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ドイツ・ミュンヘン在住のフリー編集者、溝口シュテルツ真帆です。コツコツと暮らし、コツコツと書いています。

巡礼13日目〈ビジャフリア~オルニージョス・デル・カミーノ、30.0km〉

和田アキ子と一緒にうどんを食べるという奇妙な夢を見て目覚める。久しぶりの出汁のきいたうどんはとても美味しかったように思うけど、やはり和田アキ子との会話は緊張した(とりあえず無難に天気の話などをして、彼女の機嫌を損ねることなく乗り切った)。

身支度を整えて、ホテル階下のレストランで朝食を食べ、今日も歩き始める。が、昨日の口論後の微妙な気持ちを引きずったままで、いつものようにどんどん小さくなっていく

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巡礼12日目〈ビジャフランカ・モンテス・デ・オカ~ビジャフリア、30.6km〉

今日は夫と軽い口論になった。彼はもっとはやく先へ進みたい、しかし私の足は限界が近く、これ以上はやく長くは歩けない。それなら私のバックパックをよこせと言うのだ。ぎりぎりと肩に食い込むバックパックがなければどんなに楽かと思うが、「え、いいの?ありがとう!」なんて素直に甘えられる性格をしていたら、ハネムーンにこんなところを選んでいない、と思う。

もともと男性に自分の荷物を持ってもらう女性たちのことを、

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巡礼11日目〈ビジャマヨール・デル・リオ~ビジャフランカ・モンテス・デ・オカ、16.7km〉

同室の夫婦に別れを告げ、また歩き出す。

ゆったりとした様子の、とても素敵なふたりだったが、最後に奥さんのほうから名を尋ねられ、互いに名前を名乗りあったのもなんだか気持ちがよかった。出会ってすぐに儀礼的に名前を聞くのは当たり前のことだが、別れ際に名を尋ねるのは、「この先の人生においても、あなたに興味がありますよ」というサインに感じられたから(例え2度と会うことはなかったとしても)。彼らの名前は、ゲ

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二〇一六年十二月の短歌

ゆで卵鍋底を打つこつこつとこつこつとした日々少しさみしい

この地では桃はオレンジ色なので桃色を「ももいろ」と、言えない

いちにちじゅう毛布にくるまる私たちくたくたになったポトフみたいね

気付いてる? あなたがわたしを褒めるのは髪を下ろしている日だけだと

湯たんぽは準備してくれなくていいあなたの躰じゅうぶん熱い

顎のヒゲ抜けども抜けども生えてくる女であるのに逆らうみたいに

鰺焼けば真白き

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二〇一六年十一月の短歌

オーブンのスフレ膨らみ窓の外見れば難民背丸めて行く

彼の焼くホットケーキが香りたつ土曜、秋晴れ、薬缶の蒸気

憂鬱と一緒に放てばくるくると楓の翼果地を目指しおり

黄葉の木々のすきまにちらちらと子らのヤッケはより鮮やかで

「下手でしょう、昔はもっと弾けたのよ」と鍵盤なでれば外は初雪

マフラーに顔をうずめて雪のなかあの人待った冬の故郷よ

ふわふわと決して積もらぬ初雪のはかなさ我の卵子にも似て

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