見切り品の男

ある意味、この男性も以前書いた「見極められなかった男」なのかもしれない。

私が妙齢だった時のお話(笑)。
彼とは合コンで知り合い、なんとなく始まった。
始まったというか、ブースター段階だったかな。
その人の何をあの当時の私が好んだか覚えてないけれど、見た目は悪くなかったし、ちょっと細かいぐらいの男が当時は好きだったから、かなあ(笑)。
どちらにせよ、結婚前の恋愛は具には覚えていない(ということにしている)。

彼とは何度かデートを重ね、もちろんそういう関係になり、だからといって付き合ってるわけでもないという、ごくありきたりな男女関係だった。
私の方は付き合っても良いかなって思っていたけれど、彼が二の足を踏んでいた。その理由はわからない。

ある時、「あー、この人ダメだなー」って感じたことがあった。
新大久保で韓国料理を食べた帰り、私達は新宿駅まで歩いた。
新大久保から新宿って近いんだよね。徒歩が最も効率的な気がするけれど、あの時の私は「なんとなく酔った勢いの力業でこの男をものにできないかな」程度に考えていました(笑)。

確か、山手線沿いを歩いていた気がする。
今はわからないけれど、当時、あの辺はわりと寂しい道で人通りも少なかった。
その時、なんと私は道沿いにある駐車場で3万円拾ったんですよ! 「ラッキー!これで洋服買おう♪」って思ってデニムの後ろポケットにそれをしまったわけ。
そんな私を一緒に歩いてた彼はたしなめたんですよ。
「危ないお金かもしれないからやめなよ」って。
「へー、案外まともなこと言うんだ」って思ったけれど、基本的に私は落とし物をする人が悪いから拾ったものは私のものという考え。
なので、「危ないお金でもなんでも拾ったから私のもの!」って言いました。で、彼に「半分いる?」と聞いたんですよ。
そしたら「いらない」と即答。


これだけ聞いたらすごくまともな男に思えるでしょ。もちろんそんなわけないよ(笑)。


新宿駅に着いて、当時、私は京王線沿いに住んでて彼は湘南新宿ラインだったから、いつものように東口の階段を降りきった所で別れると思いきや、「改札まで送るよ」と言ってきたの。
「おぉ、これは珍しい」と思いながら少し嬉しかったのね。
で、京王線の改札に着いてもなんだかんだと彼が世間話をしてきたわけ。これもまた初めてのこと。
「なんだろう、少しは私に愛着持ったのかな?」なんて思った私はうぶ?だったね(笑)。


違うんですよ。
彼が愛着を持ったのは私のデニムの後ろポケットに入ってる諭吉でした。


改札目の前で世間話をしていると、デニムの後ろポケットに違和感。
そこに意識を集中していると、彼がそーっと3万円を抜き取ろうとしていたの!!


「それはないだろー、てめえ」。


そう思ったから抜き取った瞬間に、彼の左手を抑えて、「いらないって言ってたよね?拾った私が言うのもなんだけど、それ私のものだから」と言って取り返しました。
彼は悪びれることもなく「あーはいはい」とだけ言った。
腹が立ったけれど、その時点で「もうこいつと会わないわ」と決めたので、笑顔でそれまで通りにバイバイ。

私が何にムカついたかというと、誠実なふりしてすりまがいのことをしたこと。
お金が欲しいなら最初から貰えばいい。かっこつけて私に説教がましいことを言うわりに、


お前のやってることはなんだよ!ってお話。


いつからお金を抜き取ろうと考えていたか知らないけれど、改札まで見送ったのはそれが狙いだった。
軽めに傷ついたね。それ以上に、こんな男と今後会うのはアホ臭いわって思いの方が圧倒的だったけど。
それから私は彼とは一切の連絡をとらず、会うこともしないし電話も何もかも無視してたんだけど、数年後のある日、彼からメールがきました。


なんと会社のアドレスに……………。


そう言えば、初対面の時、仕事に繋がるかもと考えて名刺を渡したんだよね。その名刺を後生大事に彼は持っていたわけです。
もー、びっくり!!よりによって会社に連絡してくることがびっくり!
それでも無視していたの。だってダルいし(笑)。
ふつう無視されたら自分がどう思われているか学ぶじゃない? でも、彼はその後も週一ペースで連絡してきたんですよ。
当時の私が働いていた会社はセキュリティがやたら厳しかったので、さすがにこれ以上はまずい、となり、きつめの返信を送りました。
それ以来、音沙汰なし(笑)。

私の気持ちに気づきながらも付き合うことはせず、男女関係はそのままでありながら誠実さの欠片もない。かつ、お金をくすねようとしたその根性が気に入らなかった。
新宿駅ですりまがいの行為を私にたしなめられたにも関わらず、よく平気で連絡してくるなーって思わない?
厚顔無恥もよいところだし、彼にとっては私はその程度の存在だったんだろうね。


なんとも思ってないからどう思われても問題ない、といったところかな。


数年経って連絡してきたのも、私を昔みたいに都合よく扱えると考えていたのかもしれないね。
バカだよね(笑)。
自分に惚れてた女がいて、その子を大切に扱わなかったくせに、そんな自分に見切りをつけた女がどうしていつまでも自分を昔のように笑顔で迎え入れてくれると思うのかしら?


ぶっちゃけ、そこまであんたに惚れてねーわ。
数回寝たぐらいで勘違いすんな!


私にとって彼の賞味期限はとっくに切れてた。
彼はそのことに気づかないまま数年間を過ごしたんだろうなー、いたいなーー。

見切り品に用はないのよ、永遠に。

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