二〇一六年十二月の短歌

ゆで卵鍋底を打つこつこつとこつこつとした日々少しさみしい


この地では桃はオレンジ色なので桃色を「ももいろ」と、言えない


いちにちじゅう毛布にくるまる私たちくたくたになったポトフみたいね


気付いてる? あなたがわたしを褒めるのは髪を下ろしている日だけだと


湯たんぽは準備してくれなくていいあなたの躰じゅうぶん熱い


顎のヒゲ抜けども抜けども生えてくる女であるのに逆らうみたいに


鰺焼けば真白き我が家に「ご飯よ」と母の呼ぶ声響いたみたいで


まだ温いおにぎり手渡すそのときはたしかに幸福悔しいけれど


「つわり」より「Schwangerschaftsbeschwerden」、こちらのほうがしっくりくる朝


「妊娠」と言われてまずは寿司絶ちを嘆いた母を許してちょうだい

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