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喫茶文化を守る。そして、アップデートしていく。|尾藤雅士

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東海3県(主に名古屋)で間貸しをしている方に取材。第6回目は喫茶ニューポピーオーナー・尾藤雅士さん。家業を継ぐと決意するまでの経緯、レンタル喫茶(ポピー談話室)をはじめたきっかけ、空間へのこだわりなど。さまざまな角度からお話を伺いました。 


ー 家業を継ぐ、ということ

尾藤:中学校の頃からバンドを始めて「このバンドでずっとやりたいな」と思うメンバーで活動していたんだけど、27,8歳になると、結婚したり責任のある仕事に就いたりして、メンバーが減っていくタイミングがあって、ちょっと方向転換しないとまずいなと。バンド活動を続けるにはどうしたら良いかと考えた結果、「実家(喫茶店)なら融通きくかな」と邪(よこしま)な気持ちに(笑)。

尾藤:ど昭和の喫茶店だから、当時は粉になっているコーヒー豆を仕入れて、大きな寸胴にやぐらをたててネルドリップをしてたんだぁ。ネルの洗い方とか保管の仕方とか……色々変えることでどんどん美味しくなっていくのが面白くて。ある日、レジの横にミルを置いて豆から挽いてみたら、お客さんみんなが一斉にこっちをみたの。僕のことを“息子”と呼んでいた常連さんが初めて“マスター”と呼んでくれて、少し可能性を感じたね。「焙煎をやってみたらどう」と、ある方から言われて。車を買おうと思って貯めていたお金を焙煎機に注ぎ込んで、その勢いのままBeans Bitouをつくって、喫茶店とコーヒー豆の卸を始めることに。

建物の老朽化によって「喫茶ポピー」は某喫茶店に移動。間借り営業を開始。


ー 自分“らしさ”とは

尾藤:間借り営業中は、12時になると一気にサラリーマンさんたちで満席になって、13時になるとダーッと帰っていく。それをさばいていたの。だから喫茶店と思えなくて、食堂みたいな感じで、自分らしいスタイルになっていないなと思ったんだよね。喫茶店の息子だから「どこからどうみても喫茶店でしょ。しかも新しい!」というのをつくりたかった

2019年1月「喫茶ニューポピー」を開業。


ー ポピー談話室ってどんな場所?

尾藤:間借り営業だと、こちらの都合で営業日を変えれなかったり、やりたいことがやれないストレスがあったりして不便だったんだよね。その不便さを解決するような、しかも借りる人が「うおぉ、ここで!」と、テンションが上がる箱をつくりたかった。

尾藤:このビルの外観をちょっと離れたところから見るとめちゃ良くて、窓の並び方と大きさが好きで、実は8年前くらいに借りていたの。

!?!?!

尾藤:8年前は間借り営業をしていた頃。コーヒー豆の卸も軌道に乗りはじめて「よし、次何かやろう」というタイミングでで借りたんだけど、「普通のお店をやるのもちょっとな」と思ううちに状況が色々変わってきて、気づけば8年も経っちゃったという(笑)。


ー 内装は人間でいう“性格” だから大事

店舗設計は中家拓郎(シロクマアンドカンパニー)さんが担当。

尾藤:ここは、この百年で衰退したものを、次の百年をつくるために再生させる空間

尾藤:銅を鱗状に貼っていく技法があって、昔はそれができる板金屋さんがたくさんいたんだって。けど今は全然いなくて、ようやく一人見つかってやってもらえたの。これも衰退の一つだし……。椅子や照明の素材がFRPって言うんだけど、海外のインテリアが日本に入ってきた時にトレンドだった椅子の形をFRPで再現していて、逆に新しく見えたりだとか。この場所を色々な人に使ってもらいたくて、ベルベット生地のカーテンはスナックとか学校の緞帳をイメージ。


ー 喫茶文化を守る そしてアップデートしていく

尾藤:喫茶店生まれ、喫茶店育ちだから喫茶店が当たり前すぎて気づけていなかったんだけど、海外に出たことでわかったことがあって。過去にミャンマー、東ティモール、インドネシアに行ったのね。お世話になったインドネシアの会社の社長が東京で用事があって来日したときに、わざわざニューポピーにきてくれたの!そのとき、コーヒーを頼んだだけでトーストとサラダがついてくる喫茶スタイルに本当に心から喜んでくれたのがわかった。

尾藤:僕は名古屋で生まれて、名古屋でコーヒーの会社をやっているから、絶対に喫茶文化を守るべきだし、守るだけじゃなくてちゃんとアップデートしていく。アップデートをするには若い人と出会うことが必要。だから、この先お店を持ちたい方、何かを表現していきたい方が集まるこの場所も大事。「そんな使い方も!」みたいな、想像つかなかった使い方がこれからもっともっと出てくるんだろうなぁ。まずは気軽にご連絡ください。


間借り情報


文、写真:Re!na

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