漫画原作の実写映画は、どれを観れば地雷じゃないのか? ~映画データ分析シリーズ~

突然ですが、皆さんはキュウソネコカミの「NO MORE 劣化実写化」という曲をご存知でしょうか?

楽曲:https://youtu.be/SJwOnThUt9I

歌詞:http://j-lyric.net/artist/a058de3/l041ee2.html

自分の好きな漫画が、次々と実写映画・ドラマ化されることに対するファンの怒りとやるせなさと、それでも消せない隠れた期待を歌にした迷曲で、昨年発表されたときは、曲がどうのこうのよりも

もうキュウソには二度と、漫画原作の作品タイアップの話は来ないのではないか

というのが不安で仕方なかったんですけど、まぁめちゃくちゃキュウソっぽい笑える曲なので、聴いてない人はぜひ聴いてみて欲しい笑

というわけで今回は唐突に、私がキュウソを聴きながら不意に疑問になった

漫画原作の実写映画って、どれを観れば地雷じゃないのか?

という、まぁまぁ尖った内容でお届けします。

ちなみに、調べる前から思ってたけど、書き終わってみたらところどころ「本当に出版社の方にキレられるんじゃないか」みたいな話になりました。ブログじゃないと書けない感がMAXなので、私が記事削除する前に読んでおいてね☆

0. 漫画原作から実写化された映画の本数

というわけで、まずは全体の本数から見ていきましょう!

ちなみに、今回はこちらのアニメ・漫画の実写映画化作品一覧という、何かしらの強い執念を感じるWikipedia記事を元に調べています。よくこんなに漫画原作の映画ばっかり調べたよね? むしろどうやって調べてるんだ??

というわけで、Wikipediaをもとに、製作本数を年別に並べてみたのがこんな感じ。

ほぼ横ばい

冒頭のキュウソ「NO MORE 劣化実写化」が発表された2017年は確かにめっちゃ多いけど笑、基本は

たまに多い年があるが、だいたい横ばい

という感じでしょうか。なんだかんだとよく話題になりますが、全体として特に本数が増えてるわけではないんですね。

1. 原作漫画のジャンル編

じゃあ早速本題に入っていきましょう!まずはジャンル別!

原作漫画を

・少年漫画

・少女漫画

・青年漫画

・女性漫画

・その他(エッセイ、実録漫画、漫画媒体以外の連載作品など)

の5つに分けてデータを見てみます。

ちなみに期間は 2010 - 2017年で、WikIに掲載されていた全297作品が対象! 2009年より前は、ちょっと気力を使い切ってムリだった笑。

というわけでまずは本数から見てみましょう! ジャンル別でみると、こんな感じ!

青年漫画多い

2番目に多い少女漫画に2倍近い差をつけて、ぶっちぎりで青年漫画が一番実写化されていた。そうなんだ?! いや、言われてみれば「カイジ」とか「闇金ウシジマくん」とか実写の映画が多いけど、こんなに数字違うんだ?! 

なんというか、誠に申し訳ないんですが私は音楽が主戦場で、漫画については人並みの知識しかないので、すでに最初から驚きを隠せてなくてアレなんですが、先が長いのでとりあえず驚くのは後にして、どんどんグラフを見ていこう。

というわけで次は「映画の評価」です。これは「Yahoo! 映画」のレビューの平均をジャンルごとに出したもの。

Filmarksとか映画.comとか、映画レビューサイトはいくつかありますが、投稿数が多く、2010年からあるという基準で「Yahoo! 映画」にしておきました。サクラ問題とかいろいろあるけど、そこはご了承くださいな笑

というわけで映画のレビュー平均がこちら!

少女漫画 低くない?

いや本当に? 少年漫画よりも低いの? ありえない特殊能力をCGでごまかされるより、2次元の完璧な イケメン & 美女が、次元を超えてくる方がこの世界って厳しい目で見られてるの? そうなの? なんかもう映画作るのって難しすぎない??

ちなみに、例を挙げておくと、少女漫画で評価が高かったのは「ちはやふる」「3月のライオン」などでした。逆に低かったのは「Pa●●●●se K●●s」「好●●●●●●よ。」などなど(小声)。でも、後でも触れますが特に「ちはやふる」は驚異的。めっちゃすごかったよちはやふる…!

しかし、このグラフを見てると「青年漫画」というジャンルが

原作の数がそれなりに多く、それなりにファンも付いていて、実写映画化しても、ある程度のクオリティで作れる

がゆえに実写化されまくっている、というのがよくわかりますね。

「女性漫画」や「その他」は映画の評価は高いんですが、「純情」「ダブルミンツ」などのBL系作品や、漫画雑誌以外で連載されていた「毎日かあさん」「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」などなど、ターゲットがややニッチだったり、原作自体がイレギュラーな売れ方をしていたりで、おそらく大量に映画作るのは難しいんだと思われます。

だから漫画家の方で「いつか絶対に、自分の漫画を実写映画にして欲しい!」という方がいれば、青年漫画を描くのが一番いいのかもしれない...!

というわけで、ジャンル別コーナーのラストは、非常に生々しい「じゃあ、どれくらい売れたんだよ?」をお届けします。

映画の興行収入は、配給会社によって出していたりいなかったりで、297作品中、141作品しかわからなかったんですが、とりあえずわかった分だけ出してみたのがこんな感じ!

少年漫画つよい

さすがにこれは圧巻というか、漫画の王者たる貫禄がある。そして、

さっきの映画レビュー評価と、売上関係なくね?!

っていうね。はからずも「いい映画を作れば売れるのではなく、原作が人気の映画が結局は売れるのだ」ということを示してしまって、心苦しい限りなんですが、まあそうだよね。いくらSNS時代は口コミやレビューが大事と言っても、まだまだ原作知ってる作品の方が強いよね。そりゃそうだよね...

2. 原作漫画の連載誌編

というわけで「映画の内容よりも、原作が強いかどうかの方が、売上には大事」という身もフタもないデータが出てきたところで、次のトピックに移りましょう。

次は、漫画のジャンルではなく「掲載している漫画雑誌」別でデータを見てみます。このあたりから出版業界の人に怒られそうな空気が漂ってくるね。なんかもう先に謝っておこう、不快な箇所あったらすいません!

というわけで、まずは本数から見てみましょう! 掲載誌が判明した全268作品を、グラフにするとこんな感じ!(現在休刊の雑誌も含みます!)

とりあえずいろいろ感想はあると思うんですが、個人的には

トップ2、どっちも集英社やん

というのが気になって仕方なかった。マーガレットにジャンプて! 少年も少女もおさえまくるとは最強か? 最強なのか?

まあでも、この表を見ると感想としては

・青年誌が多い

・大手出版社が多い

という感じでしょうか? まあそうだよねという感じがするが、改めて数字で見ると胸に迫ってくるものがあるよね。

というわけでこのまま、ドキドキの映画レビュー平均を雑誌別に見てみよう! 

これは雑誌によっては「1作しか作っていない」とかもあり、平均すると妙に不公平なグラフになってしまったので、5作以上の漫画を実写映画化している大手雑誌だけに絞りました。(だから、これより平均評価が良い雑誌もあるし、これより悪い雑誌もあるよ!)それがこちら!

月刊アフタヌーンすごい

レビュー平均 3.56 って、漫画原作とか置いといてフツーに映画としてすごいよね。なんだかよくわかんないけど、とりあえずアフタヌーンを応援していこうという気持ちになる。

ちなみに月刊アフタヌーンの実写映画の具体例を挙げると、

・寄生獣

・リトル・フォレスト

・無限の住人

とかですね。作品によってはそこまで実写化しやすいってわけでもないのに、普通に評価の高い映画を作ってるのがすごい。 

あとビッグコミックオリジナルもけっこう高いんですが、具体的には

・深夜食堂

・岳 -ガク-

・ALWAYS 三丁目の夕日'64

などでした。アフタヌーンに比べると、比較的こちらは、実写化しやすい原作感ある。そしてめっちゃ個人的な話ですが、私がビックコミックスシリーズ好きなので、上位に入っているのが嬉しかった。私からは以上です。

という感じでいろいろとグラフを見たところで、やってまいりました、ラストコーナー「じゃあ、どれくらい売れたんだよ?」にいきましょう。

これも、平均すると妙に不公平なことになったので、3作以上、興行収入を公開している大手雑誌のみで、平均の興行収入を見てみましょう。

それがこちら!

まさかの休刊誌がトップ。

いやアフタヌーンじゃないのかよっていうね。さっきの評価で上位だったビッグコミックシリーズも全然上位じゃないし、レビュー評価でちょうど真ん中にいた、あの懐かしの週刊ヤングサンデーが突然の1位に躍り出るという。

いや、勘違いしないで欲しいのは、私は別に週刊ヤングサンデーに何の恨みもなかったというか、なんなら意気揚々と「ソラニン」のコピバンやってたタイプの大学生だったし、「イキガミ」とか「クロサギ」とか好きなので本当ヤンサンありがとうございましたみたいな、これはこれで良い話感あってすごく良かったんですけど、なにこのさっきから突きつけられる

映画のレビュー評価と、売れたかどうかは関係ない

感は? なにこれ? この気持ちを私はどこに向ければいいの?

ちなみにヤンサンが、なんでこんなに天下のジャンプすら抑えて、ぶっちぎりの独走状態だったかというと、ひとえに

「海猿」がめっちゃ売れたから

ですね。そのせいでデータが跳ね上がるという笑

だって海猿って、映画4本中の3本が、日本の歴代興行収入ランキング TOP 100に入ってるんだもん。なにその化け物? どういうこと??

しかし、ジャンルで見ても雑誌別で見ても、結局レビュー評価と売上がまったく一致してなくて、

「皆にとっておもしろい物を作れば売れる」はただのウソ

をどんどん証明する形で、私もこのnoteを書くのがどんどんつらい笑。

なんかどのデータを見ても、中身以上に「露出が多いか、話題になるかが大事」感が漂ってるし、なんていうか皆「いいな~」と思った映画はウザがられてでも大騒ぎして、露出と口コミを増やしてこうな! 「いい物はほっておいても売れる」はただのウソだ...。

3. 出版社編

さて、本編最後のコーナーは出版社編! 

一番怒られそうなわりに、需要は少ないという、単なる業界人向けの内輪コーナーですが「ここまでデータ集めたなら、最後の最後まで出してしまえ」ということで出版社別でも出してみます。

というわけで、まずは本数! こんな感じ!

だよね

いや、もうこれは「だよね」でしょう。日本の出版業界の大手3社、講談社・集英社・小学館だけで

全体の51%を占める

っていう感じですね。いや知ってた。これは皆わかってたよ。

なので、これだけでは面白くないだろうという謎のサービス精神により、「出版社ごとの実写映画数の推移」も一緒に出してみました。それがこちら。

講談社と集英社が増えてる

っていう感じですね。特に出版最大手の講談社かな。

個人的には「出版不況でどこも実写化作品を増やしてるのかな~」と勝手に思っていたが、そういうわけでもないらしい。最大手2社が増やしているから、増えてるように感じるという形みたいですね。

あと、ちなみに「なぜ上位4社にしたか」というと、毎年継続的に実写映画を作っているのが、この4社ぐらいだったからでした(あとは双葉社もほとんど毎年作ってるかな?)

それ以外は、実写映画がある年もあれば、ない年もある、という感じでなんというか、ここでも大手出版社の強さが垣間見える感じになった... いろいろ大変なんだろうな漫画の実写映画化って... 

そういうわけで、次は出版社別のレビュー評価を見てみよう! これが一番怒られそうだ!笑

今回も平均して不公平にならないように、2010 〜 2017年で5作以上を実写化している出版社だけに絞っています。その結果がこんな感じ!

突然の秋田書店

いや、ここまで沈黙だったからビックリしたよ。ここで底力見せる?みたいな。

ちなみに秋田書店の漫画雑誌は「ヤングチャンピオン」「月刊少年チャンピオン」等で、具体作でいうと

・クローズ

・セトウツミ

あたりが有名でしょうか。その他、お色気作品もけっこう強い出版社のイメージ。(あくまで私のイメージだから、異論はあるかもしれないが...)

そして2位は、ジャンプ & マーガレットを擁する集英社

なんというか集英社って、さっきからデータを見てても、売上やレビュー評価でぶっちぎったりはしてないけど、どのグラフでも上位に必ずいるし、「評価が高い」と「売れる」のバランスがめちゃくちゃ良い気がして驚嘆するな... コンテンツ会社としてやっぱこの会社すごいんじゃね...?(※いや明らかにすごいんだけど改めて)

と、あれこれ思いの丈をぶつけたところで、最後にあのコーナーにいきましょう。

そうです、「じゃあ、どれくらい売れたんだよ?」のコーナーです。

ちなみにこれも、不公平な感じにならないように、3作以上、興行収入を公開している出版社のみで出しました。そういうわけで、はいこちら!

小学館おめでとう!

2位の集英社とマジで僅差だったので、もしかしてデータ間違えてたらどうしようと思ってあれこれ見たけど、たぶん大丈夫なので1位を祝わせていただきます。でもコレ、やっぱりあれだよね、小学館が原作の伝説の映画「海猿」が、ここでもパンチを効かせてるよね笑

というわけで、3つの項目にわたって漫画原作のデータを追ってきたわけですが、そろそろまとめに入りましょう!

まず「漫画原作で、評価が高い実写映画が観たい」なら、

1. 本数と評価のバランスでいくと、青年漫画が原作の作品は、基本的に安心して見れそう
3. その中でも特に「月刊アフタヌーン」「ビッグコミックス」シリーズは安定してそう
3. 出版社だと「秋田書店」「集英社」「小学館」の作品は、比較的安心して観ることができそう

続いて、「漫画原作で、売れてる実写映画が観たい」なら、

1. 問答無用で少年漫画
2. 中でも特に「週刊少年ジャンプ」「別冊少年マガジン」作品。
3. 出版社でいうなら「小学館」「集英社」「双葉社」

という感じになりました。

あと、個人的な感想をいえば「いまのところ、少女漫画の原作モノは過度に期待しない方がいいのか...?」という感じ。

平均レビュー低いし、興行収入もそこまで高くないから、当たれば大きい少年漫画と違って、お金をかけた製作も難しそうだし… なんかこう「少女漫画でおもしろい実写映画を撮りたい!」「むしろ既に撮ってるぜ!」って方には、ぜひ今後とも頑張って欲しいなぁと思いました。

というわけで最後に、ここまで最長レベルのnoteにお付き合いいただいた方限定で、2010年 - 2017年の漫画原作の映画ランキングを置いておきます。シルバーウィークに予定がない方、ぜひ役立ててもらえれば幸いです笑

というわけで、まずは興行収入ランキング!

まだその話するのかよって感じだと思いますが、やっぱ海猿すごいよね!笑

あと、ここにきて実力を見せつけてくる週刊少年ジャンプ勢。やっぱ当たると大きいんだな.. ていうか「るろ剣」はマジで無双してる...!

なんていうか興行収入のランキングを見ていると「そもそも原作がめっちゃ強かったうえに、映画の評判も良かった」という、お互いに幸福な組み合わせのものが入ったという形でしょうか? 

いつか原作漫画の発刊部数で、データを切っても面白いかもしれないな。この記事めちゃくちゃ疲れたから、しばらくやらないと思うけど笑

それから最後に、 (ユーザーからするとこっちの方が大事な)映画のレビュー評価のランキング

まとめて見ると、こんな感じ!

というわけで、2010 - 2017年の全297作品のうち、ユーザーからの評価で第1位を飾ったのは映画「ちはやふる -結び-」。評価が低くなりがちな少女漫画原作からの大躍進だ! ていうか普通に評価も高いし投稿数も多くてビックリするし、本当にすごいしめっちゃエモい。

あと最後に、表を見てお気づきの方もいると思いますが、唯一「興行収入ランキング」にも「評価ランキング」のどちらにもランクインした映画「のだめカンタービレ 最終楽章」

普通に神

だと思いました。面白くて、宣伝も成功して、売上も良かったとかそんな全員が幸福な話ありえる?? なんかデータ集めながら感動してしまったから、私はシルバーウィークに「ちはやふる」と「のだめ」を観返そうと思ったよ。作者さんも監督さんも、映画会社の方も出版社の方も、作ってくれてありがとう!

というわけで、 長くなりましたがこれで本当に終わりです笑。普段は漫画や映画より、音楽業界の分析のnoteばっかり上げてますが、もし興味があればフォローしてねん。お付き合いいただきありがとうございましたー。

読んでいただき、ありがとうございます!