Happy Holi !!

インドはホーリーという、春を祝うお祭りである。

と書くと、穏やかな春をイメージするのが日本人であるが、雨期・乾期・酷暑期のみのインドの春は、いや、ヴァラナシの春はとんでもなく激しい。
基本的にインドのお祭りはどれもこれも激しいし、無礼講状態になるが、中でも私のいたヴァラナシはお祭りがエスカレートしやすい。ホーリーはその頂点だ。
誰彼かまわず、「Happy Holi !!」といいながら色粉、色水を浴びせる。浴びせられても文句は言いっこなし。そういうお祭りだ。

ホーリーの数日前から、気を抜いて歩いていると、フライングで色水が詰まった水風船を投げつけられる。インドに行く人は要注意。
特にヴァラナシは細い路地だらけなので、逃げ場なし。

当日は、夕方まで外出禁止になる宿も多い。本当に何をされても文句は言えない。怖い話もたくさん聞くが、「出歩くのが悪い」で済まされるのが目に見えている。
一番怖いのは、この日はみんな酔っぱらいである。しゃらーびーである。
インドでは飲酒はあまりいい顔はされないし、飲むとしてもこそこそ飲むのが一般的だが、ホーリーの日は皆、おおっぴらに飲む。
インド人の飲み方はえげつない。酔っ払うことを目的にウイスキーやラムをがんがん飲む。そんな酔っぱらいがやりたい放題やったら、阿鼻叫喚の世界だ。

私の定宿は、隣の宿とくっついていて、屋上を共有している。なので、外に出られない宿の住人達は屋上で熱い闘いを繰り広げる。
最終的には宿関係者の暴走インド人と、外国人の闘いになるのだが。

ホーリーの朝、夜ふかしの私がぐずぐずと寝ていると、宿のオーナーに部屋のドアをノックしまくって叩き起こされる。
「起きろ、ホーリーなのに何してるんだ、madokajee!急いで屋上へ集合!」
あー、ついに始まった、と、この日のためにキープしておいた、そのまま捨てるTシャツとパンツを身に付ける。屋上への階段を上がって、そーっとドアをあけると…

ばっしゃーん。

こんなのが待ち構えていて、寝起きの私の頭上から、バケツで色水を浴びせてくれる。

朝からやり過ぎだよ、君達…。


しかし、このままやられっぱなしではいけない。
色水まみれ先発組と結託して、どんどん色水を量産し、屋上へやってくる人達を次々を襲撃する。
水風船、水鉄砲、バケツ。水を浴びせられるものは何でも使って攻めまくる。攻撃は最大の防御なり。ためらってはいけない。
ホーリー事情がわからず戸惑っている女の子なんぞは恰好の獲物だ。
“Nooooo! wait wait madokajee!!! please wait!”
なんて言われても待たないよ。悪魔の微笑みを浮かべて、逃げようとする首根っこをつかまえて、顔に色粉をべったり塗りまくって差し上げる。
これぞ、宿の主の正しい姿。

そうやって、誰も彼もが色水まみれになった頃、屋上のレストランから爆音でボリウッド系ポップスが流れ始める。そうなったらもう、酔っ払ったインド人はじっとしていられない。テンションMAXで踊り始める。これが、なかなかの地獄絵図。
ぼんやりしていると、マッチョなインド人男性数名にいきなり抱え上げられ、頭上でぐるぐる回されたりする。映画じゃないんだから、やめて。怖いから。

ぐるぐるされた後の私もいるけどね…。


こんな狂宴がお昼過ぎまで続き、全力を使い果たし、色水まみれになった宿の住人は共用シャワールームに並ぶ。自分の部屋にシャワーがついていても、これだけ色がべったりつくと、背中なんて1人で色を落とすのが不可能。だから、きゃーきゃーいいながら女子2人ずつで大きなシャワールームに入って、協力して色を落とす。それでも数日はうっすら色が残る。

シャワーをあびて、着替えて、宿で供されるホーリースペシャルランチを食べて、疲れ果てて、お昼寝をする、ここまでがホーリーのお決まりのコース。

使い捨てコンタクトがこんな色に染まる。


こうして、お昼寝を終え、夕方になると、街は平静を取り戻す。

ホーリーが終わると、途端にヴァラナシは気温が上がり始め、乾期から酷暑期へ季節が変わる。
4月になったら40℃コースまっしぐら。

ああ、今頃は明日に向けて、みんな気合十分なんだろうな。今の体力でついていけるかどうか疑問だけれど、やっぱりホーリーには参加したいなー。



©madokajee


#雑文


※コンタクトの写真以外は、同じ宿にいたヨーロピアンの男の子に以前もらったもの。感謝。

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