アラブ手話でのコミュニケーション
ヨルダンに来てこの約1年間、聴覚障害の方と接することが頻繁にあった。
初めての関わりは、去年の11月だった。
活動先のパレスチナ難民キャンプの女性プログラムセンターの近くに「リハビリテーションセンター」がある。
そのリハビリテーションセンターにて、障害児と健常児が一緒に踊れるダンスの指導をしてほしいという依頼があり、1ヶ月間ほど、普段の活動に加えて、リハビリテーションセンターに通う日々が続いていた。
そこのセンターでは、ダウン症、自閉症、身体障害、聴覚障害など、さまざまな障害を持った子どもたちが通っていた。
これまでの人生で、そのような子どもたちと関わる機会があまりなかった私にとって、彼らと関わった1ヶ月間はとても新鮮だった。
その中でも、聴覚障害を持つ子どもたちが、一番印象に残っている。
リハビリテーションセンターの先生たちは、聴覚障害を持つ子どもたちと手話で意思疎通していた。
「私も聴覚障害の子どもたちとコミュニケーションが取れるようになりたい!」と先生たちに言ったところ、手話の本を貸してもらえることになった。
لغة الإشارة(ルガトゥルイシャーラ)が、アラビア語でいう手話のこと。
題名の一番最後に書かれている、صم(スンム)が、聴覚障害を表している。
手の動きが写真で紹介されているので、習得するのは難しかったが、アラビア語のアルファベットの手話だと、比較的簡単に覚えることができた。
これでまずは私のアラブ名、مها(マハ)をどうやって表現するのかを覚えた。
最初は、小指を立てる動作、そして5本の指を全部すぼめる動作、最後に親指を立てた状態で下から上に持ち上げる動作をすれば、「マハ」の完成。
通じるのかドキドキしながら、聴覚障害の女の子に「私の名前はマハだよ」と手話で伝えてみた。
その子は、私が手話を使って話しかけてきたことが嬉しかった様子で、少し興奮した様子で、「マハ、マハね」と理解してくれた。
そして、その子の名前も、手話で教えてくれた。
アラビア語でのコミュニケーションもそうだけど、やっぱり「伝わる」っていう経験はすごく楽しい。
それからは、リハビリテーションセンターの先生に、手話での簡単な挨拶を教えてもらったことで、毎回ダンスの練習のたびに、彼らとちょっとしたコミュニケーションを取ることができた。
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聴覚障害の方は、こんな身近にもいた。
普段活動している幼稚園は、主に4、5歳の子どもたちが通っているが、昨年度のある日、3歳の男の子が幼稚園に通い始めることとなった。
その男の子(仮にアハマドとする)は、登園しても教室に入りたがらず、毎日泣いているばかり。
3歳だったらまだ幼稚園に通わせなくてもいいし、こんなにアハマドが嫌がっているのに、通わせるのはなんでだろうと思っていた。
実は、アハマドの両親は、どちらも聴覚障害の方だった。
なので、アハマド自身、両親との会話は手話で行っていた。
普段から家庭で手話が使われていることで、アハマドは発声が苦手なようだった。
アハマド自身は、聴覚障害は持っていないので、手話を使わない、いわゆる口頭でのコミュニケーションをアハマドに身に付けさせたいという両親の想いがあった。
そんなアハマドくん。
最初は、私たち幼稚園の大人と会話をする時には、話すものの、何て言っていいのか分からない時は、代わりに手話が出てきてしまう、というような話し方だった。
それが、今では学年が1つ上がって4歳児クラスに入り、大人や子どもと手話を使わなくてもしっかりと口頭でコミュニケーションが取れるようになっていった。
毎日泣いていたのに、いつの間にか教室に入れるようになった。
大好きなお父さんが迎えにきた時には、お父さんのところに駆け寄り、お父さんと手話で会話をしている。
そんな4歳のアハマドの姿から学ぶことも多い。
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聴覚障害の方とは、ふとした時に街中で出会う。
近所のお土産屋さんで働いていたり、ホテルで働いていたり、街中ですれ違ったり。
難民キャンプに住んでいる方もたくさんいる。
時々、聴覚障害のある女性が、服を販売しに活動先のセンターに来ることがあるが、うちのセンター長やスタッフは、彼女と流暢な手話で会話していた。
センター長とそのスタッフがこれほど手話が堪能なのは知らなかった。
すごくかっこいいと思った。
言語もそうだけど、手話ができることで、関わる人が増えていき、世界が広がっていくと思う。
私の任期はもうすぐ折り返しを迎え、残り任期は1年ほどになるが、アラブの手話も少しずつ習得できたらいいなと思っている。
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