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「エンジニア採用の過熱」に翻弄されたジョブホッパーの行く末

採用活動をしていると、よく見掛けるのが1年未満の短期離職を続けるジョブホッパーの方々です。中には10年以上にわたって毎年転職されている方も居ます。

エンジニアバブル後の現在では企業による厳選採用が進み、転職市場での書類の進み方が悪くなってきたために、キャリア相談を頂くことも多いです。

ジョブホッパーに限らず、エンジニアバブル下では「少しでも不満があれば転職をする」という方も居られました。また、スタートアップに思い切って転職するというブームもありました。

なかにはスマホゲームのガチのように良い企業が出るまで転職をしているような方も居られます。採用市場が低迷したことでガチャで例えるところの「リセマラで☆5を出すためにガチャを回し続けたところ、☆4が出たこともあったがスルーしてしまったために、結果的に最後に出た☆2のキャラで戦わなければならなくなった」ような状況の方も居られます。一般的には転職を続けていけば行くほど、待遇や条件が微妙な企業になっていきます。

今回はジョブホッパーが産まれた背景、企業の思い、そして対策についてお話していきます。

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ジョブホッパーが存在できた背景

転職回数が多く、一社あたり在籍期間が少ないジョブホッパーでも需要があったのは、下記のようなエンジニアバブル(2015年-2022年11月)の背景があります。2015年のアベノミクスから始まり、世界的なコロナ禍の金余り現象へと繋がったと言えます。エンジニア採用市場が加熱、というよりも過熱と言える状況でした。

  • 上場済みSaaSによる強気の採用

  • スタートアップ投資の加熱

    • VCと目標正社員採用人数を握ってしまったことにより「人数を揃えるための採用」を実施

    • 採用に不慣れな人達が採用「してしまう」現象

  • 外資ITによる日本人エンジニア採用

    • 提示年収での圧倒

    • リモートワークの浸透による国を跨いでの雇用の発生

  • 内製化ブーム

    • 何が何でも内製化という風潮のため、外注から切り替えるために正社員採用が加熱

  • コンサルブーム

    • 「君もコンサルにならないか」とPjMが引き抜かれる

    • 情シスがDXコンサルとして引き抜かれる

    • 総合コンサルが第二新卒(最盛期は20代全域)を対象に採用する

    • コンサルになりたいSIer、SESが上記に追従

  • 一部企業が『エンジニアファースト』を打ち出す

  • スカウト媒体にRPAが氾濫し、例え架空の経歴でも記載なしでもエンジニアを名乗ればスカウトが届くように

どうしても正社員採用人数を達成したい企業が溢れました。採用しても再び短期離職してしまう懸念を企業側に伝えてたとしても、採用目標を達成したい社内の人も、仲介する人材紹介会社も『この辺で採用しないと採用できませんよ』と事業部や経営層に働きかけていた時代が確かにありました。

厳選採用環境下での書類懸念

エンジニア採用の過熱がギュッと冷え込んだのが2023年でした。それまではジョブホッパーでも年収は据え置き、あわよくば微増でサインできていたのが急速に決まらなくなっていきます。ジョブホッパーが懸念されている背景について整理していきます。

一人当たり採用コストの高止まり

人材紹介会社の紹介フィーは40%(初年の想定年収に対するパーセンテージ)から下がる気配がありません。

お財布がシビアになってきたコンサル、SES、SaaS、スタートアップにおいて、「これまで実績として短期で辞めてきた人材に大枚を叩くか?」と言われると厳しいため見送られやすくなっています。業務委託であれば可能性はありますが、パフォーマンスをシビアに見られます。業務委託を経て正社員になる可能性はあります。

元々転職頻度を懸念していた企業が採用を継続している説

採用を継続している企業の一つが日系大手企業です。特に彼らに顕著なのが元よりエンジニアバブル中であっても転職頻度を気にして書類で落としていたというものです。よく言えば情勢に流されずに手堅く採用をしていたとも言えます。

こうした企業から声は掛からないかと言うとそうでもなく、RPAによる自動送信によってスカウトが来たり、特に人材紹介担当者が頭を使っていない状態での推薦はあります。そのため応答した段階で落とされる状況が産まれます。候補者からすると『応募数は多いがやたらとお祈りされる』状態に繋がるため疲弊します。

ジョブホッパーから脱するために

ジョブポップしてしまったものは経歴を詐称するわけにはいかないので、どうにか改善行動をしなければなりません。

「不満があれば転職する」は繰り返すと厳しい

長期で就業できることを示す必要があります。経歴の途中に3-5年長続きした企業があると、「何か条件が整えば長続きする人なのかもしれない」と思えます。

私のところにキャリア相談に来られる方についても下記のような形で現職残留をお勧めしています。

  • 不満点を言語化する

  • 自身の能動的な働きかけによって改善ができるかトライする

  • ある程度のサイズの企業であれば異動も視野に入れる

不満点の言語化は特に重要です。「なんとなく嫌だ」「ここではないどこかに行きたい」というぼんやりとした不満では次も路頭に迷います。

年収に関しては、現在が極端に相場より低い場合は上がる場合があります。ただしジョブホッパーの場合、オンボーディングして数カ月後に辞めるということを繰り返しているので、エンジニア歴が同数の志望先社員と比べると見劣りすると思われることがあります。

小さなところに行かない

個人的な目安としては100名です。従業員数名の企業は一見自由に見えるのですが、それは組織が小さい故に規則がないだけです。事業の方針や雰囲気がコロコロと変わる小さな企業に行くと職歴が増えかねません。スタートアップもしっかりとした不況のため、整理解雇されるリスクもあります。避けた方が良いでしょう。

過去在籍への出戻りも視野に入れる

アルムナイなどと言われていますが、過去在籍企業が悪くない環境なのであれば出戻りも考えてよいでしょう。離職してからのスキルアップが見込まれれば年収についても考慮されることがあります。

重要なのは在籍中の評価と評判です。行動面や言動に問題があれば歓迎されにくいです。ましてや退職エントリーで当該企業をこき下ろしたりすると厳しいです。どう思われているのか自信のないかたは、現在も在籍中の社員に「久しぶり」と声をかけることからお勧めします。

リファラルされることを意識する

本来であれば「就業先に困った場合の駆け込み寺」として人材紹介会社があったのですが、前述したような人材紹介フィーの高止まりがあるので、「採用コストの高い経路から短期離職する可能性がある人を採用して良いのか」という懸念は企業側で産まれます。

また、スカウト媒体についても値上がり傾向です。スカウト返信率は低下傾向です。契約企業に対してサービスでつくものはスカウト通数の追加くらいなので、人力で打っている企業や、そもそもの採用ターゲットが限定的な企業には嬉しいものではありません。最近ではChatGPTなどを用いたスカウト代行も誕生していますが、1通あたりいくらで清算される傾向にあります。そのため、スカウト媒体を利用しても一人当たり採用単価は上昇している状況です。

直接応募は採用コストが最も低いチャネルなのですが、未経験や外国籍の応募が多く、人事採用担当者にとってはスクリーニングに疲れ果てて居たり、軽視している場合も少なくありません。

こうした背景を考えると友人知人からのリファラルを頼るのが良いでしょう。採用コストが低いだけでなく、友人知人であるためにある程度の人柄が担保されることから、採用する企業としても検討の余地が産まれやすいです。

友人知人が少ない場合は、企業が行っているイベントに参加したりして友人知人を増やしましょう。ただ聴講するだけでは友人知人は増えないので、オフラインで懇親会つきのものに参加していくことになります。イベントの少ない地方に住んでいる場合は厳しいです。

契約的には「フリーランスになる」という手段もありえるが…

一か所に留まることがそもそも嫌いな方も居られます。携わるプロジェクトを定期的に変えられるという点でSESやSIerなども検討して良いでしょう。ただ多くの場合、過去の経歴に数社のSESやSIerがある方も少なくなく、そうした方にとっては根本解決できるわけではありません。

究極的にはフリーランスになるというのも考えられますが、これは人に依ります。余程腕に覚えがない限りはお勧めしにくいです。

人材業界は責任が持てないなら煽るな

ここのところ、様々な人材紹介会社のCMが活況です。以前から『現職に不満があったら登録しよう』というメッセージが多いのですが、これはジョブホッパーの増加にも繋がっています。集客をしておきつつも決まりにくい人材が入ってくると急に音沙汰が無くなります。

また、先日Querie.meにてご質問頂いた内容は「人材紹介会社から『内定が出る前に現職に退職の意志を伝えましょう』と言われたのですがどういうことでしょうか」というものでした。恐らくは人材紹介会社にとって一円の売り上げにもならない現職残留されることを避けてのお話でしょう。

内定が出るかどうかも分からず、オファー条件もわからない状態で候補者に退路を断たせるとはどういう了見でしょうか。理解できません。責任を取れないのにこのような働き掛けをする人材紹介会社が居るとは、悪質過ぎて目眩がします。いつも書くことではありますが、他人の人生で遊び過ぎです。

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