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「君の瞳に恋してる」

2021年11月29日 17時 しおんさんが生き切りました。

7歳と一般的にはまだ生きられる年齢ですが、しおんが見せてくれた姿から敢えて「生き切った」と表現します。

糖尿病の重症化状態「ケトアシドーシス」から、一度は退院の話が出るくらいに奇跡的な回復を見せたのですが、急変しました。多臓器不全。猫は肝臓が元々人間ほど強くなく、一旦崩れてしまった身体の中のあらゆる物質のバランスを保ちきれなくなってしまったということのようです。先週のちょうど今頃(11/23の夜)、異変に気づいてからあっという間でした。

一夜明けて今朝奇しくも3年前のFacebook投稿がリマインドされてきました。

冬の楽園でひゃっほいする #しおんさん 部屋の奥まで日差しが入ってくる冬は どこをごろごろしても陽があたる 日向ぼっこし放題の楽園と化します 夏は窓際に1猫幅程度の日差しなので 季節は確実に巡ってるんだなあ

Posted by 高木 真紀 on Saturday, November 30, 2019

ちょうど同じような日差しが入るよいお天気の日。今は姿を変えてこの写真のように日向ぼっこをしているように思えます。頭では理解していますがまだ気持ちが追いつきません。向き合うという意味でも記憶が薄れないうちに入院からのことを書き留めておこうと思います。



11/25(木)
入院。経緯はこちらに。突然のことに泣きはらしてしまいましたが、翌日は早朝からラジオの仕事。書くことでなんとか気持ちを落ち着かせて就寝。


11/26(金)
早朝からラジオの仕事。こちらにも書きましたが、しおんや先生方ががんばっているからわたしもがんばらなきゃ。現場では声や顔に影響が一切出ないように、いつも通りにお仕事をさせていただきました。

仕事を終えて病院へ。点滴を受けてケージの中で回復に努めるしおんさんと二人きりにしていただけました。時間を気にせず居ていただいていいですよ、との言葉に甘えて1時間ほど一緒にいたと思います。しばらくすると管がついたままケージから出てきました。抱っこされたいのかなと思い少しだけ抱かせていただきました。多尿によるおしっこがついていましたが気にせずに。ケージに戻ってもらったあと名前を呼んだら僅かにしっぽを振ってくれました。病院へ連れてきたときより回復している。入院させてよかった。「しおん、がんばってるね。ありがとう。」と伝えて面会を終えました。

11/27(土)
朝イチで面会。「ケトアシドーシス」の要因となる「ケトン体」が抜けてきたとの嬉しい報告を受ける。目の力が戻ってきている。ただ、まだごはんを食べないとのこと。家で使っているタオルを持って行きました。いつもの匂いがすれば食べるきっかけになるかなと思って。ケージの中でがんばっているしおんさんの傍に自分でタオルを置いていきました。しおんはわたしの匂いが好きで着ていた服や使ったタオルの上で寝ていました。その後、わたしは自宅での収録をがんばりました。

11/28(日)
朝イチで面会。「ケトン体」が抜けた!との嬉しい報告。すごい!しおんさん!インスリン療法へ切り替えて安定すれば、自宅で毎日わたしがインスリン注射をして血糖値コントロールをする生活ができるとのこと。次のフェーズへ進めそう!

「早速これから投与する量などを決めていくので、夜もう一度きてください」ということで、その日の夜、Voicyの収録前に病院へ。点滴が外れている状態で診察台に連れてこられたしおん。まだぐったりしているけど目がしっかりしている。低体温だった身体もあたたかい。「安定しているので今日このまま退院できます」とのこと。ただ、翌日ラジオの仕事が入っていたので仕事の後に迎えに来ることにしました。インスリン注射の打ち方だけ教わって(目の前で打ってみせてくれました)、明日からこの生活が始まるんだね。一緒にがんばろうねとお互いに覚悟をする時間でした。

帰り際、診察台にいるしおんと目を合わせながら「明日迎えにくるね。待っててね。」と声をかけながら診察室から出ていく時、わたしの目に合わせてしっかり目が動いているしおん。目で会話するいつものコミュニケーション。一瞬「写真を撮っておこうか」とも思いましたが「明日帰ってくるし、弱っている姿は残されたくないだろう」と思いとどまったのでした。

これがお互いに直接コミュニケーションを取れた最後の瞬間となりました。今でも目に焼き付いています。忘れたくない。

以前テレビで "猫同士では「にゃー」と言葉を発さずに会話をする。人間に伝えたいことがあるときに「にゃー」と言う。"と紹介されていました。わたしたちは確かに目だけでコミュニケーションをよく取っていました。目の高さを合わせて、じーっと見つめ合う。だいたいしおんさんの方が先に逸らしていました。あと、しおんはしっぽでよく返事をしてくれていました。「目としっぽは口ほどに物を言う」でした。手もよく握っていました。朝起きると手のひらの中にしおんの肉球が触れていることも多くありました。眠い時はアツアツの肉球。わたしが精神的に落ちている時などに手を繋いでいてくれたのだと思います。これまでの写真や動画を振り返ると、目と手としっぽばかり。(何かと動画も撮っておいてよかったです。倒れてから最初に思ったのは「もう声が聞けなくなるかもしれない」ということでした。仕草や声を記録しておくことは大事だと思いました。映像の力は大きいです。)


11/29(月) 
早朝からラジオの仕事。代打を務めました。今日しおんが帰ってくるという嬉しさを心に秘めてお仕事をさせていただきました。午後はナレーション収録。いつもは15:00スタートのところたまたま早めにスタジオのロビーで待機していたわたしに、スタッフさんがたまたま通りかかって「早く準備ができたので早く入れます」と声を掛けてくださり、30分早く収録開始。早く終えることができました。また、後にアポイントがあったのですがこれはわたしの勘違いが原因で日程変更をすることになりました。予定よりも3時間以上も早く迎えに行ける!昨日教わった注射の打ち方を頭の中でおさらいしながら電車に乗りました。15:30に移動開始。

16:00頃 病院から電話。急変を伝えたかったようですが、まだ電車の中。早朝3時起きだったのでうとうとしていて「電車なので後でまた掛けます」とだけ伝えて、危機感を感じないまま一旦帰宅して荷物を置いてから病院へ。

家を出るとき、ここでしおんとの生活がまた始まる。今度は毎日注射を打つ生活だと腹を括って向かいました。16:30過ぎた頃だったと思います。

そこで先生から告げられたのは、しおんが多臓器不全に陥ってしまい深刻な状況だということ。事態があまり飲み込みきれていないまま説明を受けている間に奥から「先生!」と呼ぶ看護師さん。ぐったりとしたしおんが慌ただしく抱きかかえられて医療ドラマなどでよく見る機器がある部屋へ。薬の投与や心臓マッサージが始まる。

手を尽くしていただきましたが、もう目を開くことはありませんでした。
正確な時間は見ていませんでしたが17時頃、しおんは旅立ちました。

17:40頃きれいにしていただいたしおんと帰宅。看護師さんが棺に入ったしおんを家まで抱えてきてくださいました。

看護師さん曰く「到着を待ってがんばっていたのだと思います。到着した声が聞こえていたと思います。来たことがわかって安心したと思います。」

そうだ、しおんさんはわたしの声が好きだったね。
最期に声が聴きたかったんだよね。待っててくれてありがとう。

昨日伝えた「明日迎えにくるね。待っててね。」が違う形になったけど、待っててくれたんだね。帰ってきたよ、しおん。

18:30 ラジオの再放送を一緒に聴きました。まだこうなるとは予期していない時のわたしの声。番組のおしまいに流れてきたのは「君の瞳に恋してる」。(原曲であるフランキー・ヴァリのバージョン)

あぁ、わたしたちは出会った時から目と目を合わせて恋をしてたんだ。


ふわふわもふもふに触れていたくてとても迷いましたが、しおんさんが死後変わっていく姿をわたしに見せるのは嫌がる気がして、その日の夜遅くに葬儀屋さんに来ていただきました。とても優しくて格好いいしおんさんのまま葬儀を行い出発しました。


最期の瞬間、幸いにもわたしたちは同じ空間にいることができました。わたしは偶然早く帰れたし、わたしが病院へ駆けつけるまでしおんは待っていてくれた。退院させていたら家でひとりで旅立たせてしまった可能性もある。思えば倒れてからここまでの間、すべてが奇跡的なタイミングで仕事に全く影響がでませんでした。

しおんはわたしに後悔を残さないように生き切ってくれました。本当によくがんばりました。気持ちが落ち込んで「たられば」を考えてしまいそうになるたび、それはしおんが望まないと思えています。本当にすごい猫です。格好よくて優しい最高の彼氏。恋というより愛でした。

頭に浮かぶのはありがとうという言葉ばかりです。

おうちに来てくれてありがとう。
お留守番ありがとね。
一緒に寝てくれてありがとう。
甘えてくれてありがとう。
わたしの仕事をいつも応援してくれてありがとう。
わたしの声を好きでいてくれてありがとう。
幸せそうな顔でそばにいてくれてありがとう。
帰省についてきてくれてありがとう。

これらすべてをこれまで日常的に声に出して伝えてきました。伝わってると確信しています。


昨日から今日にかけて、しおんの写真や動画を整理しながらこの7年を振り返りました。会社員から伝える仕事への転換期。わたしの仕事を応援してくれていたしおん。わたしの声が大好きだったしおん。特にこのコロナ禍の2年弱は家で仕事することも多く、沢山一緒に居られました。

前を向いて仕事に励むことがしおんの望みだと思っています。これからはどこへでもついてきてくれるね。いつも一緒だね。よろしくね。

最後に、SNSなどを通してしおんを愛してくださりありがとうございました。

伝えびと 高木真紀



※日付が変わらないうちに投稿したかったので一旦書いたまま公開します。画像などを後で追加するかもしれません。

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