOWOW制作、アマプラ配信)を見て、詩と詩人たちの生き方に興味を持ったのである。原作はねじめ正一の同名小説。
詩誌「荒地」のメンバーの一人でもある黒田三郎は元NHK、北村は朝日、他に読売の中桐雅夫…とマスコミに在籍したメンバーが多いのも特徴だ。

そんなことから黒田には親近感を持っていた。
彼の書く詩は、妻や娘をうたうことも多く、その戦争体験を下敷きにした死生観などについて書いた詩は、決して「現代詩らしい表現」を多様しない。それも僕の好みに近い詩人である。

詩、詩作についての本は多数あり、何冊か読んできてはいるが、本書も読みやすく、黒田らしい文章でつづられている。

曰く

「詩は生活する人間としての『たてまえ』をつきぬけて訴える個人の『ほんね』――僕はこのふたつの間の矛盾や葛藤について考えます。(略)人間としての心の平衡を保つためにある『たてまえ』をつきぬけて『ほんね』が表に出てきます。そこには詩の誕生があり、詩のことばがあります」
「日常のありふれた話しことばも、メタフォアとして再生するとき、それは詩のことばとなる」
「ひとりの作者にとって、詩はその心をささえるものであれば、それで十分――かくことが自分自身にとって何ものにもかえがたいものであれば、それでいい」
「心のささえになる。それだけで十分」

詩の作り方

よいことを言ってくれるではないか。

図書館にはある本なので一読をすすめたい。

タイトルの「作り方」というのが、ちょっと気になるが、これは他にも〇〇の作り方などと書いたシリーズのひとつなので、仕方ないのかも。

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