二〇一六年三月の短歌

夕暮れの油のうえの断末魔あなたの血になるムネ肉縮む


群青の空を切り裂く鎌のような月をみていたあなたとふたり


弦月の説明すれば君は言うここでは「鎌」とそれを呼ぶのだと


ヤドリギが宿る木宿らぬ木がありて草の世界も人気投票


春近し樺の根元に寝転んで見上げた空の毛細血管


楽しい日ほど深くシワが刻まれてまるで天罰下ったみたいに


いつの日かあなたはそこに住むのよと絵本を眺める私を抱きたい


亡き祖母のつくった蕗味噌恋しくて芽キャベツで真似る欧州の春


プリムラと呼ばれる花を調べれば「サクラソウ科」とありて愛しく


忙しく我が家をつくるキツツキをあなたのようねと笑う春なり

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