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グザヴィエ・ドラン監督④「たかが世界の終わり」・・家族との問題

 4本目は、最新作の「たかが世界の終わり」(原題、It's only the end of The world)病で余命幾ばくも無い青年が12年ぶりに故郷の実家に帰るというお話。

 自分自身が家族とどのような関係を築いてきたかによって、この作品から何を受け取るか異なってくるかもしれない。
 ストーリーとしては、冒頭で書いたことただそれだけのこと。家族各々の心理が描かれていく。ある種の緊迫感。
 何故12年もの間帰ることがなかったのか、具体的に語られることはないのだけれど(その点はあまり重要ではない)家族とのやり取りの中でなんとなく推し量ることができる。

 彼は多分ゲイ。家族の中で彼だけがいろいろな面で異なっている。居場所がない感覚。愛されていても、理解されている感じがしない。自分を理解した上での愛が欲しいのに、無理解で盲目的な愛は少年にとってはうっとおしいだけだったのではないか。

 これはわたしの受け取り方。わたしにとっての家族はこうだったから。

 彼の帰郷を待ちわびて、うきうきとメイクやネイルに精を出す母親。息子への愛情が後光のようにきらめいている(笑)
確かに愛されているよ、息子。
 幼い頃に別れたきりの妹。すっかり成長して、兄と会える期待でわくわくしている。優しい兄嫁の素朴な愛情。彼のことを気遣って言葉を探しながら話し掛けている。
 兄はずうっととげとげしい態度だ。どうやら、都会で作家として成功しているインテリの弟にコンプレックスを抱いているらしい。イライラが最高潮に達した時、ようやく兄なりの愛情に気付くことができる。

 結局、自分の死について打ち明けることなく終わる帰郷だ。

 今までに鑑賞した作品と、少し雰囲気が違うかもしれない。これを監督した時ですら、まだ27歳なのに。ちょっと丸くなった感じ。わたしとしては、あのとんがった感覚が気に入っていただけに、少し肩透かしだった。
 でも、決して落胆した訳ではない。
 例のごとく、静謐な美しさをたたえた映像煌めくような動的な映像とのコントラスト!光と影空気・・・。効果的な音楽(クラシックからポップスまで)・・・本当に素晴らしい。
 それと、ありえない程豪華なキャストだものね。
 ギャスパー・ウリエル(主人公ルイ)
 ナタリー・バイ(母)
 ヴァンサン・カッセル(兄)
 マリオン・コティヤール(兄嫁)
 レア・セドゥ(妹)
・・・ということで、ちょっと目が眩んでしまったかも。

 最後にグザヴィエ・ドラン監督の言葉を・・・

人は誰でも、愛し愛されたいのです。
分かり合うことは難しいけど、
いつかきっと届くはずです。