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環境も人も大切にしたい時、梱包・パッケージはどう選べばいいの?

2023年3月16日。東京都港区のSHIBAURA HOUSEで、カユーパッケージ株式会社主催、弊社による企画・運営のもと「環境も人も大切にしたい時、梱包・パッケージはどう選べばいいの?」と題したイベントを開催しました。

私たちmorning after cutting my hairとしては、これまでもPRやブランディングに携わってきたKAYU PACKAGEについて伝える、コロナ禍収束後初のオフラインイベントの企画となりました。

商品を傷つけず、大切な人に届いてほしい。
そんな想いから美しく丁寧な梱包を心がける日本特有の文化は、受け取った人への配慮という魅力がある一方で、過剰包装やプラスチック包装の廃棄における環境問題など向き合うべき課題があることも事実です。

そこで、ごみの中でも梱包・パッケージのこれからについて焦点を絞り、作り手として、また消費者として、一緒に悩み、考えることを目的に本イベントを開催しました。

この記事では、本イベントに参加して学んだことや感じたことをご紹介します。梱包・パッケージの選択における今後のアクションに役立ててみてください!

登壇者紹介

本イベントでは、小売・パッケージの製造や廃棄の仕事に携わる3名の代表者が登壇しました。

ごみの学校 運営代表 寺井正幸(テライ マサユキ)
1990年京都府亀岡市生まれ 大阪在住。兵庫県立大学環境人間学部卒業後、産業廃棄物処理業者に入社し、産業廃棄物処理を中心とした営業を行う。ビジネスマン・主婦・子供までみんながごみのことを正しく知れる場を提供したいと考え「ごみの学校」を立ち上げる。2年間で合計3500名にごみに関する講座を実施。facebookグループ「ごみの学校」でも1600名のコミュニティを運営している。

カユーパッケージ株式会社 CEO 王克文(ワン カツフミ)
1983年、台北生まれ。3歳の時にジャカルタに移住。国際基督教大学(ICU)で学士号を取得。卒業後、フランス系投資銀行東京支店に5年、香港に5年勤務。家業である木製品合板、木材の貿易を家業とし、KAYU PACKAGE日本法人を設立、創業者兼CEO。現在は、東京・北米に拠点を持ち、プラスチック廃棄物の削減を使命とする。

SOLIT株式会社 代表取締役 田中美咲(タナカ ミサキ)
障害やセクシュアリティなどの違いを超えて、だれでも自分の好みや体型にあわせて部位ごとにカスタマイズのできるインクルーシブファッションブランド「SOLIT!」創業・代表取締役。2022年世界三大デザインアワード「iF DESIGN AWARD」にて最優秀賞受賞。また、社会課題解決に特化した企画・PR会社「morning after cutting my hair,Inc.」創業。

処理を担う立場から見た、日本の容器包装の現状

まずは、廃棄物処理会社に勤め日本のごみ問題に最前線で向き合う寺井さんより、日本の容器包装の現状について共有がありました。

左:寺井さん、右:王さん

日本のごみ処理の容積比率は、容器包装由来のプラスチックが46%も占めているのだそうです。また、日本のペットボトルのリサイクル率においては、法律で定められていないにも関わらず、自主的に洗い分別する仕組みができているため、約97%と世界的に高い水準を保っています。

一方で、その他のプラスチックはマテリアルに戻す割合が40%程度と低い水準に。この原因として、リサイクルの条件にきれいに洗われている・素材の種類ごとに分類されている・同じ種類がまとまっているの3つがあるにも関わらず、洗い方や分別の仕方が分かりやすく消費者に示されていないという課題が挙げられるのだそう。

ごみの話、そして解決策について学ぶ参加者

ペットボトルにおいては当たり前に分別しているけれど、その他のプラスチックはリサイクルのために何をする必要があって、何が問題なのかを知らないことが多い。それが、ごみの処理に関する問題の根幹を担うのだと感じました。

梱包・パッケージのごみ問題に立ち向かう2社

次に「作り手」の視点から梱包・パッケージについてどんな悩みを抱えていて、どんな解決策を実行しているか、また何を大切にしているかについて共有がありました。

事例➀:素敵な体験も、環境への配慮も、どちらも大切にしたい...(SOLIT株式会社 田中)

梱包・パッケージの方法に関しての悩みの事例として、弊社代表でもあり、インクルーシブファッションブランド「SOLIT!」も運営する田中より共有がありました。

多様な人も地球環境も誰もどれも取り残さないことを目指すSOLITでは、特別なデザインはしないシンプルな段ボールに、メッセージが書かれたテープを貼るだけの梱包をしています。また、中の商品を包む布は残布を使用し、環境への負荷を最小限におさえているのだそう。

一方で、こんな悩みも...

田中:一万円も出した商品が普通の段ボールでくるのか...と、届いたときにテンションが下がってしまうということもあると思うんですよね。完全に理解して買ってくれている人ならいいのだけれど、1つのファッションとしてデザインを気に入って買ってくれた人にとっては、商品が届いたときのワクワク感が薄れてしまう。そこのブランディングの部分が悩みです。

環境への配慮も大切にしたいけれど、商品を買ってくれた人の素敵な体験も大切にしたい。このジレンマの中で、1つの正解を見つけることはとても難しいことなのです。

SOLIT田中美咲

事例➁:木材パッケージを1つの選択肢として捉えてほしい(カユーパッケージ株式会社 王克文さん)

プラスチックの容器包装によるごみ問題に対する1つの解決策として、カユーパッケージ株式会社の商品である木材を使ったお弁当容器のKAYU PACKAGEについての共有がありました。

KAYU PACKAGEの木材容器は、日本の伝統的な木製容器に対するリスペクトから開発されています。プラスチックのごみ問題も、日本の文化を活用することで解決のヒントを見つけられるかもしれない。そんな想いで「現代にアップデートした木製容器」を作っていると、まずはプロダクトの紹介をしていただきました。

王さん:たとえ資源が使えなくなったとしても、人々は昔の生活に戻ろうとはしないですよね。だからこそ、私たち作り手は今の生活を保ちながら、いかにいい製品を開発していくかが一番大切だと思っています。

飲食店さんも環境を破壊したくてプラスチックを使っているわけではなく、今はそれしかないから使っているんです。ごみ問題において誰が悪いということはないのだと思います。だからこそ私たちがすべきことは、容器の使い手に「選択肢を与えること」なんです。

KAYU PACKAGEを片手に熱く語る王さん

王さんは、決して無理に自社の商品を勧めるのではなく、あくまでも環境に配慮された「1つの選択肢」として提案することを大切にされていました。

KAYU PACKAGEの容器は、細部まで純度が高く廃棄しやすい自然素材という部分を考慮して開発されています。プラスチックと木材のような異素材を混ぜるということが一番廃棄処理がしづらいことを知っている王さんだからこそ、耐水性や耐油性保持のために内側をプラスチックでコーティングするという手段は絶対に取りたくなかったのだそう。その結果、お弁当容器として使いやすくするための工夫として、耐水性や耐油性があるグラシン紙で内側をコーティングするという方法を取り入れたのだということを、実際の商品を使って説明してくださいました。

木でできたKAYU PACKAGEを解体する参加者

立場が違うからこそ気が付く、「知らなかった」

登壇者の事例共有後、参加してくださった方々を交えて議論を行いました。

参加者:SOLIT!の悩みについて、自分たちの梱包についてお客様に説明した上で、よりデザイン性のある箱に入れてほしいときは別料金にするという仕組みにするのは難しいのでしょうか?

田中:+αでの包装に追加料金をいただく仕組みはすでにあるのですが、とはいえ開けた瞬間に「うれしい!」と思えるのはデザインにこだわっている梱包なのかなと思っていて..

王さん:商品を受け取る側が価値を見出すのであれば、過剰包装自体は悪いことではないと思うんです。包装の後処理の費用をだれが負担するかが決まっていないのが問題だと思っています。

寺井さん:おっしゃる通りで、作り手が単に余分な包装をしていてもそれを消費者が負担することもあるし、そこをどう設計するかは大事だと思います。

作り手は梱包・パッケージを作る段階のみに着目するのではなく、その先の「誰の手にわたって誰が処理するのか」にも着目することが大切なのかもしれません。

参加者も積極的に相談をする場に

他にもこんな話題が挙げられました。

王さん:今日参加してくださった皆さんは、「梱包」や「ごみ」にどんなイメージをもっていて、どんなことが気になっているのでしょうか?

参加者:2つあって、1つ目は、私がデザイナーなのでパッケージやギフトを開けるときの体験。2つ目は、赤ちゃん用の衛生用品を扱っているのでそれを包むものの衛生面です。紙で包むなどのアイデアはあるけれど、梱包のために何か新しいものを作るのも難しくて...

王さん:確かに衛生面、環境面、コスト面、機能面など、梱包方法を選ぶためにはたくさんのことを考慮しないといけないですもんね...

寺井:どんなデザインを取り入れるかの判断においては、➀ポリプロピレンかポリエチレンのもの(リサイクルのための選別機で設定されている確率が高いから)➁紙やプラスチックをはがして分けることができるもの➂黒色でないものの3つの条件を考慮するのがいいと思います。

田中・参加者:黒色でないもの?

寺井さん:リサイクル会社は光を使ったレーザー照射で素材を分けるので、黒っぽいものだと光を吸収してしまってリサイクルできないんです。

参加者の皆さん:知らなかった...!

寺井さん:工程をイメージできないと、どこまでは良くてどこまでがダメなのかの線引きが難しいですよね。だからこそちょっとのことで解決できる部分もあるのではないかなって思うんです。

立場が違うからこそ、新たな発見も

これらの話し合いを通して、いたるところで参加者や登壇者の「知らなかった」「そうなんだ」という声が飛び交っていたことが印象的でした。それぞれ立場の違う者同士が話し合って知らなかったことに気が付いた時、問題に対してするべきことが少しずつ見えてくるのかもしれません。

梱包・パッケージはどう選べば良いのか?

最後に、寺井さんと王さんから本イベントのテーマとなる「梱包・パッケージはどう選べばよいのか」についてまとめの言葉をいただきました。

寺井さん:現時点でパッケージの選び方に正解はないと思っています。ただ、梱包・パッケージを作る人、捨てる人、リサイクルする人のそれぞれが、自分が一度手にしたものは誰の手に渡り、どのように終わりをむかえるかを知る努力をすることが大事だと思います。それができていれば、ある程度コントロールできる。だからこそ、私は本イベントのような、お互いに考えや情報を共有し理解する場をこれからもつくっていきます。

王さん:皆さんに知っておいてほしいことは、「消えるものなどない」ということです。一度生み出したものは、リユースするとしても焼却するとしてもこの地球のどこかに存在し続けます。人は自分の家の中にごみがあれば、ごみを減らしたり再利用したりするためにはどうすれば良いかを考える。でも地球規模になるとそれが見えなくなってしまう。だから、地球を「皆が住む大きな家」として捉えることで、ごみに関する問題の解決につながると信じています。

たくさんのメモ、イベント終わりに

作り手は、消費者が人や環境に配慮した選択ができるように選択肢を増やす。買い手は、自分たちの妥協できる部分や知らなかった部分を明確にし、環境にとって、そして自分たちにとって最適な選択をする。ごみを処分する立場の人は、伝えることで「知らない」から起こる環境破壊を減らす。

それぞれが自分たちの能力をどう活かし、問題に立ち向かうかが問題解決の鍵となります。

小さな工夫や取り組みが、大きな一歩につながるのかもしれません。



本イベントはKAYUPACKAGE主催、弊社企画運営にて行いました

(執筆:清水碧、校正:中西須瑞化)


Consulting for Social challenges with Love. based in TOKYO & SHIGA, JAPAN. ///// 世の中にある「課題」に挑む人たちの想いを伝え、感動と共感の力で、『人の心が動き続ける社会』をつくる。