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川奈天吾が青豆雅美に接するように、僕は超やさしかった(本音はともかく)

3年半前のことです。

妻のゆかりちゃんは、書類が大量に詰まった段ボール箱を持ち上げました。
正確には、持ち上げようとしたのです。

「あたっ!」

ゆかりちゃんの大声が、家中いえじゅうに響き渡りました。
ひょっとしたらマンション中に響き渡っていたかもしれません。

「ヤバイ、ヤバイ!」

出川哲朗さんのマネを始めました。
ぜんぜん似ていません。

「ビギッて言った!
 ビギッて言った!
 ビギッて言った!」


腰が、「ビギッ!」っという音を出したようです。
おそらく、ギックリ腰ですね。

でも僕は、長年、椎間板ヘルニアに苦しんだ人間です。
いわば、

有段者級の経験者です。
逆かな。経験者の有段者です。


だから、本物のギックリ腰の痛さを知っています。
本物のギックリ腰ならば、会話などできません。

「ヤバイ、ヤバイ!
 ビギッて言った! ビギッて言った! ビギッて言った!」

こんな説明はできません。不可能です。
これは、腰が「ビキッ」と鳴ってビビっただけのことです。痛いような気がしているだけです。

でも、そんなことを言ったら、ゆかりちゃんが可哀想なので、僕は、

「行きつけの接骨院に行った方がイイね」

と、天日干しした羽毛布団のように爽やかで暖かく言いました。
川奈天吾が青豆雅美に接するように、超優しく接しました。
本音はともかく、です。

ゆかりちゃんは、すぐに、接骨院に電話しました。


ゆかりちゃんは接骨院から帰ってくると、わが家にあったコルセットを腰に巻きました。
僕が少し前まで使っていた腰椎コルセットです。
バンテリンコーワの、値段のお高いコルセットです。


ゆかりちゃんは、その、バンテリンコーワの腰椎コルセットを、

ふぁさ~

っと巻いていました。腰に。


コルセットとは、ギュッ!と、きつく巻くべきモノ
です。

3年半前の僕は、体重が74kgで、腰椎コルセットもLサイズLLサイズだったのです。

ゆかりちゃんがその腰椎コルセットを巻いて、ギューっと絞ると、それは【マジックエリア】を越えてしまいます。
ブレーキが作動せず緩んでしまうのです。

スレンダーなゆかりちゃんならではの珍現象でした。
これではコルセットは、コルセットの意味を果たしません。

でも、ゆかりちゃんは、
それなのにゆかりちゃんは、
僕がさんざん使い倒したバンテリンコーワの腰椎コルセットを、

ふぁさ~


っと、巻いているのです。

ふぁさ~

って、巻いても無意味です。

ファッション?

・・・腰痛ファッション?


それともあれは、「腰の痛みがなくなりますように…」という、祈りの儀式だったのでしょうか。
願掛けかなぁ。


いえ、こんな願掛けは無意味です。
願掛けの効果などは一切期待できません。

神様だって、笑っちゃって力が入らないですよ。
神様だって、

「ふぁさ~、
 って、なに⁈」


と、思わずツッコミを入れちゃうでしょう。

この

ふぁさ~

が、僕のツボに入って、笑けて笑けて、メッチャ大変でした。

真面目な顔しているんだもん。
反則だよなぁ。


僕は、ゆかりちゃんが大好きです。






おしまい


※この記事は、エッセイ『妻に捧げる3650話』の第1380話です
※この記事は、過去記事の書き直しです


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