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慰安婦映画『主戦場』裁判に判決

朝日新聞は28日「慰安婦論争扱った映画「主戦場」出演者らの控訴棄却 監督側が勝訴」と題する記事を発信しました。

「主戦場」は日系米国人のミキ・デザキ監督が、慰安婦問題を巡る右派と左派の論争について、とくに右派言論人のトンデモ発言をフィーチャーしたドキュメンタリーです。

当初は学問研究のためなどとウソの理由で取材依頼されたので協力したところ、実際はそれに反した形で商業映画に使われたとして、原告の米国弁護士ケント・ギルバート氏らが訴えていました。

その控訴審判決が出て「映画は原告らの著作権や名誉権を侵害していない」として、控訴を棄却されたということです。3年にわたる裁判で、結局監督側が勝利を収めた、という形になります。

倫理的な問題はあるものの、映画「主戦場」のようなドキュメンタリー映画において、取材側が取材相手に本当の目的を隠して近づくことは多々あります。問題はそれがどこまで許されるかです。

全部だめ! 許さない、ゼッタイ! ということになると、独裁者の非道を暴くため権力者に近づくとか、拉致被害者の実態を探るための現場潜入取材などが全部不可能になってしまいます。現実的ではありません。つまり、どこかにラインを引く必要があるわけです。

そこに議論の余地が生まれるわけですが、私は「主戦場」においてはギリギリ許されるレベルだったと考えています。

この映画が製作公開された当時は安倍政権時代で、日本の言論空間は右派や保守(…のふりをした旧統一教会などのカルト)に支配されていた状況でした。

そうした中、右派言論人のトンデモすぎる発言を集めて世にさらしたこの映画には、一定の存在意義と公益性があったといえるでしょう。

もちろん「主戦場」の取材過程でデザキ監督が採用した手法は完全なだまし討ちですし、この映画は監督が自画自賛するような「学術的映画」「公平な手法」ではまったくないです。

そもそも監督はゴリゴリの左派であり、かつてユーチューバー時代にいわゆるネット右翼から中傷された恨みを晴らすためにこの映画を作ったといわれています。

いずれにせよ、思想的には相当偏った作品であることは疑いありません。

また、この問題については、左翼憎しあるいは右翼憎しで語る識者しかおらず、相変わらず日本の言論空間の稚拙さを感じさせるテーマになっています。

しかし評論・批評というものは、そうした感情論から離れてしかるべきで、「主戦場」問題についてはせめて映画を鑑賞し、内容を理解してから行ってほしいと思います。


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