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「まち歩き」という文化をつくる【まいまい京都の目指すもの①】

まち歩きのリーディング・カンパニーとして

私たちは、あたりまえのようにお茶のペットボトルを買う。しかし、1984年、世界で初めて缶入りの緑茶が発売されたとき、人々の反応は冷たかった。当時は「お茶はタダで飲めるもの」というのが常識だったからである。それでもじわじわと時間をかけ、いまや「お茶を買う」という新たな文化ができあがった。

まいまい京都/東京は「まち歩き事業のリーディング・カンパニー」だと自負したい。累計600人以上のスペシャリスト達とともに、年間1000を超えるまち歩きツアーを開催してきた。この事業を通じて「まち歩きを楽しむ」という文化を普及させたいと考えている。

埋もれた「偏愛」を発掘したい

まいまいが大事にしているのは、「おもしろい人」を探して、その人とツアーを企画することだ。私たちはどんなときでも、ガイドとして活躍できそうな方を昼夜を問わず求めている。

取材にきた記者であっても、休みの日にたまたま訪れたマッサージ店の施術者であっても、独自の視点や経験をもっていて、私たちが「おもしろい」と感じたらその場でスカウトする。この地道なスカウト活動がまいまい企画の礎だ。そうやってガイドの依頼を持ちかけると、こんな話がツアーになるのかと驚く人も少なくない。その人からすれば、自分がもっている街の見方や偏愛を聞きに、お金を払って人がくるなんて考えたこともなかったようだ。

しかし、私たちは確信している。唯一無二の偏愛こそ、人々は求めているのだ、と。これまで御用庭師から廃線マニア、ストリップ愛好会まで、濃いガイドさん総勢600名と出会い、多種多様なツアーを企画してきた。

予期せぬ視点が、世界を豊かに

ペットボトルよりさらに前、缶入りのお茶が発売されたとき、人々はその缶をどう扱ってよいかわからなかった。お茶は家で淹れて飲むものだったから。しかし、ひとたび、出先でもお茶を飲めるという便利さが実感されると、お茶缶は飛ぶように売れはじめた。

ここで気にしたいのは、「必要は発明の母」ではないということだ。顧客が缶入りのお茶を求めていたから、缶入り緑茶が開発されたわけではない。むしろその逆。お茶を缶に詰めるという発明が起きたことによって、アウトドアで緑茶を飲むという新たな文化が生まれたのである。未知なるものが、あらたな需要を生む。

世界で初めて自動車を普及させたヘンリー・フォードもこう言っている。「もし、顧客に欲しいものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えただろう」と。自動車のない時代、彼らは「自動車が欲しい」とは想像できなかったわけである。

まいまいのツアーも同じでありたい。参加者のニーズではなく、ひとりの偏愛から始まる。だからこそ、参加者さんは「知らなかったけれど、こんな世界があったのか!」と夢中になるのである。

 読書、観劇、まち歩き

私たちの仕事は、街のあらゆる「おもしろい人」をプロデュースし、ツアーというコンテンツに仕立てて需要をつくり出すことである。世界を見る視点が多様になれば、その人の人生はぐっと豊かになる。「スペシャリストと街を歩く」ことの知的刺激を、多くの人に体験してほしい。

まち歩きという行為が、本を読んだり、ライブに参戦したり、展覧会や舞台を見に行ったりといった日常のひとつとして浸透している。そんな世界をつくっていきたい。


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