宝石のかけら
枝の先に、宝石をみつけた。
半透明に輝いているその宝石は、朝の光を受けてピカピカまぶしい。
ぼくは、ラジオ体操にいかなくちゃいけないのに。
だけど、どうしても、その宝石から目を離せなくなってしまった。
ぼくは、その枝の前から一歩もうごけない。
枝の一部になって、足の裏から根っこが生えてしまったみたいに。
その宝石は、ゆっくりと、動き出す。
ていねいに、いそがずに。
生命の力強さだけが、感じられた。
ゴクリと唾を飲み込んだ音が、うるさいくらいに身体にひびく。
ぼくは、夢中になって、ただ一点をじっと見つめていた。
ガラスのように薄い羽は、今にもこわれそうだ。
けれど、飛び立つ瞬間をしずかに待っている。
どれくらい時間が過ぎただろう。
光の一部みたいに光っていた身体は、しっかりと強く色づいていた。
そよいだ風と共に飛び立とうとしている。
辺りにはジジジという音がうるさく響いていた。
宝石のかけらを、ぼくはそっと、つかまえた。
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