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与那国島の月夜は赤く燃える

7月の頭にイギリス、オックスフォードから東京へ戻ってきて一か月。
今、私は日本の一番西にある島。与那国島にいます。


イギリス、東京、沖縄、そして与那国島

オックスフォードで暮らした日々は穏やかなものだった。朝から野生のリスを見て、近所の公園には牛がいて、メインストリートは2本ほどしかない小さな街で3ヶ月半くらしたあと東京へ戻ってきた私は、そのスピードに圧倒されていた。
10年以上この大都市で働いてきたはずなのに、あっという間にオックスフォードののんびりとした時間軸に慣れていたようだ。
一か月ほど東京で働いたあと、沖縄へ約一か月間、住むために移動してきた。

こんなに沖縄に滞在することが人生の中で今後あるだろうか?
時間があるときにしか行けない離島に行ってみよう。と、沖縄へ来て10日後くらいにして、ようやくそんな気持ちが生まれてきた私は一人、島へ行くことにした。


海底遺跡と与那国馬

波照間島と、与那国島。どちらへ行こうか悩んだ結果、海底遺跡ダイビングのできるという与那国島へ行くことにした。
しかも実は以前、写真家の岡田裕介さんの展示「その背中を風が撫でて-Horses in the wind-」展で与那国馬を見ていた私は、その壮大な自然と躍動感のある馬たちにひどく憧れを抱いていたのだ。
与那国島は、那覇空港から約1時間半。飛行機の数は少ないものの、意外と行きやすい。
10年程前に石垣島へ初めて行った時、地元の漁師のおじさんが良くしてくれて、その場で出会った数人と色んな島へ連れて行ってもらったことがある。
与那国島へ来る前、今回もそういうことが起こりそうだな、と思っていたら案の定、着いて1時間もたたないうちに地元の漁師のカツアキさんに声をかけられ、一人では体験できないような体験をさせてもらえることになった。


8月の十六夜月

「星が綺麗に見える場所に連れて行ってあげるよ」と言う漁師のカツアキさんに夜のドライブに連れて行ってもらう。
しばらく車を走らせたあと、山の隙間から真っ赤な朱色の光がチラチラと見えてきた。あれはなんの光だ?と言いながら車を走らせると、海面から少し上がった場所に真っ赤に光る月が登ってきているではないか。
こんなにも大きく、そして真っ赤に燃える月を見たのは生まれてはじめてのことで、一瞬で心を奪われた。

実際にはもっと紅く大きく見えた月。写真でおさめられなかったのが悔しい。

そういえば昨日は満月だった。だからこんなに月が明るいんだな。これじゃあ星が綺麗に見えないじゃないか、残念だなぁ。とつぶやくカツアキさんだったが、この月を見れただけでも私には大きな感動だ。
その後、島で一番高いという山へ連れて行ってもらい星空を眺めたのだが、やはり月明かりが強くて星はあまり見えない。都会にいると月明かりの強さを感じることはあまりないが、こんなにも月が明るかったということを改めて認識することができた。


太陽が昇り、月が沈むその真ん中で

次の日の朝5時から、私はカジキマグロ釣りに連れて行ってもらうことになった。
もちろんそこではカジキマグロ、そしてカツオをたくさん釣らせてもらい、戻ってからその場で新鮮なカツオのたたきとマグロのお刺身を食べさせてもらってとても嬉しかったのだが、それよりも私は、はじめて見る海上からの朝陽と、反対側に沈もうとする月のあまりの美しさに見惚れていた。
写真や動画ではこの空の微妙で多様な色合いの変化が表現しきれず本当に悔しいのだが、海の向こう側が段々と明るくなり、海と雲の隙間から徐々に太陽が見えてくるその姿をみて、日本が日出ずる国という美しい呼び名を持っていることを思い出し、感動で自然と涙がでてきた。
自然をみて感動で涙が出てきたのはこれが初めてかもしれない。それほど本当に美しい朝陽であった。


そして反対側には、昨夜あれほど大きく真っ赤に見えていた月が、小さく雲の上に佇んでおり、少し青みがかった暗い色の雲の上に、どこからか光を浴びて薄ピンク色に染まる雲が並び、月の明かりは太陽がでてきてもなお力強くあたりを照らしていた。

人は伝えきれない感動を誰かに伝えたいと思ったときに、絵を描いたり文に残したりするんだなぁと気付かされた一瞬だった。


夕陽の美しさ

与那国島へ来て一番魅了されたのはやはり空の美しさなのかもしれない。沈みゆく太陽の光が広がる夕陽も格別に美しかった。


なんと美しい島なのだろう。
人間が作り出す美しさが、この島にいるとなんと小さいものに思えてくる。
それでも私は、私たちは、誰かの心にズシリと強く傷跡のように残るようなものを生涯のうちに一度でも作れたらと思っている人が世界中にたくさんいることだろう。
そうやってこの星を生きているのだろう。


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