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8. 男のしょーもなさを考える3本

ロマンって言葉があるじゃないですか。僕も使ったことないし、創作物の中でしかお目にかかったことがないのは、はるか昔に死語になった言葉なのか、いやいやもともとロマンなんてものの実感を持っている男なんてほとんどいないのよって話なのか、はたまた女性が男のしょーもなさを攻撃するときのその箇所のことをロマンと呼ぶのが都合がいいよねっていう言葉なのか。非実在感覚な気もしつつ、それを描いたんだろうなあっていう映画はいくつもあるわけです。「向こう見ずで後先考えない」「合理的じゃなくて、損をかっこいいとか思ってる」「それでいてむっちゃかっこつけてそれをやる」みたいなあたりでしょうか。びっくり人間動画を集めたテレビとかで、ビルからビルへバイクでジャンプしてわたるスタントマン、みたいなそんなイメージですよね。バカだねえ、って言われるのが好き、みたいな。そんなロマンの輪郭を、ちょっと映画で考えてみる。そんな3本。

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ファンタスティック Mr.FOX

2009年公開
監督:ウェス・アンダーソン
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元泥棒のキツネの父親が、より輝いた生き方を求めて大農場主の人間に一世一代の盗みを仕掛けるお話。丁寧な仕事に気が遠くなりますが、それくらい細かくて作りこまれた美術に持ってかれます。独特の風合い。子ども時代のジオラマとか立体造形好きの自分が観たらヘビーリピートしてたでしょう笑 一方で主人公の行動動機が「野生の本能」とか「ファンタスティックでありたい」とか、しょーもない男性性に基づく感じで、奥さんキツネが呆れながらも諦めてついていく感じとか、人間臭くて理屈っぽくなくていい。そうか、ロマンとは「野生」ってこと?そうせずにはいられないなにかっていう説明は、ある種の変な説得力は確かにある。そんな、カテゴライズが難しい、独創的な、それでいてたとえ人形劇になったとしてもやっぱりウェスなんだなあという作り方。この映画から考えさせられる男のしょーもなさは、「愛され上手かどうかが最大の分かれ道」ってことですね。

風立ちぬ

2013年公開
監督:宮崎駿
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ただ美しいものを作りたかった飛行機の設計技師が、零戦を完成させるまでのお話。ただ静かに日々が、夢に向かって積み上げられていき、周りを激動の日常が、本人達をよそに繰り広げられる。そこが、何ともリアルで空恐ろしい。夢に一途に生きている人の体感する時間や世間って、こんな風に見えるのかも知れないなあと。それを堀越二郎は、風といっているのでしょうと。駿さんの願望の究極系とも言える、菜穂子が、今となってはとっても非現実的存在。彼女であり嫁であり母であり、なんの摩擦も葛藤もなく、すべてを受け入れる女性。あり得ないw 男の物語なんでしょうね、このお話は。それが、まああんまり共感できなかったワタシは、男気が足りないのか、翻って女心が分かってないのかw ロマンとは、女の我慢の上に成り立つってことなのか?w なにはともあれ、もう一回みると、きっと感じ方が大きく変わるような気がする作品でした。この映画から考えさせられる男のしょーもなさは、「浮世との距離感が、男のしょーもなさを決める最大の変数」ってことですね。

レスラー

2008年公開
監督:ダーレン・アロノフスキー
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かつてのスターレスラーが老いや病・娘との確執などと孤独に向き合いながら、最後のリングに上がるお話。静かに、リアルに、老いたレスラーの生き様を、えぐるように生々しく描写していて、見ていて痛々しい。その痛々しさを演じきれるのは、自身の人生とどこかリンクする、ミッキー・ロークだけでしょ。ホントいい体(笑) 薬物使用、ケーフェイなどのプロレス界の暗黙の暗部を、ラムの落ちぶれた人生の暗部と共に隠さず美化せず描いたところは、圧巻。ラストシーンの解釈は、見る人にゆだねられてると思いますけど、個人的には、あそこはやはり、ラムの生き様であり死に様かと思います。漢!  ロマンとは、「命さらしてなんぼ」みたいなとこが、確かにあるのかもなあ。この映画から考えさせられる男のしょーもなさは、「夢見すぎとかどーとかじゃなくて、毎日のやることやってればいいだけって説もあるよね」ってことかな。

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とどのつまり結局多かれ少なかれ、男ってダメでバカね、っていう社会的合意があって、輪をかけてそれに甘えて男は生きているわけで、いやあ申し訳ないw ただ、最近の若いヒトは、ちゃんと合理的でまっとうな男の子が人気っていう話もよく聞くわけで。禍福あざなえる縄じゃないですけど、物事輪廻流転するのは、きっといつだって「少数派」が魅力的に見える部分はあるので、もしかしたらまたロマンな男が持てる時代に戻っていくのかもしれないけど、その時は、ロマンのあり方が変わっているのか、ロマンなんてことばでは表現できないモテの形に変わっているのか。鶏と卵みたいな話ですが。結局は、かっこつけたいだけモテたいだけっていう、男のしょーもなさを考える3本でした。まあでも、「他の誰が分からなくても自分的に大事にしたい矜持を持つことで人生にハリを」っていうのは、悪いことじゃない習性だとは思うけど。バイザウェイ、後輩のRに送りますw

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