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「試された」

作家 黒川博之先生の取材を終え
一緒に喫茶店を出た
――先生 これからどちらへ?
「ああ 京都に行きますわ」
ぼくは手を挙げた タクシーが近づいた
――では東京駅まで送りますね
「いや この車で京都まで行かせてもらいますわ」
――えっ 車で ですか…

目の前で止まったタクシーのドアが開いたところで 運転手に乗らないからこのまま行ってくれ と伝えた
冗談じゃない 京都までタクシーで行ったら10数万円はかかる
そもそも 何時間かかるんだ
いぶかしげな眼付を先生に向けた
「あら 行ってしもうた」
――先生 ご冗談でしょ 新幹線でしょ やっぱり…
「いや ええんです 車で帰りたかったんやわ
お宅チケット出してくれませんの?」
連載でも書くという話なら それもないでもないだろうが
新刊本の紹介を兼ねたインタビュー さほど長くもない記事にそんな経費をかけられない かけるわけがない
しかし この先 先生と仕事の付き合いがないとも言えず…
この男 ぼくを試しているのか…
とも思う

しかし 仮にチケット渡して10数万円の請求が来たら…

そんな厄介はごめんだ

――じゃ 先生 すいませんが ぼくはこちらで失礼します

ぼくはこの先 この先生と大事な仕事はないもの と判断した

「ちっ」

背中に作家の舌打ちを聞いた

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