アンダーグラウンド 未来行き

ネオン街から少し離れた高架下は、雨から私を守ってくれる。賑わっているあちらと比べるとさすがに暗いが、それでも水たまりが電灯を反射して夜をきらきらと彩っていた。頭上にあるこの線路はシンカンセンと呼ばれる乗り物のみが通る。そして皆噂をする。その乗り物は未来に行くという。けれども私達のような賃金労働者階級《プロレタリア》には一生縁のない話だ。

今度法律がまた改正されて、賃金労働階級の「特例」による特別移住が認められるという。だがそれは表向きの話だ。公然の秘密を"平等"という名のもと、明文化してしまったのだ。「特例」など一生来ない。ここから一生出れないというのに。
それらに気づくことのできない私達の仲間を愚かと呼ぶには、この世界はあまりにも理不尽すぎる。特別移住を夢見て生きる同僚たちの姿を、政治屋は嘲笑っているのだろうか。

現実知らずに“いつか”を夢見るのと、すべてを知って絶望するのとではどちらがまだましなのか。

轟音をたて、頭の上を通ったその乗り物を私は恨めしくも悲しくも思った。

おわり



書きたかったけど書けなかった裏設定:
"私"には上流階級の恋人がいた。身分の違いから、恋人の身内により無理矢理別れらさせれている。法律の裏側を知っていたのはそのため。

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