ゲイバー的コミュニケーション

正月ってほんとあっという間。
今日から仕事始めの僕は朝4時出勤という常軌を逸した勤務に悪態を吐きながら、眠くてボーッとした頭で3が日のことを思い出していた。

元日は実家に帰って、母と一緒に祖母の家に顔を出しに行ったが、2日は名古屋に飲みに出ることにした。行きつけのゲイバーで知り合った年上の飲み友達といつもの店で集合し、店をハシゴすることに。

3が日の2日目、多くの人が明日も休みだしちょうど暇する頃合いだということもあってか、店はとっても混んでいた。僕にとってはだいぶ馴染みになってきた店だけど、普段客が少ない日に出向くことが多いので、なんだかちょっと店の空気感も違う。楽しいけど、ちょっとテンションのギアを上げて、初対面の人たちとも話していた。

友人の「そろそろ2軒目行く?」との声かけで、店を移動することに。2軒目のお店は、数回誰かに連れられて訪れたことはあるが、1人で行くにはちょっと勇気がいるような、テンション高めの店。僕にとってはその日の気分や雰囲気次第で、楽しめたり楽しめなかったりする、ちょっと博打要素のある店だ。

いつも僕が行っている行きつけの店は、もちろんゲイバーなので下世話な話や猥談もたくさんするけれど、いわゆる「ゲイバー的コミュニケーション」のテンプレはあまり行われないので、すごく居心地が良い。

ここで言う、「ゲイバー的コミュニケーション」とは、ゲイバーに行ったことのない人にわかりやすく説明するならば、テレビでオカマモード全開にギアのかかったマツコ・デラックスがやる手法、と言えば分かりやすいだろうか。
イケメンには、「ヤダァ、イケるぅ❤️」とスキンシップを図り、その場にいる常連のイジられ役には「テメェは黙っとけブス!」と罵り、「究極の選択、ここ2人だったらどっちがイケる?」と性的魅力の有無で笑いを取る、アレ。

たぶん半分は本気で、半分はテンプレのコミュニケーション。だけど、僕はどうもそれが上手くできない。その日の2軒目のお店では、そのコミュニケーションがほとんどを占めた。その店の常連の友人たちと行ったので、彼らの立ち振る舞いやポジションは、それなりに確立されている。先述した、「何言ってんだブス!」みたいなやり取りが飛び交う店で、どう扱ったら良いか分からない新規の客の僕が、悪い意味で丁寧な扱いを受けていることも感じて、それもそれで「気を遣わせている」という事実にちょっと傷ついたり。

あとは、いわゆるおブスイジりとか、モテないネタをやってる人がいるときに、それに乗っかるのもなかなかしんどい。この人と初対面なのに、そんな失礼なこと言うのも憚られるしな、とか思っちゃうし、だけどそこで「全然カッコいいと思いますよ!」とか言うのは場をしらけさせるだけなのだ。

郷に入れば郷に従えと言うし、自分に合わないからといってそういったコミュニケーションを否定するつもりはない。ただ、僕にはあまり居心地が良くなくて、かなり無理をしたのも事実。

最近の僕は、ゲイのコミュニティーを広げたいがあまり、いつもの馴染みの店だけではなくて、新しいお店の開拓という目標を掲げて、躍起になっていたところがある。でも、せっかく自分らしく楽しめる場所を見つけたのに、それが楽しくないと思えてしまう体験を増やすことは、非常に不毛な気がする。

別に、ゲイだからといって、テンプレに染まる必要もなく、自分なりの楽しみ方をすればいいのに、メインストリームに馴染みたくて、ちょっと無理してたっぽい。正月早々、背伸びしてた自分に反省した出来事だった。

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