アベノミクス再考と国葬への違和感

 noteの利用は初めてなのですが、「国葬」については違和感がある旨の意見をFacebookで書いたところ、たくさんのコメントをいただき、その中に「アベノミクス」について触れている方が何人かいました。
 実は、何度も話している私なりの「アベノミクス」論がありますので、あらためて記しつつ「国葬」についても意見をしっかりと書いておきたいと思いました。Facebook記事としては流石に長いので、noteを利用させていただいた次第です。

 アベノミクスは「3本の矢」という言葉で表現されますが、そもそも経済政策とは、財政政策と金融政策により景気循環の波をコントロールしながら、時代の変化に合わせた改革により中長期的経済成長を志向するものです。安倍政権はこれをあえて「3本の矢」と言ったわけですが、矢が3本あること自体は正直どうでもいいわけです。重要なのはその順番です。
 安倍政権は、1本目に金融政策、2本目に財政政策、3本目に成長戦略を持ってきました。普通は逆なんです。まず目標を中長期的な成長戦略に置き、次に短期的に景気循環対策の必要に応じて財政政策があり、最後の手段として独立性がある日銀に金融政策を働きかける、という順番が普通です。
 順番が逆というメッセージは極めて大きいものでした。私も安倍政権の下で国交省にいたので良く分かります。何せ成長戦略は3番目ですから、霞ヶ関内でもタマがほとんど出てこないんです。当時の産業競争力会議の議論を見ればわかるはずです。竹中平蔵さんが企業経営者に話を聞いて割りと筋が良さそうなものをネタにするぐらい。そんなイメージです。総理から「これをやるんだ」というメッセージは皆無だったのです。
 そこで、私が航空局で担当していた空港コンセッションが成長戦略の大ネタの一つになってしまいました。空港コンセッションは、もともと民主党政権時代の立法に基づくものですので、安倍政権独自のネタではありませんが、それほど安倍政権に成長戦略のネタがなかったのです。恐らく菅前総理はそれを分かっていて、安倍さんの退陣後、総理になって携帯電話料金やデジタル庁など一気に改革に取り組もうとしたのでしょう。

 いずれにせよ、成長戦略を3番目に置いて政権運営をした安倍政権を、他の政権の上位に持ってきてしまっていいのか、という疑問が私にはどうしても残るのです。中曽根康弘さんー橋本龍太郎さんー小泉純一郎さんー民主党政権初期は、構造改革や行政改革による経済成長を第一の目標に置いてきました。
 恐らく安倍さんが第一次政権の失敗から学んだのは「小泉さんが改革を志向できたのは小泉さんだったからで、自分は改革にこだわって総理ができるタイプじゃない」ということだったのではないでしょうか。小泉さんの言った通り、改革には必ず抵抗勢力がいます。最初から改革を3番目において、1番目と2番目は頑張ったんだけど、3番目はできませんでした、とやった方が政権は長続きするわけです。
 もちろん政権を安定させることは誰にでもできるわけではありません。本当に立派なことです。でも、長期政権を実現したからと言って過剰に安倍さんをたたえてしまっては、今後、本気で行政改革や構造改革による経済成長を実現するというテーマに取り組む政治家は生まれてこなくなるでしょう。


 今、日本は先進国から脱落するギリギリのところにいます。日本が先進国であり続けるためには、ここで本気で改革を志向し成長戦略に真剣に取り組まないといけません。そのような意味で、この「国葬」は日本が先進国から脱落することを決定付けるものになるような気がしてなりません。
 それが私の違和感です。杞憂に終わればいいのですが。以上です。長文大変失礼しました。

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