インド人の彼氏ができた

ムンバイの次はゴアへ。
ゴアの中で比較的落ち着いているアランボルビーチで2週間くらい過ごした。

ゴアでは、年末にリシケシで会ったTと再会。Tはリシケシで同じホステルに泊まってて仲良くなって、私をデートに誘ってくれた人。Google翻訳を使って日本語で「僕とデートに行きませんか」と、年上なのに可愛らしいやり方で。
その時はタイミングが合わなくて結局デートはしなかったのだけど、リシケシを出てデリーへ行ったとき、クタクタになってて、ふと彼に会いたいななんて思ったときに、ちょうど彼からメッセージが届いた。彼もそのときデリーにいて、このまま会う流れになるかなと思ったのだけど、彼は仕事が大詰めだと言っていて、明後日なら会えるということだった。私は明日にはデリーを出たいと思ってたので、また別の機会に会いましょうと言った。それに対して彼からの返事はなかった。

その後、1ヶ月以上経って私がムンバイに向かう時、彼から薦められたシャンタラムという本を読み終わった時だったし、彼の家がムンバイなので、ムンバイに向かう数日前に彼にメッセージを送った。すると1〜2日ほど返事が無く、ムンバイに着く直前のスリーピングバスの中で返事を受け取った。それは「失礼ですがどなたですか?(英語)」という内容。私はこの何週間か前にSimカードを更新して携帯番号が変わっていた。番号変更をWhatsAppで連絡したので皆に伝わっているかと思ったのだけど、WhatsAppの仕様上、相手が私の連絡先を携帯本体に登録していないとそれが行われないらしく、それをしてなかった彼からすれば知らない携帯番号から「シャンタラム読み終わったよ」(私)と突然連絡が来た状況だったみたい。

…なんでこんなに詳しく書いてるかというと、彼とこの後ゴアで恋人関係になったから、自分の中でちゃんと覚えておきたくて。で、振り返ってみると、この連絡の中でのやきもきが、私が彼に恋愛感情を抱く要因になってたなと思う。デリーで返事がなかったことや、ムンバイ前もなかなか返事がなく、来たと思ったら「どなた?」だったこと。
リシケシで会った私だよ、と説明した後に彼が言ってたけど、デリーでメッセージのやり取りをしてた日、彼は事故に遭って、足の指を病院で縫ったらしい。その時の足の写真を見たけど痛々しかった。

彼の計算ではないだろうけど、結果感じたこの「やきもき」によって、初めは何とも思ってなかった彼のことをかなり意識するようになってた。
だから「どなた?」で私だと気づいた後、「今自分はゴアにいるからゴアで会おう」と言ってくれたときは嬉しかった。

ゴアとムンバイは近いから、彼がムンバイに来ると言っても不自然じゃなかったけど、彼はそれをしなかった。正直それをされてたら少し引いちゃってたと思う。
でも、誰かを好きになったときって見境なくそういうことしちゃいがち。私はそうだった。けど彼はちゃんと自分を持っていて、そういうとこ絶妙だった。

そんなこんながあってゴアに到着。
彼はマプサというゴアのバス停に迎えにくると言ったけど、マップでみると彼が滞在してるアランボルビーチから1時間弱かかる。どうにかこうにか断った。

マプサからアランボルに向かう。このときはまだアランボルに2週間もいるつもりはなかった。3日くらいかな、という気で、ゲストハウスにチェックインした。少し休んだ後で彼と合流。彼はいとこのAという女性と近くのホテルに滞在している。このAのことは事前に聞いていて、彼にとって姉妹のような存在ということ。彼の本当の姉は海外に住んでいる。そして彼は両親をコロナで同時期に無くしている。
Aは毎年この時期にはゴアで仕事をしている。そのAから、1人では退屈だということで誘われてTも来たという経緯らしい。
Aはカラッとした元気な感じの良い人だった。

アランボルに着いて2日ほど経った頃、お金を下ろしたいと彼に行ったら、ATMは歩いて30分くらいの少し遠いところにあると彼が教えてくれた。そこで彼と一緒にATMへ向かうことに。ATMに行った帰り、彼と本屋に立ち寄った。彼はこの本屋に来るのは2回目だということ。真剣に本を選ぶ彼。そして何冊か購入してた。
本屋を出たあと、車通りの激しい道となったので、そこから自然と手を繋いで歩いた。(その前にも何度か手がぶつかることがあって、繋ぎたいなーなんて思ってたところだったので、彼が手を取ってくれたときは嬉しかった。)
ゴアは気温30度くらいで暑いのだけど、手を離す気にはならず、そこからずっと手を繋いだまま帰った。

夜は一緒に音楽・ダンスイベントに行った。火を使ったパフォーマンスもあって、それがすごく刺激的だった。パフォーマンスを見ているとき、私の両肩に彼が自分の手を置いていた。その後も、移動するときは手を繋いで、段差では手を差し伸べてくれるなど、お酒も入って自然と接触回数が増えてた。
途中、夜の11時くらいだと思うけど、慣れないダンスの場に私が疲れていると、彼が「少しビーチで休もうか」と連れ出してくれた。

イベント会場はビーチに設営されたものだったので、すぐそこが海岸。ビーチに寝っ転がれる椅子がちょうど2脚置いてあったので、そこに2人で寝っ転がった。
他愛ない話をしていて、彼が「眠いんじゃない?これ使っていいよ」と腕を差し出してくれたのでその腕に頭を乗せる。その体勢で話をしていると、とある瞬間、彼がじっと優しい目で私を見つめて、おでこにキスをした。そのまま私が見つめていると、ほっぺなどの2,3ヶ所に更にキスをした。口にしてくれないことが物足りなくて、自分から彼に顔を寄せて、彼の口の近くに一瞬だけ唇を当てた。すると彼はようやく口にキスをしてくれて、そのまま深く長いキスをした。

その後なんだかんだあって、その日は彼の部屋で一夜を明かした。大事にされてると感じられる、素敵な夜だった。

次の日、私はどうしたかと言うと、彼に「明日ハンピへ行くことにします」と言った。ハンピは、ゴアからは遠い私の次の目的地。
私はこの時、彼とはここでお別れで良いと本気で思ってた。彼のことは良い人だと思うけど、彼がAや友達と楽しそうに会話しているのを見ると、少し切ない気持ちになってた。私といるときの彼とは全く違くて、よく笑ってどちらかと言うと「おしゃべり」な印象。けど私といるときは、ゆったりとして、たまにぽつりぽつりと話すくらい。
私は彼の言語のヒンドゥーを話せないし、英語もあまり流暢じゃない。だから私と一緒にいてもあまり楽しめてないんじゃないかなと思った。

あと、私は無意識に自分にとって大事な人ができるのを避ける気持ちがあったと思う。
だからこれ以上彼への思い入れが強まる前に、ゴアを離れようと思った。

明日発つと言った私に、彼は
「突然のことで驚いてる。関係を築けなかったことはわかってるけど、僕はあなたを愛している。」といった内容のメッセージを送ってくれた。
最後の部分だけそのまま転記する。
「I wish you all the happiness of the world. Take care 〇〇(私の名). I love you.」

このメッセージを見た時、自然と涙が込み上げて、気づけばしゃくり上げるほど泣いていた。
それにより私は、彼と離れるのをとても悲しく感じている自分を自覚した。

そして私は正直な気持ちとして、「私は自分に価値がないと感じてるので誰も愛せないと思う。それにあなたはお喋りが好きなのだろうけど、私はあなたと上手くお喋りできない。そのことを申し訳なく思う。だからなるべく早くあなたから離れた方がいいと思った。私もあなたの幸せを願います。色々とありがとう」と送った。

すると彼から「僕はお喋りが得意な方じゃない。けどあなたと話をすることは本当に好きだった。もしまだアランボルを発ってないならもう一度会えませんか?」と返事があった。
彼からは続けてこの詩が送られてきた。

この詩がまた私の琴線に刺さった。
彼には嘘をついてたけど本当の私のバスは3日後。だから会おうと思えば彼に会える。

そこで彼に「事情があってバスを変えた。私が発つ時、さよならを言わないと約束してくれますか?2,3日の間、ただあなたと楽しく過ごせるなら、私はあなたに会いたいと思います。」と言った。

そうして、私は彼とまた会った。彼の顔を見た時すごく嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
その夜、私が泊まっているホテルのバルコニーで彼とビールを飲みながら話した。そして彼に「どうして自分に価値がないと感じるの?」と聞かれた。
私は「私の父は、虐待するわけじゃなかったけど、よく怒る人だった。私は自分のすることにいつも自信が持てなくて、父の言う通り私は何もできない子なのだと感じていた。今までの人生を振り返ると、自分で決めていたようで、実のところ大事な節目ではいつも親の言いなりだったと感じる。就職先もそう。だから私は本当は自分が何が好きでどうしたいのか、よく分からない。だから私は仕事をやめて今こうしてインドに来ている。」と全て正直に答えた。

すると彼は「紙とペンはある?」と聞いてきた。ちょうど持っていたので彼に差し出す。
彼は「この紙に、今まで両親や他の誰かに言われて傷ついた言葉を思いつく限り書き出してみて。」と言った。

私は言われる通り10くらいの言葉を書き出した。すると続けて彼は色々な指示を私に出した。詳しくは忘れたけど、場面を思い出して、自分で自分の子どもの頃に優しい言葉をかけるようなことをしたりもした。途中で何度か泣いてしまう場面があったけど、そんな私を彼は優しく抱きしめてくれた。
そして最後に彼はその言われて傷ついた言葉が書かれている紙を私の目の前で燃やした。

すると何だか妙に心がスッキリした。

インドに来てから2,3度、ちゃんと話を聞いてくれる人にこのような自分の内面の話をしたことはある。けれどそんなとき言われるのは、
Don't think too much とか
Just keep smiling とか
Be happy とかだった。
それができないから悩んでいるのに。

けれど、彼だけは具体的な解決を考えて実践してくれた。ゴアに到着した頃、くしゃみをしていた私に、すぐに薬局へ行って薬を買ってきてくれたのも嬉しかった。しかも私が日差しにすぐ当てられてしまうのを知っていて、1人で買いに行った。

何かをしてくれたから、好きになるというのは違うと思うけど、こういうところで彼に信頼感と好印象を抱いたのは間違いない。

そうして、彼と付き合うことになった。

 

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