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15歳の娘が男だと言い出した。(13)

会計を済ませ、荷物を車に乗せた。
フードコートで二人座って、ガッツリ話したいという欲求に駆られた。
聞きたいことというより、母親として、彼女に言いたいことが山ほどあった。
だけど、それをぶつけたら、勇気を出して言ってくれたであろう娘の気持ちはどうなる。。。
カミングアウトだけでもきっと相当勇気が入ったはず、今日はそれ以上突っ込まない方がいいのかもしれない。

サラッと流すことも時に必要だ。
だけどどうしても、いくつか確認したい。優先順位を頭の中で急いで整理した。

「今話してくれたこと、お父さんに言ってもいいかを確認させて」
「言わないで」
「どうして?(お母さんには言ってくれたのに。。。)」
「パパには、言わないで」
「わかった、お母さんからは言わない。だけど、自分でちゃんと言いなさいよ。」
「いつか」
「(いつかっていつよ?)家族なんだよ、大丈夫だから。かなり理解あるほうだと思うよ、あのおじさんw。わかってるでしょ、Sちゃんだって」
無表情のまま、頷きもせず、いつもの仏頂面。
パパに打ち明ける日はかなり遠いに違いないことだけは、理解できた。
「それと。。。お母さん、Sちゃんに謝るわ。
振袖、あんなに嫌がったのは、そういうことだったんだよね。
ごめんなさい、あの時、全然気が付かなかった。」
振袖の話に、Sちゃんの顔がぐにゃっと変形し、今にも泣きそうな顔になった。
親に見つかったら恥ずかしいものを、あえて目の前に出され咎めらるような、
怯えた表情だった。
「Sちゃんが男になりたいって思うようになったのは、振袖を着るって意思表示をしてくれた4月の後??制服の時くらいから?」
聞きすぎたかなと思った。でも我慢ができなかった。
ダメな母親だ。
「違う、1年半くらい前。。。。」
「っていうと、中1の最後くらい?」
「そんくらいかな。。」
「そうだったんだ、教えてくれてありがとう。」
泣きそうだった顔が、さらに歪んで、涙が落ちた。
ずっと苦しかったのだろう、きっと。。。
「お母さん、Sのこと、もうSちゃんって呼ばない方がいいのかな。。。」
「それは、いいよ。大丈夫」
「そっか。」
泣き始めた彼女の背中をさすりながら、私も泣いていた。


続く



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