二〇一六年六月の短歌

雲の下解体される観覧車見ないふりしてペダルを踏んだ


はつなつに逝った祖母の部屋でひとり「卒業写真」口ずさむ母


お客さま用の伏せたティーカップから祖母が作りし押し花ひらり


神楽坂一年ぶりに降り立てばペコちゃん焼の香りが「おかえり」


風船ガムはじめて作れたいい日だね。じゃあ次はなにに挑戦をする?


悲しくもわたしが大人になったのは蜂蜜の適量がわかった日


ずる休みしてカウチに寝そべって不倫の相手はダークチョコレート


「ただいま」と言える場所さえあればいいどこにいたって誰といたって


うれしいのになんでこんなに泣けちゃうの彼女のドレスがにじんで見えない


白無垢の友が笑ったふんわりと燃え立つような緑の中で

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