読書レビュー:脳「脳がどんどん強くなる!すごい地球の歩き方」
地球の歩き方シリーズの変化球版。認知症の経緯が詳細に解説されている。
旅行で頭が活性化する(だから旅行に行こう!)という旅行業界の宣伝ですが、脳については日々研究のアップデートが行われている中、最新情報を得られたのでまとめます。
冒頭の脳科学以降は、地球の歩き方らしく海外旅行に行こう!という内容と、現地での楽しみ方に終始していました。
大脳辺縁系と大脳新皮質
冒頭からは、脳をざっくりと分類しています。
それぞれの脳が依存症でどう変化するか気になる方は、こちらもどうぞ。
その中で、認知症に繋がるとある脳の分野を取り上げています。
一次感覚情報の中継所:嗅内野(きゅうないや)
側頭葉の内側にある脳の部位が、嗅内野と呼ばれています。記憶を司ると言われる海馬のそばにあり、3センチほどの大きさ。この小さな器官で、目まぐるしいスピードで脳に入ってくる情報が処理されているのです。
海馬との間に必ず入るのが嗅内野。大量の情報を受け渡しする嗅内野では、神経細胞に当たるシナプスは数が多く、さまざまな神経細胞と繋がっています。
場所細胞(プレイスセル)と格子細胞(グリッドセル)
海馬には、記憶の形成とともに大変大事な機能があります。それは、空間ナビゲーション機能です。
この空間ナビゲーション機能を生み出しているのかは、海馬の神経細胞の一種である場所細胞(プレイスセル)が関係しています。この細胞は、簡単に言うと頭の中に地図をつくる仕組みを持っています。
そして、嗅内野にある格子細胞(グリッドセル)と連なって強力な働きをします。
今いる場所の位置情報を把握しているともいえます。
こうすることで、海馬の場所細胞が地図を作り、嗅内野の格子細胞がGPSとして働くことで、人間の空間ナビゲーション機能が作用し、自分たちの空間把握能力が可能になっているのです。
認知症とは?
勘違いされやすいのですが、認知症とは病名でなく症状のことです。
認知症は、高次脳機能障害の状態です。
高次脳機能のうち、ふたつ以上の機能が失われると認知症が認められます。なお、認知症には種類があります。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症の特徴は、以下があります。
いずれも、脳にタンパク質のゴミがたまってきた状態といえるでしょう。
脳の中で最初にタンパク質がたまって神経原線維変化が起こるのは、嗅内野とのこと。
この変化が始まるのは、アルツハイマー型認知症になる20〜30年前。この時点では物忘れの症状はありませんが、神経原線維変化はひっそりと進んでいます。
ということで、認知症になる前に早期対応が必要というのが著者の意見です。そこから旅行がいかに認知症を防ぐ助けになるかを説いていきます。
もう少し詳細が知りたい方は、ぜひ本著をお読みください。
所感
認知症の解説は非常に面白い。
それ以降の工夫点は、旅行する若者には比較的言わずもがなという内容。
コロナ禍で旅行に行けてなかった中高年の背中を押すような本です。旅行に行く時の振り返りになるといえばなるので、興味あればぜひご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?