73. とんでもない声を遠隔で、5人はいまも歌っている。
Five Men Singing が帰ってくる。
だれにも望まれていないのに。
みんなが知っている声の怪物たち。
スーパーな声の共演がまた実現する。
ドイツ、オランダ、英国、カナダ、そして日本から回線でつながり、
この度はオンライン上で。
Five Men Singingは、2003年カナダのFIMAVに出演するために結成した。メンバーは、フィル・ミントン、ヤープ・ブロンク、デビッド・モス、ポール・ダットン、そして巻上公一の5人である。たしかカナダのトロント在住の音響詩人ポール・ダットンの発案だっただろうか。あまり定かではないのだが、声の冒険者というか通常の声の表現を逸脱しているスペシャルな人間を集めてみたい、ということだったと思う。
声にもいろいろある。美しく人々を魅了する声もあれば、一瞬にして地獄に叩き落とす声もある。メロディーがあるのかないのか、鳥か動物か、果たしてこれは人間の声なのか、あらゆる声の可能性を追求して、それをひとつの表現に高めるには、より多くの教養と鍛練、想像力が必要である。
最初は、データファイルを転送して行き、いくつかの実験的な声の作品を作ろうとしたのだが、これが思うようにいかなくて、一年くらい経った頃、カナダのケベック州の片田舎ヴィクトリアヴィルで毎年開催されている、第20回Festival International Music Action of Victoriavill (国際今日的音楽フェスティバル)の出演を取り付けたのをきっかけに、全員が集合した。
イギリスからフィル、オランダからヤープ、ドイツからデビッド、地元カナダのポール、そして日本から参加のぼく。そのプレミアは、SARS(重症急性呼吸器症候群)まっただ中のトロントの中華街の会場だった。
声の暴れ馬のステージングをまとめるのは、悩ましいものだ。基本は即興演奏なのだが、イギリスのビル・コビンの図形楽譜や、それぞれが作曲した小品などをプログラムに配置して、1時間ほどのコンサートを作った。
ゲッ ピピ チュロモー ザバザバ ドヒャー ホメロマクー ヘンテロ ノミャーと研ぎ澄まされた熟練の奇声が空間に放たれた。
これをケベックの地元のラジオ局が録音し、フェスティバルが運営するレーベルVictoでCD化されたのが2004年である。その後、16年に渡って、どこのフェスティバルからもお呼びがかからなかったのがとても不思議である。なんでなのかねー。こんなに面白いのに。
そして2020年、コロナ禍の中突然のようにリモートで繋がった5人。YouTubeを通じて突然のように遠隔セッションを公開しはじめた。
巻上公一
https://www.youtube.com/watch?v=5DQoanwxxX4
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