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笠女郎が家持に寄せる歌(22)皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど

皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも
                          (巻4-607)

全ての人に就寝の時を告げる鐘は打たれるけれど、貴方を恋する私は眠ることなどできません。

笠女郎の時代、朝廷の陰陽寮所属の時守が鐘を打ち、時を告げた。
就寝の時を告げる鐘は、亥の刻(午後10時頃)。

大伴家持の訪れを待ち続ける笠女郎にとっては、「寝なさい」と告げられても、寝ることなどはできない。
もしかして訪れるかもしれない家持に、寝ぼけた顔を見せないのは、恋する女のたしなみ。

ただ、こんな生活が続くと、不眠症にもなるだろう。
一途な笠女郎が哀しく思えて来る。

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