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長野県の一人出版社・八燿堂(はちようどう)のこと

八燿堂のnoteへようこそ。まだまだ工事中ですが少しずつ充実させていくので、どうぞお楽しみに。それでは簡単に自己紹介を。


八燿堂について

2018年に活動を開始、2019年11月に東京から長野県南佐久郡小海町にある小さな集落に移住しました。いわゆる「一人出版社」ですが、法人化していないので「一人出版レーベル」が正確な言い方になるのでしょう。

大量生産・大量消費・大量廃棄の現在の出版業界の構造とは異なる、適切な部数・直接取引の形態をとりながら、文化的・環境的・地域経済的に持続可能な出版活動を模索しています。

①八燿堂が大切にしていること(工事中)

mission ►
文化・環境・地域経済へ豊かさを持続的に循環させる


vision ►
200年後もすべての生命のエネルギーが生き生きと美しく輝いていられる世界へ


value ►
①読み、聞き、見た人が、時代が変わっても揺るぎない本質的な豊かさや美に気づく
②人間以外の生命も喜ぶ、地球環境に配慮した本づくりや流通を確立する
③地域に豊かさを配分し、自立したつながりを構築する


spirit ►
自分が死んだ後も生き続ける豊かさを社会に届ける


slogan ►
生態系と共生する「本」をつくる

②持続可能な出版活動とは

現在日本では、毎日200タイトル以上の書籍や雑誌が刊行されています。200タイトル。200冊ではありません。書籍なら、1タイトルにつき数千部~数万部が発行されます。それが、×200。しかも毎日その数です。年間だと膨大な数になります。

毎日そんな数の本が本屋さんに届くわけで、店員さんはとても全部読めるわけないし、お店にすべての本を置いておくことは物理的に無理です。実際、本屋さんに1~2か月置かれて売れ残った本は、「返品」という形で出版社に戻されます。推定の統計では、返品される本の数は、年間で3億冊とも言われます。

返品された本はどうなるか。ほとんどが古紙再生工場に運ばれ再生紙となるか、断裁・焼却されて海に埋め立てられます。

古紙に生まれ変われば別にいいじゃないか、という意見もあるでしょう。確かに捨てられるよりはよっぽどマシです。ただ、古紙再生の過程で、大量の電力と水と石油燃料を使い、インキを溶かすために大量の化学薬品を投じるのは、果たして「環境にやさしい」ことなのでしょうか。パーム油を生産するために広大な熱帯雨林を伐採するのと似ていませんか?

そこで八燿堂は「適切な部数」の出版に取り組んでいます。

1. 適切な部数
紙・インキなどの資源、ブックマイレージ(本の輸送に要する資源)に配慮し、ゴミにもせず、再利用コストも抑えるために、そもそも本をつくりすぎない、適度な刊行点数・部数を目指す。それによって、生態系と共存する本のあり方を追求する。

もうひとつの問題提起は、ブックマイレージに関係することですが、森林の木を伐採して紙をつくり、一冊の本になって誰かの手にわたるまでの工程で、それぞれが専門化し、分業していることです。

例えば、「安く」「大量に」「早く」紙を提供するために、製紙業は洋紙を選択し、機械化を進めて効率を徹底化しました。しかしその結果、和紙という文化が衰退し、端境期の農家の収入減が先細り、原材料の輸入によって国内の生態系や産業形態が変化しました。

一方、戦後に焼け野原となり、流通が破綻した状況で、それでも地方に本を届けたいという思いから、「取次」という本の卸業が生まれました。国内のどの店でも同じ本が同じように売られている、という状況は、時代の変遷とともに書店の画一化を進め、「商品」の選定にも取次の力が強く及ぶようになります。

さらに、八燿堂のある長野県の山間の集落のような場所では、クリックひとつで商品が届けられるECのシステムは、非常に便利です。しかしその結果、一部のプラットフォームに利潤が集まる一方で、町の書店は疲弊しています。またシステムの維持にかかわる労働や、流通業のあり方は、果たして持続可能と言えるでしょうか。

専門化と分業化は、そもそも「悪い」ことではなかったはずです。もう一度、それらが生まれる発端にあった「本を届けたい」という「愛」に立ち戻ること。人間にとっての「利潤」や「効率」だけでなく、生態系や自然にも「愛」をめぐらせること。つまり、豊かさをめぐらせる「ハブ」として本を届けること。八燿堂が取り組む「直接取引」は、この流れで生まれました。

2. 直接取引
流通において、人間だけでなく生態系や自然にも配慮を届けるために、販売店との「顔の見えるコミュニケーション」を実現する。そのような地域とのつながりをつくり、町の販売店へ利益をめぐらせることで、自立した流通網を構築する。

つまり、「余分に本をつくっても人間や環境に負担をかけるだけではないか」。だったら「適切なぶんだけつくり」「必要な人に届ける」ことを目指す、と。

大量生産、大量消費、大量再生産という、巨大で速いサイクルとは愛をもって共存し、八燿堂の活動としてはできるだけ自分の目と手が届く範囲で、必要なぶんだけつくり、必要とする人の手に渡るように、適切な量を人や場所に循環させる。

さらに言えば、それを通してさまざまな「地域」に根差した、自立したネットワークや経済圏を構築することを目指す。森では、大きな高木の下に、さまざまな灌木や草木が栄えているように。

「本がパブリックになる」というのはそういう意味だと私は解釈しています。もっと言えば、「人間を含む自然の生態系の一部に、本を位置づける」ということなのでしょう。


③刊行タイトル

▼『mahora』

人と自然と宇宙の豊かさを祝福する本。八燿堂の看板タイトルです。太古の自然や秘跡、現代の日常や暮らし、宇宙の営為や人間の手仕事など、あらゆる生命の豊かさや美しさ、時代に寄らない本質的なあり方を、ホリスティックな観点で集めました。

2018年に創刊し、2024年までに6号を刊行しています(創刊号と第2号は版元在庫切れ)。これまで数多くのみなさんにご参加いただきました。お名前だけご紹介します(50音順/第6号まで)。

青葉市子(音楽家)、朝吹真理子(小説家)、安野谷昌穂(美術作家)、安納献・鈴木重子(CNVC認定トレーナー)、居相大輝(iai)、石倉敏明(芸術人類学・神話学)、稲葉俊郎(医師)、UA(歌手)、上原寿香(camino natural Lab)、江尻潔(足利市立美術館)、eri(DEPT代表)、大塚紀子(諏訪流鷹匠)、大村淳(フォレストガーデンデザイナー)、小川康(森のくすり塾)、kai(アーティスト、スピリチュアリスト、作家)、河瀨直美(映画監督)、スティーブン・ギル(写真家)、こじょうゆうや・こじょうゆみこ(星の坊主さま)、是恒さくら(美術作家)、後藤しおり(料理家)、榊智子(アーティスト)、榊仁胡(アーティスト)、志村信裕(現代美術作家)、杉戸洋(現代美術作家)、関根みゆき(結び研究家)、ソーヤー海(共生革命家)、ジョアンナ・タガダ・ホフベック(アーティスト)、土田眞紀(近代工藝・デザイン史、工藝論)、寺尾紗穂(音楽家、文筆家)、成田和正(養蜂家)、野口優子(写真家)、芳賀満(美術史家)、蓮沼執太(音楽家)、花代(写真家)、林央子(編集者)、林良樹(小さな地球)、平野馨生里(石徹白洋品店)、伏木庸平(美術作家・台形)、エレン・フライス(編集者、写真家)、前田崇治(紙漉思考室)、前田征紀(コズミックワンダー、現代美術作家)、宮本武(写真家)、ミロコマチコ(画家、絵本作家)、矢野智徳(大地の再生)、山口吉彦(アマゾン資料館)

※各号の編集後記と、八燿堂開始前につくった文章は以下で無料公開しています。


▼宮沢賢治『農民芸術概論』

「われらに要るものは銀河を包む透明な意志 巨きな力と熱である」
新たな時代を生きるすべての人に捧げる、宮沢賢治至高の芸術詩編

土に触れる自らの手と宇宙の胎動が直結する壮大なスケールで描かれた宮沢賢治による至高の芸術論「農民芸術概論綱要」。本書では本論に加え、「農民芸術」の名を冠する他2編を収録。また、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で知られる通称「雨ニモマケズ手帖」に収められた詩編や、賢治の最晩年、病床に伏しながら書かれたと言われる「疾中」を採録。そして生前未発表の詩作集「詩ノート」より撰集した数編のほか、学生に向けた鼓舞激励のメッセージ「生徒諸君に寄せる」を収めました。計60超の詩編を採録しています。装画は奄美大島在住の絵本作家、ミロコマチコ。


▼アマゾン資料館監修『アマゾンの民具』

自然とは、生命とは
南米アマゾンの先住民が遺した、美しく豊かな生活の民具が、
この星との共生のあり方を語り掛ける。

仮面、頭飾り、籠など、南米アマゾンの先住民たちの暮らしの日常から生まれた民具約120点をカラー掲載。アマゾンの歴史文化の国際理解と国際交流に寄与した、元アマゾン民族館の館長で文化人類学者の山口吉彦氏が、1970年代より収集した2万点超のコレクションから厳選して紹介しています。




④ローカルプロジェクト "sprout!"

八燿堂の所在地である信州・長野県の東=「東信」ローカル発のプロジェクトです。podcastやnoteを併用することで、本だけでは実現が難しい、ローカル~地球規模で社会的かつ具体的なアクションを起こすための、場づくりを目指します。

■東信ローカルプロジェクト「sprout!」が目指すこと
①東信というローカルで活動する魅力的な人たちを紹介する
②グローバルな社会問題、環境問題などへの理解を深める
③社会的なアクションを起こすための場づくり
④「本」にまつわる文化の醸成

ただし、取材対象は基本的に東信ローカル限定でも、活動の底流にある社会問題や環境問題は全世界共通。だから東信以外の県内、国内、世界中の方に聞いていただけるコンテンツになっています。

「sprout!」のプラットフォーム
①podcast

インタビューのダイジェストを中心に公開。環境問題など気になるトピックの深掘り、取材対象の活動の「根」となった「本」も紹介。

 ►spotify ※以下は最新回が表示されています

 ► apple podcast 

②note 
podcastの未公開パートはこちらで。インタビューを長文でじっくり読めます。

③書籍 
①podcast+②note+αで本をつくります(coming soon)。



主宰者・岡澤浩太郎について

1977年生まれ。編集者、ブックレーベル・八燿堂主宰。
東京のFMラジオ局J-WAVE、雑誌『Tokion』『STUDIO VOICE』編集部を経て、2009年よりフリーランス編集者。2018年、一人出版レーベル「八燿堂」を開始。2019年、東京から長野に移住。2023年、地域の知人たちとNVC(非暴力コミュニケーション)を実践する「対話のサークル」を開始。本づくりと庭づくりを同時並行で試行中。興味=藝術の起源、森との生活、パーマカルチャー、NVC。

▼個人の仕事

雑誌・紙媒体
STUDIO VOICE、Tokion、花椿、murmur magazine for men、美術手帖、TRANSIT、IMA、metromin.、BRUTUS、天然生活、サイゾー、など

書籍
花代『青葉市子写真集 花市匁』
『ライブラリー西洋美術史』
蓮沼執太『音楽からとんでみる』
吉原夕記『バンクシー 壊れかけた世界に愛を』
小沼純一『映画に耳を』
kvina『恋する東京 東京デートガイドブック』
西江雅之『異郷』
林央子『拡張するファッション』

・展覧会図録ほか
加藤泉『寄生するプラモデル』展覧会図録
『未来と芸術』展覧会図録
菊畑茂久馬、カイカイキキギャラリー展覧会図録
中村一美、カイカイキキギャラリー展覧会図録
芸術祭公式ガイドブック(大地の芸術祭、北アルプス国際芸術祭、あいちトリエンナーレ、神戸ビエンナーレ、ほか)
『はじめて学ぶ芸術の教科書 デザイン編』(全9冊)

など

WEB
国際芸術祭「あいち2022」ラーニングアーカイブ
花椿、colocal、greenz、IMA ONLINE、など




〔サポートのお願い〕

よろしければ、このプロジェクト"sprout!"や、八燿堂の活動にサポートいただけたらうれしいです。金額はご自身のお気持ちのとおりに、任意でご指定ください。いただいたお金は、本の印刷費やポッドキャストの制作費、フライヤーなど宣材物の制作費などにありがたく充当させていただきます。

※以下のリンクから、任意の金額とクレジットカード情報を入力ください
(stripeという、世界各国で使用されているオンライン決済サービスを利用しています。いただいた個人情報などはstripeが管理するため、八燿堂は情報を所有しません)



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多くのご支援ありがとうございます。木々や星々は今日も豊かさを祝福しています。喜びや健やかさにあふれる日々をお過ごしください。