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雨の日のロンドン

外をふと見ると、雨が降っている。

一年を通して曇り空か雨の日が多いロンドン。特に、暖房をつけたくなるほど寒くなる10月頃から遅い春の訪れを待ちわびる3月の終わりくらいまでは、空は分厚い雲に覆われていてどんよりした日が続いている。

日本では、ちょっとした雨でも傘を差さない人は少ないと思う。出先で急に通り雨に降られたり、天気予報をうっかり見ていなくて傘を持っていない時に雨が降ってきたら、近くのコンビニまで走ってビニール傘を買う人がほとんどではないだろうか。だって、街行く人のほとんどがビニール傘を使っているから。雨の日に傘もささずに歩いていたらきっとギョッとされてしまう。

私はというと、傘にはちょっとした拘りがあり、日本ではビニール傘ではなく、赤や黄色、ゴールデンといったお気に入りの傘を何本か持っていた。大学時代にFENDIのしっかりとした大きくて仕立てのよい生地でできた傘を使っていた友達がいて、その子に憧れてヨーロッパ系のブランド傘を好んで使っていた時期もあった。渡英前は、「ロンドンは雨が多いから、きっとこの傘たちが活躍する日も多くてたのしみだなー」なんて呑気に考えていたりもした。


傘を差さないロンドナー

ロンドンに来て、びっくりしたことの一つに雨の日でも傘をさす人がほとんどいないということだった。

ちょっとした小雨なら、そのまま気にせずに歩き。

日本人なら傘をコンビニに買いに走るくらいの雨でも、フーディを被ってハイおしまい。

雨の多い季節も、傘は持ち歩かずに多少の雨ならウォータープルーフのレインコートで凌いでしまう。

月に一回あるかないかの傘が必要なくらいの強い雨の時は、軒下で雨宿りをするか、カフェに入ってお茶をしてやり過ごす。

当初は違和感しかなかったこの光景も、しばらく経つと見慣れてしまい、「あー、ロンドンに住んでる人って適当なんだなぁ」とあたりまえの日常になってしまった。


赤い傘

ある日、大英博物館の近くの美容室に行き、お会計が終わりドアを開けると小雨が降っていた。

その週は晴天が続いていて、その日もお店に入るまではとても天気が良く、雨なんて降る気配が全くなかったから油断をして傘を持ってきていなかった。もうすっかりロンドン生活に毒されていた私は、普段なら「まぁしかたないか」と傘もささずに近くのカフェまで歩くけれど、その日は美容室に行くためにおしゃれをして、ちょっと良いコートを着ていたのでなんとなく濡れるのが嫌だった。


視線を道路の向かいに広げると、土産物屋さんが見えた。


「もしかしたら、ここなら傘があるかも!ラッキー!」と思って、小走りでお店に駆け込み、中を物色すると運よく赤い折り畳みの傘を発見した。£6(1000円)くらいだし買っちゃおう。と買ったところまでは良かったものの、、、


その傘をさして大きな通りに出た瞬間、風に煽られて柄の伸ばす部分の接続したところからバキっと傘が取れて道路に飛んで行ってしまった。


真っ赤な傘がふわふわっと宙に舞い上がって、しばらくして車通りの多い道に落ちてしまった。(柄はしっかりと握ったままだけど、、、)

これが映画のワンシーンなら素敵だったのかもしれないけれど、そのまま置いておくと車か人に当たって事故になりかねないと思って、ちょうど信号が赤だったので急いで道路に出て傘をひろった。

この間、お店を出て150メートル歩いたくらい。たったの3分経ったか経たないかそれくらいの時間で、見た目だけはしっかりしていた傘があっさりと壊れてしまった。

ロンドンでは、日本に住んでいると考えられないくらい売っている物のクオリティにバラツキがあるので、この件に関しては恥ずかしさが沸くでもなく、大した驚きもなく、「あー、またゴミを買ってしまった。」と諦めの境地に至っていた。


ロンドナーが傘を差さない本当の理由(私調べ)

当初、ロンドンに住む人は雨が降ってても気にならないから傘を差さないんだろうと思い込んでいた。

でも、それは違った。傘を差さない理由の一つに「傘を差しても雨が凌げないから」ということがあると思う。

ロンドンの雨は細かい霧状の雨で、粒子が小さいのでそんなに風が吹いていなくても斜めに降ってくる。傘をさしていても、ミスト状の雨が吹き付けてくるので、化粧崩れが甚だしい。

さらに、台風でもないのに「傘をさすのが難しいくらいの意地悪な突風」がよく吹く。川辺や橋の上を歩くときは傘がひっくり返る事も多いし、傘を差した小さい子は風で飛ばされそうになるし、傘の骨が折れてしまうこともしょっちゅうある。

先ほど書いたロンドンで買った赤い傘は買って3分で壊れたけれど、日本から持ってきた折りたたみ傘や丈夫な傘も例外ではない。傘を壊さないように柄を短めに持っていても、突風にいとも容易くバサっボキ、っと壊されてしまう。(お気に入りの傘たちが5つくらい壊れてしまった。。)


だからもう、雨の日にお気に入りの傘をさすのはやめてしまった。というか、お気に入りだから壊れるのが嫌でさしていない。雨の日の基本装備は、フード付きのレインコート、これに尽きる。ロンドナーが傘を差さない理由は雨が降っていても気にならないからではなく、傘を差しても無駄だから合理的に考えてさすのをやめたんだと思う。


私がイギリスで捨てた100の事。

その5 傘をさす事。

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