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読書感想文:自己啓発「DIE WITH ZERO」

2020年のベストセラー、今更読んでみました。


「ゼロで死ね」とは?

結論から言うと、

死ぬ時に金融資産を0にして死ね

ということです。著者の言葉を借りると以下。

死ぬまでにお金をすべて使い切りたいと思っている。

事実、老後のための貯蓄はほとんど使われずに終わると言われています。

<米国の純資産の中央値>
世帯主が55歳の家庭:18万7300ドル
65歳の家庭:22万4100ドル(増加している!)

70代になっても、人々はまだ未来のためにお金を貯めているのです。
高齢者は医療費を考えて貯蓄する傾向にありますが、世帯全体の支出は医療費を含めても年齢とともに減少します。

<退職後の20年間のアメリカ人の資産と支出に関するデータ>
・資産額が多い人々(退職前に50万ドル以上)は、20年後または死亡するまでにその金額の11.8%しか使っておらず、88%以上を残して亡くなっている
・資産額が少ない人(退職前に20万ドル未満)は、老後に資産を使う割合が高いが、退職後の18年間で資産の4分の一しか減っていない

アメリカ従業員給付研究所

つまり、人々は自分の資産を取り崩すのが遅く、現役時代に「老後のために貯蓄する」と言っていても、いざ退職したらその金を十分に使っていないことが分かります。

スローゴーイヤーとノーゴーイヤー

なぜ皆お金を使わないのでしょうか?

なぜなら、年をとると人はお金を使わなくなるからです。

<世帯主の年齢別平均年間支出2017>
・55〜64歳:6万5000ドル
・65〜74歳:5万5000ドル
・75歳以上:4万2000ドル
※年齢とともに高くなる医療費も含めた支出額

医療費を考慮しても、高齢になればなるほどお金は使いません。
退職後の消費パターンの変化として、リタイヤ直後の意欲的に行動する期間を「ゴーゴーイヤー」、行動が穏やかになる「スローゴーイヤー」、最後に行動しなくなる「ノーゴーイヤー」があります。

リタイヤ直後は老後の楽しみにしていた経験をしたくてうずうずしており、行動に移す体力も気力もあります。その後、一般的には70代になると、やり残したことも徐々に減り、体力も衰えるため行動は緩やかになってきます。

70代になって、旅行に行ける気力を持つ人は少ないでしょう。適切な年代で、適切な思い出づくりに励む必要があると著者は説明します。

長寿年金

とはいっても、早めにお金を使いすぎて老後の資金を使い切ってしまうのは心配です。

そこで著者は、以下を実施するよう提唱します。

1)寿命を予測する:保険会社が提供する寿命計算機で寿命の大まかな予測を立てる。健康状態や親族の病気を入れると、自分が何歳まで生きるかの計算をしてくれる。絶対正しいとは言い切れないが、自分があとどれくらい行きられるかを真面目に考えることは価値がある。
2)長寿年金に加入する:保険会社が提供している投資商材。例えば、60歳の時点で50万ドルの長寿年金を購入すると、そのお金は保険会社が所有することになるが、残りの人生の月々の支払いが保証される(月2400ドル)。

長寿年金のからくりを聞くと、日本にいる皆さんならピンと来たと思います。
〜ここからは著者でなく私の意見です〜

そう、年金です。

年金は、死ぬまで月々の支払いが保証されている保険です。
(現在と同等の年金額が至急されるかは将来不明ですが)支払っていれば生きている間は月々(厳密には支払いは2ヶ月に一度)の支払いは保証されます。

米国では、年金制度は国が保証していません。企業や個人によって、401kや確定拠出年金が必須となります。
日本の年金制度は誰もが入れて、国が予算もちゃんと準備し運用もしている、比較的良質な税金の使われ方だと私は考えます。

〜私の意見はここまで〜

相続は死ぬ前に

著者はゼロで死ぬと話すと、「子どものことはどうするの?」と必ず聞かれるようです。

著者はあくまで、子どもたちに与えるべきお金を取り分けた後の、残りの「自分のための金」を生きているうちに上手く使い切るべきだと主張します。
そもそも子どもたちには、死ぬ「前」に財産を与えるべきです。

<遺産相続のタイミング>
・あらゆる所得層において、60歳前後で遺産相続のピークに到達する
・人々の平均寿命が80歳で、親子間の一般的な年齢差が20歳のため当然の結果

この相続のタイミングが、60歳で受け取るのと、40歳で受け取るのでは価値は激減します。一般的に、人生のタイミングでお金を必要とし、かつ健康面でも有効活用できるのは、60歳よりも40歳であることは明らかです。

なお、著者は親が財産を分け与えるのは、子どもが26〜35歳の時が最善と結論付けています。

所感

本著の目的は、その時しかできない体験を作って思い出を増やし、自分が生きたいように生きることを推奨する人生啓蒙本です。

なぜ若いうちにお金を使わないといけないのか、今しかできないことにお金を使う有用性を説き、そのために必要な三原則(金・健康・時間)がそれぞれ適切な歳によって目指すべき姿勢を述べています。

私は90歳に近い祖母と毎週電話していますが、80に入ってからは特に積極的にどこかに行ける体力はなく、物を買うという行為も減っています。
自分の父親も、70歳から旅行して老後を楽しみにしていると言っていますが、本来ならもっと前の元気な時にお金と時間を使って楽しい経験に投じていればよかったのです。

普通の男性が考える定年の感覚を知りたい方は、こちらの本もおすすめ。

本著は論文引用は少ないですが、その分一晩で軽く読める本です。
ぜひ後半パートも、本著で読んでください。

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