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「父になる」は「母になる」と時間差がある

出産予定日まで後86日。明日からはとうとう「妊娠後期」に突入する。身の回りでいちばん早産だった知り合いが産んだのがこの週数。だから私は「これからはいつお母さんになってもおかしくない」というドキドキ感を今から既に持っている。ただ彼としてみれば「後86日」はまだまだ先のこと。ベビー用品の買い出しに行かねばと声をかけても、早すぎない?という案配。

ただよく考えると、女性というのは、妊娠したら少しづつ「母」になる。お酒を飲まずに生肉を避け、大好物のジェノベーゼもバジルに子宮収縮作用があると聞いてからは、食べていない。コーヒーだけは時折飲むけど、基本はノンカフェインのお茶で我慢。

そして胎動を感じるようになってからずっと、お腹の中の人の成長を、胎内キックやパンチの強さで直接的に実感する。仕事中はおとなしいのに、横になったとたんに元気になる。「美女と野獣」のテーマソングを流すと嬉しそうにぽこぽこする。

そんな経験をここまで積み重ねてきた私と、蚊帳の外の彼。同じ気持ちになるのは、そもそも無理があるのだと私は思う。十月十日もの間、胎内で別の命を預かるということ。それは今まで「妊娠」とは無縁だった私が想像していたよりなかなかに大変で、だけど一方でなんともいえない、いいものでもあった。

そんな彼が今日、出勤前に私のお腹をポンポンと叩いた。きっとそれは彼なりの、いってきます、の合図。

今、彼は私が最初にエコー写真をみた時と同じ心境なのかもしれない。自分が関わった命が芽生えているという、何だか荘厳な気持ちと本当に自分にできるんだろうかという戸惑い。

9月に妊娠が発覚してから今にいたるまでの自分の気持ちの変化を思い出す。
「戸惑い」が「喜び」、そして「覚悟」になるまで約半年。

彼の中の「父になる」が少しづつ芽生えていくのを今はあせらずに見守っていきたい。そう思う。






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