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期待を高めるリード文のつくりかた【まいまい京都のメソッド公開②】

■ツアー告知は「予告編」

前回の記事で、まいまいツアーのタイトルのつくり方を紹介した。タイトルが決まったら、次はリード文をつくる。リード文とは、告知ページの文章のことだ。これをかなりの熱量で準備している。

まいまいのリード文は、予告編のようなものだ。映画の予告編は、2時間の本編を数十秒に再構成している。そこでは本編のストーリーどおりに情報が並べられるとは限らない。終盤の華やかなシーンが冒頭におかれることも多い。

私たちのつくるリード文も同じだ。これは予告であり、説明文ではない。ツアーの内容を順を追って説明するわけではなく、参加者にアピールできる情報を頭から打ち出していく。読者はシビアだ。興味がなければすぐそっぽを向く。一秒でも早く読者を惹きつけるために、まいまいのリード文はクライマックスから始まる。

■集客をアップさせるリード文とは

具体例をあげて説明しよう。以下のタイトルやリード文を見比べてほしい。みなさんなら、どちらのツアーに申し込みたくなるだろうか。

あなたなら、どっちが気になる?

お気づきのとおり、これはどちらも同じコース。かつてA案で告知をしたが、あまり集客がなかった。そこで新たにB案を作成した。すると、一気に人気が跳ね上がったのだ。何が変わったのか、詳しくみていこう。

■タイトルがリード文を決める

まず、タイトルが違う。A案でいちばんのキーワードは「京阪王国」。これはツアーの内容としては重要なのだ。しかし、それが集客に効果的なポイントかといえばそうではなかった。何をツアーのウリとするか。それを見定めるのが事務局の腕のみせどころだ。

私が実際にこのコースを歩いたとき、あらためて強く実感したのは、こんな絶景ダムまで街中から歩いていけることへの感動だった。これなら、多くの人に響くはず。そう思って、B案では「歩いていける絶景ダム」ということを一番のアピールポイントにして、タイトルをつくった。

タイトルづくりのプロセスで、このツアーのいちばんのウリは何なのかを見定める。タイトルは、アピールポイントを凝縮したものだ。リード文では、タイトルに散りばめたキーワードをぜんぶ拾いながら、さらに詳しく魅力を伝えていく。

■どこよりも詳しいリード文解説

では、リード文の一言一句にどんな狙いがあるのか、大きく3つのパートに分けてじっくりとみていこう。

▼導入

全国でも類を見ない、
街中から歩いていける絶景ダム
「天ヶ瀬ダム」をご存知でしょうか?

冒頭で、街中から歩いていけるダムが珍しいという前提知識を共有する。

リード文作成に慣れていない人だと、コース内容をていねいに紹介しようと「京阪六地蔵駅を降りてまずは火薬製造所へ……」と行程を書きたくなってしまうが、そこはぐっとこらえる。まず、読者の興味を惹くところから始める。

タイトルでは「歩いていける絶景ダム」としか書いていないが、リード文では情報を追加している。歩いていける絶景ダムが全国でも珍しいことや、宇治駅という街中の駅から歩いていけるということをさりげなく示す。

琵琶湖から唯一流れる宇治川をせき止め、
放水時の轟音はまさに圧巻。
アーチダムのなかでも
群を抜いて美しい曲線美を持ち、
しかも上に登って
絶景の鳳凰湖とともに堪能できます。

つづいて、コースを歩いているときの情景描写をする。どんな音がするのか、どんな景色が見えるのか。参加者さんはその場で何を感じることができるのか、そこに価値がある。特にこのツアーはダムの絶景をウリにしているので、そのイメージが思い浮かぶように具体的に書いていく。

第一段落では固有名詞は「天ヶ瀬ダム」しか挙げなかったが、ここでは「琵琶湖」や「宇治川」など、パワーのある固有名詞を並べている。場所のイメージをもってもらうためにも、有名な地名は効果的に使いたい。
逆に言うと、あまり引きにならない固有名詞は伏せたほうがよい。A案では最初から「桃山南口駅」「六地蔵」などの地名が出ているが、多くの人にとってイメージできるものではないのでカットしたほうが伝わりやすくなる。

▼中盤

このツアーの一番のアピールポイントである「歩いていける絶景ダム」の説明が終わったら、つぎはツアーの流れについて紹介していく。

今回はまず、京阪宇治線
ぶらり途中下車の旅。
「六地蔵」には、なんと京阪が
名古屋を狙った野望の未成線が…!
その痕跡がJRの駅下にあるって、
どういうこと?

陸軍火薬庫へと続いた、巨大な築堤。
謎のS字カーブ。京阪が宇治にかけた
起死回生の遊覧鉄道「おとぎ電車」とは?

そして、その運命を決したのが
「天ヶ瀬ダム」だった・・・
って、一体どういうこと?

ここでも、ルート順に説明はしていない。このパートでは、「これってどういうこと?」という謎を連打している。「どうして、京阪の野望の痕跡が、JRの駅下にあるの?」と問いかけられると、電車に興味のない人であってもなぜか気になってしまうのではないだろうか。コースのウリである「天ヶ瀬ダム」がどのような役割を果たしたのか、それも謎掛けのかたちで紹介している。

提示した謎は、読者がツアーに参加する動機にもなる。「あの謎を解いてみたい」「現地には何があるんだろう」と思わせるような問いを仕込んでおくと、ツアーが謎解き感覚でより楽しめるようになる。

▼締めくくり

宇治川を舞台に交わった、京阪王国の夢。
ダム湖に沈んだ「おとぎ電車」の痕跡をたどって、
秋色に染まる天ヶ瀬ダムを目指しましょう。

そして最後は、いよいよ始まるぞ!というワクワク感を演出する。リード文はあくまでプロローグ。ツアーへの期待感を高めて締めくくる。タイトルに使った言葉で、リード文に登場していないものがあれば忘れずに使う。

このツアーの魅力は、ダムの絶景を楽しめることだけでなく、鉄道の痕跡をたどって「京阪王国」の夢に思いを馳せるところにもある。このコースの意味をさまざまな角度からアピールした。季節感も添え、この日ならではの情景も描写した。

あらためてA案と見比べてみると、違いがはっきりわかると思う。A案では「鉄道」に焦点が絞られていたが、B案では「絶景ダム」と「鉄道」に変わった。A案にかなり細かく記載されていた固有名詞もかなり減らした。パワーをもつ地名だけを厳選した。そして、初めての人にはわかりにくい歴史ストーリーはカットして、情景描写を多めにする。こうすることで、ずいぶんと印象が変わった。

■タイトルとリード文が集客のカギ

言葉選びひとつで集客が変わる。私たちは告知ページづくりにかなりの労力をかけているが、これこそがまいまいの生命線だ。コースの面白さをしっかりと言葉にして、一見さんにもアピールする。

そして、推敲を重ねに重ねたタイトルとリード文によって、期待を最大限に高めた参加者さんは、自ずと前のめりにツアーに参加してくれる。主体的な参加者の高い意欲を受けて、ガイドさんも勢いづき一層愛情が発露する。その相乗効果が、最高に楽しい時間を生むのだ。

ツアーの魅力を、まだ歩いていない人に伝えるにはどうしたらよいか。時にはマニアックなガイドさんの思いを翻訳して、参加者に届くアピールを追い求めることが、まち歩きツアーをつくる私たちの仕事だ。

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