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研究という山を登り切るには:樹海に迷い込んだら骨になるまで出てこられない!!

 いわゆる名山や高山と言われるような立派な山ではなく、家の裏山から続いているような低山だとしても、山に行く時は地図をみて、あらかじめコースを定め、自分の位置を確認できる磁石をもち、現在位置を確認しながら進むものだ。このように周到な準備をしておかないと、万が一道を外れ樹林帯に迷い込んだら二度と生きて出てこられない。それこそ骨になるまで。

 青木ヶ原樹海に至っては羅針盤となる方位磁石も使えず、GPSさえ狂うという噂があるが、Wikipediaによるとそれは俗説らしい。だとしても、青木ヶ原の森は深く整備された道を外れて森に数100m入れば見渡す限り似たような木しかない。青木ヶ原樹ほどではなく、家の裏山から続いているような低山だとしても、登山道を100mも外れたら進む方向はもうわからない。もしかしたら遠くに目指す山が見えているのかもしれないけど、足元には下草が茂り、倒木がそこかしこにありまっすぐ歩くことすら困難で、道がなければ到着しない。道を作るところから始めていたら一体いつ到着することやら。

 研究という山に行く時も、十分な下調べと適切な装備、歩き切る体力と脚力が必要だ。研究にとっての下調べとは先行文献の検索と検討であり、適切な装備とは研究デザインの知識であり、体力と脚力はどんな困難にもへこたれずに冷静に状況を見極めつつ道を外れずに研究を粘り強く続けられる能力だろう。このどれかが欠けても山に登れない。全てが揃っていることが必要だ。身近な低山だったとしても。

 研究計画予備審査指導3回目の院生の研究。私は副指導として、ある程度主指導者の下で整えてきたものを見る立場。
 たまたま見つけた各文献の主張にいちいち引っ張られ、行く先が見えなくなっている。あの遠くに見える山に登るはずだったのに、ここにも山があったとばかりに道を外れて登り始める。その途中で倒木トラップにハマる。リサーチクエスチョンに至るストーリーが定まらない。

 研究デザインの実践的な知識はほぼないに等しい。定義や概念、概念間の関係の下調べをしなければ登山計画は立てられない。誰かの真似をしてでもいいから、店員さんに相談して全てを揃えてもらったものでもいいから、登る山にあった適切な装備がなければ山に登ることはできない。入り口が舗装されていて順調に歩き出したとしても、山道に入った途端に足元はぐらつき、転倒し、体力と脚力だけで進んでもどこかでそれ以上前に進むことは困難だ。骨になるまで。

 研究初学者をこんな危険な状況に置いてはいけないのだ。さりげなく読むべき文献を示しつつ道をつけて共に歩み、経験知を積み上げながら自分の足での歩みで自分の行く道を踏み固めていく。遭難せずに歩み続けられるように。


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