見出し画像

【詩論】わかりやすいとわかりにくい

「文学」と「作家」への道(32)

◇わかりやすいのは石垣りん

文芸評論家、若松英輔氏が連載を持つ日経新聞朝刊「本との出会い」(12月23日付)で、「石垣りんの詩と随筆」という文章を寄せている。

僕は詩、現代詩に触れてようやく3年という身だが、石垣りんは一番近く感じる詩人である。
言葉が分かりやすい、ひとりよがりの表現がほとんどないからだ。

若松氏は、下記のように書いている。

家の近くの古書店で石垣りんの詩集『やさしい言葉』に出会った。詩を書くようになるまで私は彼女の存在を知らなかった。一読して強く打たれた。彼女に「ことば」と題する詩がある。〈生き生きと/こころに浮んだ詩の一行が/ふと逃げてしまうことがある。/釣りそこねた魚のように/それっきりのこともあれば/月日をへだてて/また目の前にあらわれることもある。〉(『石垣りん詩集』)大切な言葉は自分のなかから湧き上がる。それとの邂逅(かいこう)をじっと待つことができるか。言葉との出会いの秘訣はここにある。

12月23日付日経新聞朝刊

湧きあがる言葉は人それぞれ。
僕は、過去にも書いてきたが、分かりづらい、独りよがりの言葉が並ぶ――言葉のサラダのような現代詩に共感することは少ない。今の現代詩でも数十年前の現代詩でもそれは同じ。
名詩、現代詩のアンソロジーにあるようなものは、分かりにくくてもさすがに、何かを感じさせてはくれるが。あの詩誌に載る投稿作にはどうにも首肯できない。

◇たいへん参考になる松下育男さんのnote

などと考えていたら、noteに松下育男さん(オンラインや講演では面識があるので、さん付)がつい最近、下記のようなテキストを投稿されていた。

詩はわかりやすく書くべきか

おっしゃるとおりである。

それぞれの詩のあり方をすべて尊重する。

その後に、読んで自分により深く入ってくるものを、心が動かされたものを、自分にとっての優れた詩として受け止めたい。

そういうことなのだ。

松下さん、過去の詩の教室を書き起こしたと思われるものを7月からかなりの本数、noteに投稿されており、たいへん参考になる。勉強になる。ありがたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?