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【エッセイ】 洗車

1. 

「男の人って、なんであんなに洗車が好きなんだろう」

車に大した関心のないわたしは、ずっと不思議で仕方がなかった。世の中のだいたいの女性は、みんなそう思っているのではないかな。

(今回は、洗車についての話なので、車派じゃない人はご容赦を。)

幼い頃、わたしの父は大の車好きだったせいもあり、週末は毎週のようにワクワクした気持ちで洗車へ行っていた。それを見送る母と幼き頃のわたしは、

「車を洗うことの楽しみってなんなんだろう?」と二人して頭を傾けていた。

2. 
成長して、少し年上の彼氏ができたわたしは、彼と仕事の休みが重なった日によくドライブに連れて行ってもらう。彼の車の助手席に座るのが、わたしは大好きなのだ。

窓の外に広がる風景、どこまでも続く海、少し開いた窓から入ってくる潮風、こんなにも気持ちがいい時間を過ごせるのって、何て贅沢で幸せなんだろうって思っちゃう。

何だか特別な瞬間、それでいて日常がいつまでも続くかのような安心感もあるような不思議な感覚だ。島の音楽特有の朗らかなBGMも相まって、気づいたらふわふわ天に召されていた。

すると、「お〜い、戻ってこーい」の声。

気づかれてた。笑

3. 
そんなこんなで市街地につき、大量の買い物をすませ、後は家に戻るだけという安堵感にちょっとの疲労感というスパイスも効いて、またうたた寝。。うすら目を開けながら帰路に向かっていることをちゃっかり確認しているつもりであったが、気づいたときは時すでに遅し。ガソリンスタンドの洗車マシンを待つ車の列の中にいた。

「え〜、今日洗車するの〜。」

っていう声は心に留め・・大人しく助手席に着席して洗車の列を眺めていると、お金を入れる精算機の前まで私たちの順番が回ってきた。両サイドには、前の車の洗車が終わるのを待っている間に次の車のホイルを洗うブラシが備え付けてあるらしい。

彼は精算機の操作をすませると、運転席から降りてその備え付けのブラシを使って、車の両サイドを洗い始めた。そして助手席に座っている私の方のタイヤを洗い始めたその時、ふと、気がついた。

「気持ちいい。」

その感覚はまるで、自分の体を洗ってもらうような感覚だった。ブラシで自分の体の汚れを綺麗に削ぎ落としていく、そんな感じ。

「そうか、彼らは、自分の体を洗うのと同じような感覚で、車を洗っているのか。」

だから定期的に洗わないと気持ちが悪いし、車を洗った後はスッキリして気持ちよくなるんだな。今まで長年ずっと謎だったことがふっと解けて、なんだか少し得した気分だった。

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