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何気ない娘との日常こそが、人生の宝もの

娘の高校留学を機に、メルボルンに移住して11カ月と1週が過ぎました。日中は30度を超える日もありますが、夕方になると一気に気温が下がり、夜は虫の声がよく聞こえ、少しずつ秋の気配を感じています。


お財布事情を知りつつも、外食をしたがる娘

「ねえ、ねえ、今日は外食しない?」

このセリフ、娘がよく言います。日本ではそこそこ外食していましたが、メルボルンの物価に日々怯えているので、今は週に1回と決めています。

「平日は、絶対しない。さぁ、ごはん作ろう」
この“絶対”という強い言葉に、私の揺るぎない意思があります。

こんな感じで、私たちは、ふたりで晩ご飯を食べ、ふたりで食器を洗います。

娘は1月から11年生(高校2年生)になり、選択授業になりました。昨年までは月〜金でしたが、今年から土曜日もひとコマ授業が入り、週6で学校です。

すっかり制服も着こなしています。

11年生になり、土曜日も授業

金曜日になると、だいぶテンションが下がっている娘。

「はぁ、明日も学校か……。しかも早いんだよなぁ」

「まぁ、しょうがない。でも、ひとコマじゃん」

「もう、寝るわ」

肩のチカラを落とし、自分の部屋に入ります。“娘よ、負けるんじゃない”…、私は心のなかでつぶやきました。

土曜日は朝が早いせいか、午後はほとんど家でゴロゴロしています。NetflixやYouTubeをみたり、友だちとチャットしたり、電話したり……。

「ねぇ、ねぇ。今日は外食しない?」

夕方、またもや娘からいつものセリフが飛び込んできました。

「今日はもうご飯の用意をしたから、ダメだよ。さぁ、食べよう」

「うん、そうだね……」

娘も私のお財布事情を十分理解しているので、それ以上のことは言いません。

ある日のごはん。ふたりともサラダが大好き。

週イチの外食。サウスバンクへ

翌日の日曜日、娘は午前中から友だちとシティのほうへ遊びに行きました。私も外出しまして、自宅に戻ったのは15時過ぎで、娘はまだ帰ってきていません。

夕方、娘からLINEが届きました。

「ねぇ、ねぇ。今日は外食しない?」

今週3回目のリクエストです。また断ったら、さすがの娘も腹立つだろうと思いました。

「いいよ、行こう」

私たちはシティにある、フリンダース駅で待ち合わせをしました。サウスバンクを紹介する記事依頼があったので、ヤラ川沿いをふたりでふらふらと歩きました。ゆっくり日が落ち、気温もちょうどよく、夜風がとても気持ちいいです。

「今日はなに食べたい?」

「そうだね、何でもいいよ」

「じゃぁ、ピッツェリアのdocにしようよ、サウスバンクにもあるんだって」


メルボルンでTOP3に入る人気店ですが、運が良かったのか、待たずに入ることができました。ヤラ川沿いではありませんが、広いテラス席もあって、遠くにはプロムナードが見えます。

「やっぱり、外食はいいねえ」

娘はニコニコしながら、おいしそうに大好きな生ハムのピッツァをほおばっています。

「だね。私たち、毎日がんばってるから、週イチのご褒美はよしとしよう」

「だね。また、来よう」

ゆっくり二人で食事をし、外を出るとすっかり夜になっていました。

「サウスバンクって、夜景がこんなにキレイなんだね、知らなかったよ」

夜になってもプロムナードは賑やか。

夜はほとんど出かけないので、シティの高層ビルの美しさに、私は言葉を失いました。ヤラ川の水面にキラキラとビルの光が反射して、日中のそれとはまったく世界が変わっています。

帰りのトラムで、娘の隣に座りました。

「今日は、いい一日だったね。また行こう」

「そうだね、来週もまた外食しよう」

来週からメルボルンではフェスティバルが開催され、夜は花火が上がるそうです。

「ねえ、ねえ。今日は外食しない?」

今度は私から誘ってみます。

娘とこうして、ふたりで過ごす時間も限られています。日常でありながらも、どこか非日常のような、不思議な時間が流れています。

うんと時間が経ったとき、何気ないこの一日が、私の人生の宝ものになりますように。

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