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はちがつにいる

夏が好きで夏にいたくて、わたしは時に10月まで夏を引きずることがある。
秋が長いと過ごしやすくて本当に良いのだけど。秋はいい季節だ。
ファッションが好き。見ているだけでも一番楽しい季節。夏の鮮やかな色たちも大好きだけど、色を楽しめるのは実は秋だよね。深い色が好き。
さつまいもが好きなので嬉しい季節。このところ柿も好き。チョコレートが常温で大丈夫になってくると嬉しい。
ススキや稲穂の揺れる午後を思うと気持ちがぴかぴかしてくる。月が美しいのも。秋の楽しみはあふれてくるのにね。晩秋には秋を惜しむだろうに。
本当に10月まで暑くて、秋らしい気候を楽しめる時間が短いシーズンもある。夏はじゅうぶん長いのに。わたしは、春だって終わり切らないうちから夏の話をするのに。

初夏と残暑は季節が違う。でもわたしは余さず夏が好きだ。
初夏はわたしを抱きしめてくれる季節だけれど。
乱暴で、さらっていくような夏の始まりを、想えばいつでも、心が溶けるように、何も考えられなくなる。風がカーテンを揺らして、部屋の中までさわやかな空気で満たして、わたしの思考を全部支配する。
春のにおいをわずかに残しているのに、夏の盛りを、終わりに向かう夏を、夏の始まりに、必ず想う。

わたしの夏はまだ終わらない。空の青さが変わるまでは、朝の寒さを感じるまでは。日暮れの早さを見るまでは。
本当は分かってる、8月はもう秋なんだよ。お盆の前にはもう秋のにおいがしてる。陽射しの鈍さを感じ出す。

いつからか、秋に会える誰かを愛する気持ちに気づいたから、秋が来るのをただ寂しくは思わなくなった。
夏は何度でもやってくるのにいつでも離れたくない。
季節はいつでもそばにいてくれる。秋には秋のあなたがいる。
夏を抱いたままでいようとするのは、生きるのがあまりに下手なわたしの生き方そのもののような気がする。
8月が好きだ。わたしはいつも夏でいたい。夏を報せるわたしでいたい。夏の恵みを思わせるわたしでいれたらと思う。わたしの夏をいつも掲げていようと思う。

8月にいる。
8月は、きっとだれよりやさしい。8月を愛している。褪せない。愛しい愛しい残暑を、わたしは抱きしめる。
秋の散歩は何に会えるかな。楽しみだね。
でもわたしは、もう少しだけ夏にいるね。



恐れ入ります。「まだない」です。 ここまで読んでくださって、ありがとうございます。 サポート、ありがとうございます。本当に嬉しいです。 続けてゆくことがお返しの意味になれば、と思います。 わたしのnoteを開いてくれてありがとう。 また見てもらえるよう、がんばります。