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雨宿り

カトマンズの街角で、ホームステイをしていた家のみんなとヨーグルト屋に入った。
ネパールでは大人数のファミリーで住むのは当たり前らしく、この日はみんな仕事を休んでくれた。子供も含め総勢十人くらいだった。僕もその時マハラジャンファミリーの一員のような気分でいた。

 ひとり旅なんかで、観光地を歩くと平面的、地理的な旅に止まってしまう。でも現地の人と一緒に歩くことができると、行く分か立体的にその土地が見えてくる。そうして歩かなければ、看板もない、小さなショーケースに白い液体が入ったものを、並べているお店には入いろうとはならないだろう。聞くところによると彼らは、お腹を壊した時に飲みに来るのだそうだ。

恐る恐る口に含んで見ると、日本のヨーグルトより甘みが強く、なんとも言えない優しさがある。

そうやって現地での何気ない体験が、香りや、味ストーリーを含んで自分の中に蓄積されて行くのだった。

スコールのような雨が突然上がり、少し土埃が消えていた。いつの間にか疲れもなくなっている。あるいは雨が降ったらヨーグルトを飲む、これはネパール式雨宿りなのだろうか。
心の疲労も和らげてくれる、そんな不思議な味だった。

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