見出し画像

#54 ポニー・トレッキング

※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです

“アフリカのスイス”と呼ばれているレソト。南アフリカ共和国の中にポカリと浮かんだ小さな国。
この国で、マレアレアとセモンコンという小さな2つの村を訪れて、2回もポニー・トレッキングを体験した。

馬に乗るのは初めてではないけれど、かなり前に栃木県のとある観光牧場で30分程度乗って以来、約10年振り。北海道出身のわたしは、よく他人から「馬や牛に囲まれて育ったの?」と聞かれるけれど、牧畜地域で生まれ育ったわけではないので、馬にも牛にもほとんど縁は無かった。有名な北海道産の”道産子”だって、数回しか見たことがない。

恥ずかしながら、ポニーを「馬の子供」と思い込んでいたくらい無知だった自分。
Wikipediaによると、ポニーは「肩までの高さが147cm以下の馬の総称」で、特定の品種を指すわけではないらしい。だからポニーは大人になってもポニーのままなのだ。

マレアレアもセモンコンもポニー・トレッキングの基地として有名な村。
数時間のミニ・トレッキングから、数日かけて一方の村から他方の村へ行くトレッキングまで、コースはバラエティ豊富(その場合は途中の村でホームスティさせてもらう)。
今回わたしはどちらの村でも、約4時間かけて滝を見に行くツアーを選んだ。前述の通りポニーは小さめの馬を指すのだけれど、どちらも「これが本当にポニー??」と思うくらい大きく感じた。どう見ても小馬ではなく、「馬」と聞いてイメージする馬の大きさ。自分一人で乗ることができず、ガイドの手を借りて、最初は恐々とまたがることから始まった。

マレアレアで乗った馬の名前はスーパーレックス。
マイペースで、すぐにトレッキングの道を外れては草を食べ始めてしまう。そうかと思うと、一緒に参加した人達とは違う方向に突然走り出してしまったり。その度にガイドから「手綱を強く引いて!」とわたしが怒られてしまうのだけれど、そんなことにはお構いなし。ラオスのルアンパバーンで乗ったゾウのカムーン(彼女も相当マイペースだった…)を思い出して、なんだか笑いが込み上げてきた。

セモンコンで乗った馬の名前はレタービリー。
こちらはうって変わってとても賢く、よく言うことを聞いてくれて、本当に従順だった。乗る前にガイドからムチを渡されたけれど(スピードをあげたい時にお尻を叩くため)、道を外れることもなく、いつも適度なスピードで進んでくれたので、ほとんど使う必要はなかった。

どちらの村で参加したコースも、一見かなり危なそうに見える崖の細い道を進んで行く。そのため最初は怖かくて、馬の上にいながら足がすくみ、手に汗をにぎった。崖はゴロゴロとした石の道なので、固い馬のひづめだとズルッと滑ってしまうことも多々。その度にヒヤッとして、「一歩間違えて踏み外したら確実に死ねるなぁ…」「万が一そうなったら、苦しまずに一瞬で死にたいなぁ…」などと思ったりした。

けれどもそんな”ズルッ”にもいつの間にか慣れてくると、不思議と恐怖心は消えていった。

彼らは本当に賢い。
一見、わたしが手綱で操作しているように見えるけれど、彼ら自身が、安全で歩きやすい道をちゃんと判断して進んでいることがわかってくる。今は彼がわたしの相棒。彼を信頼して任せておけば大丈夫。「万が一の時は一蓮托生だから、信じてるよ!」そんな気分になった。

晴れた日に見るレソトの風景は、本当に美しかった。
気持ちに余裕が出てきて、緑豊かな山々や小川の流れを見ながらそよ風をあびていると、心は更に高揚し彼と一緒に駆ける自分を想像したりした。自分のポニーが欲しい。日本に帰ったら自分のポニーを育ててみたい。 そんな風に思った。

マレアレアで行ったポニー・トレッキング
マレアレアでポニー・トレッキングして見に行った滝
一休みして草を食むスパーレックス
マレアレアの小さな滝の横で手作りの楽器を演奏していた二人
独特のブランケットを纏ったバソト族
馬の世話をしていた地元の人々
マレツニャーネの滝を見にいくポニートレッキング
マレツニャーネの滝を目指して進む
独特のブランケットを纏ったバソト族
レソトでは美しい山々の風景に何度も魅せられた


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?