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『ざ・総括。』日産GT-R(2024年モデル)

オススメ度 評価せず(参考★★★★☆)

気持ちはまだ、若い

2007年のTMS(東京モーターショー)でデビューし、その年の12月に発売された日産GT-Rは、2025年8月で生産が終了する予定だ。約18年のモデルライフは驚異的に長く、基本設計とデザインを変えずに第一線で闘えたという点が驚きだ。そして、荒削りで扱いにくさもあった初期モデルと比べて、現在は日本の日常速度域でも300㎞/hの世界を想像できるくらいにブラッシュアップされている。精度の高い作りはそのままずっと受け継がれてきた。16年ぶりに本誌評価陣が全員そろって試乗し、「あのころの日産」を味わってみた。

<評価メンバー>
エ=エンジニアリングコンサルタント
チ=チューニングショップの社長兼エンジニア
部=元部品メーカーのエンジニア
T=ベテラン実験ドライバー
通=自動車業界の事情通

少しずつ進化した16年


エンジニアリングコンサルタント(以下=エ) 久しぶりの日産GT-Rだ。かつて2008年2月に試乗したときに、我われは「こういうクルマが出てきたことには本当に意義がある」「FMC(フルモデルチェンジ)などしなくていいから、このまま年次改良(イヤーチェンジ)を重ねて熟成させるべきだ」「このスタイリングなら10年経っても大丈夫」と評価し★4つを与えた。あれから16年が過ぎた。日産は正式にGT-Rの量産を2025年で終了すると言っている。
チューニングショップの社長兼エンジニア(以下=チ) 今回、みなさんに乗ってもらったのは2024年モデルのプレミアム・エディションTスペックだ。車両価格は約1900万円。これは普通のクルマ選びの範疇を超えた値段だから★評価はしない。2025年モデルの発売は今年6月の予定だと日産は発表している。そしてこれが本当に最後の仕様となる。
ベテラン実験ドライバー(以下=T) 次のGT-Rが出るとしたらBEV(バッテリー電気自動車)になるのかな。デビューが2028年あたりとなり、SSB(ソリッド・ステート・バッテリー=全固体電池)と高性能モーターを積んだAWD(オール・ホイール・ドライブ)で、後軸モーターは左右独立の機械式左右連結。インホイールモーターじゃない。これに三菱がランサーエボリューションⅪに積む予定だった最終完成型のトルクベクタリング機構とAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を組み合わせる。
元部品メーカーのエンジニア(以下=部) それってTさんの予想ですか? 現実味がありますね。このGT-Rが出た後に日産は、GT-R専用だったPM(プレミアム・ミッドシップ)プラットフォームの知見を取り入れた次世代FRプラットフォームを開発しましたが、結局は商品にならずにお蔵入りになりました。私の知り合いも関係していたので話を聞いたことがあります。ちょっともったいない話でした。詳しいことは言えませんが、細部の構造を聞くと「なるほど!」でした。後輪駆動を磨きたいという想いは、日産技術陣の中にはちゃんとありました。
自動車業界の事情通(以下=通) その一方で、日産はGT-Rを作り続けた。生産終了の最大の理由はECE(欧州経済委員会)規定のR51‐03だと思う。R51は騒音規制で、すでにR51‐02が2022年から継続生産車にも適用されている。ECE‐WP29(国連欧州経済委員会・ワーキングパーティ29)は通称「自動車基準認証国際化フォーラム」で、日本が会議や試験データ取集などの費用をかなり負担している。R51‐03では近接走行騒音のほか、タイヤノイズやエンジン騒音、変速機騒音など、あらゆる音の総合計が規制される。当然、フェラーリやランボルギーニ、シボレー・コルベットなども対象だ。

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