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〔少年サッカー〕今、子どもと一緒に見るべき選手は誰?

少年サッカーを楽しむ、パパコーチ体験記の第9弾!

今、子どもと一緒に見るべき選手No.1、ベリンガム選手について、書きます。

ベリンガム選手は、こちらの原稿でも、理想とすべきプレーのモデル選手として挙げさせていただきました。

と言いつつも、僕自身、ベリンガム選手のプレーをしっかりと見たのは、前回の原稿を書く時が初めてでした。
ベリンガム選手が素晴らしい若手選手であるということは知っていても、昨年までブンデスリーガのドルトムント所属だったので、あまり見る機会がなかった。ワールドカップやチャンピオンズリーグで、たまにプレーを見る選手という感じでした。(そういう方も多いのではないでしょうか)

今期、レアルマドリードに移籍してから、そのプレーぶりを見る機会が増えました。(ベリンガムについて書くのが遅すぎるぐらい遅く、今更感がすごいですが)育成年代のあらゆる選手が、お手本にすべきプレーヤーだと思います。


そもそも、なんでプレー映像を見るの?

一番の理由は、”子どもと見ると、一緒にサッカーの話ができて楽しいから” なのですが、子どもの上達という面でも、すごく役に立つと思います。

風間八宏さんは「指導者はデモンストレーションストレーションができなければならない」と言っています。
僕も、サッカーの自主練において「プレーがイメージできること」は、上達の上でとても重要だと思います。
同じ練習をしても、プレーイメージがあるかどうかで、2、3割は上達速度は変わってくるのではないでしょうか(※ 個人の感想です)

進化した哺乳類には、脳にミラーニューロンがあると言われています。

ミラーニューロンについて、ざっくりいうと、「人の行為を見ている時にも、行動している時と同じ脳の部分が反応していて、その行為を理解しようとしている」という脳の働きのことです。

これをサッカーに当てはめて言うと「あるプレーを見ると、それだけで、そのプレーに関連する脳の部分が刺激を受け、そのプレーに必要な身体の動かし方を理解しようとしてくれる」ということです。

脳を刺激して、一度学習させた上で練習した方が、上達が速いということは、納得できることではないでしょうか。
(※ミラーニューロンは研究の途上です)

実際にプレーのデモンストレーションを見た方が良いのは間違いないのですが、親である僕自身に再現できるプレーには限界があります。(限界値低め)
だから、親ができないプレーについては、たとえ動画映像であっても、サッカーの試合やYoutubeでスーパープレー集を見てプレー・イメージを持つことは、子どもの上達という面ではすごく良いことだと思います。

あと、子どものモチベーションの面でもよい。
好きな選手ができれば、それだけで練習モチベーションは、120%くらいにはなると思います。


ベリンガム選手のプレーを見るのはなぜ?

長男のチームのケースや、周囲のチームの話を聞くと、ジュニアの時のポジションが、ジュニアユース以降のポジションと異なるのは普通のことです。

育成面視点でも、ジュニアユースの段階では、将来的にどのポジションの才能があるのかまだわからないので、ある程度複数のポジションをやるのがよい、というのが定説のようです。

バルセロナのラ・マシアでは、いろんなポジションをすることが徹底されていて、育成段階ではブスケッツはセンターフォワード、プジョルは右ウィングだったそうです。
さまざまなポジションでプレーすることで、それぞれのポジションのプレーに対する理解を深める狙いがあるそうです。
ブスケッツであれば、センターフォワードがどんなタスクを担っているのか、そこでどんなパスを受けたいと思うのか、逆にどんな守備をされるといやなのかなど、を理解した上でピボーテとしてプレーするのと、それがないのとでは、戦術理解に差がつくということでしょう。

そういう話をよく聞くにも関わらず、うちの長男は、U13の段階でFWからディフェンシブなポジションにコンバートされて、公式戦のポジションは100%固定されまました。なぜ??? 他の可能性は?? 戦術理解は?

ジュニアユースの期間を通じて、少しずつポジションが決まってきますが、ユース年代でも普通にポジションのコンバートはあるようです。
なので、将来に向けて、できるだけ多くのポジションをするための準備をするのがよいと思います。

そう考えた時に見るべきと言えるのが、”22番”のベリンガムなのです!(断言)

ベリンガム選手について詳しく知らない方(たとえば、少し前の僕)のために、簡単に経歴を説明します。
2003年にバーミンガムで生まれ。8歳からバーミンガム・シティFCのアカデミーの入り、2019年に16歳でのクラブ最年少でデビュー。2020年にボルシア・ドルトムントに、2023年にレアルマドリードに移籍しました。
お父さんもセミプロ選手として、地元では有名な選手だったそうです。

バーミンガムのアカデミー当時、背番号は22番でした。
育成時のコーチであったマイク・ドッズ氏が、「4番にも8番にも10番にもなれる」つまり、守備的MFからFWトップまでどこでもできる選手である、として4+8+10=22を与えたそうです。

ポジションの背番号は、国によって異なります。
イングランドの442システムでいうと、4番は守備的MF、8番は攻撃的MF、10番はFWになります。
https://ja.wikipedia.org/wiki/サッカーの背番号

トップレベルでも、様々なポジションでプレーしています。
イングランド代表では守備的MFが多いですが、レアルマドリードでは、トップ下に固定されて、得点を重ねています。

先日(2023/10/28)のクラシコでも、バルセロナ相手に2得点。
正直いって、この試合では、流れの中ではそこまで目立ったプレーはありませんでした。しかし、こぼれ球に対する読みと反応が速い。
それが、試合を決定づける働きにつながりました。

長男の時に、僕がよく見せていたのは、フレンキー・デヨンクでした。
彼は、180㎝とオランダでは背が低い方なのですが、センターバックからFWまであらゆるポジションをこなします。
バルセロナのようなトップトップのレベルで、インサイドハーフからセンターバックまでやれるのは、知性と技術とフィジカルのすべてを備えているからです。


ザ・マルチロールのフレンキー

ベリンガムのどこを見るの?

ベリンガムは、本当にポリバレントな選手です。
ハイライトになるようなプレーも多い。
子どもにはYoutubeのプレー集を見せるだけでもよいと思います。

ベリンガム選手は、「すべてが高いレベル」にある選手だと言われています。
技術があり、強度の高い守備ができて、最後まで走り切れる。

その中でも、最も優れた点は、認知・判断にに関わる「知性」だと言われています。僕もそう思います。

攻撃面では、
● 「認知力」が高いので、相手につかまらない(もしくは味方をフリーにする)ポジションが取れる。
● ボールを持てば、ドリブル、パスなどプレーの「選択肢」を複数想起でき、そこからのプレーの「判断」を間違えない
● そして、その判断を「実行」できる高い技術があるので、シンプルなプレーでも難しいプレーでも、確実にチームが勝つためのプレーを実行できる。

守備面でも、
● 「認知力」を活かした正しいポジショニングから、「強度」高く、試合の最後までプレーできる。
● ボールを奪いに行く、行かないの「判断」もほとんど間違えない
● フィジカルもあるので、デュエルにも勝てるし、スライディングでも奪える

クリエイティブなプレーヤーでありながら、インテンシティの高い現代サッカーに絶対必要な守備力を持っていることが、ベリンガムと他のミッドフィールダーとの大きな違いだと思います。

これだけなんでもできて、まだ20歳。


子供と一緒にベリンガムのプレーを見る時、子どもに話をすべきポイントは、「どこで周囲を見て、どんな判断をしているのか」という、「認知」と「判断」のところだと思います。
(これをちゃんとやるには、ハイライトでは足りなくなるので、フルマッチを見る必要があります。もし子どもが長く付き合ってくれない場合は、親が事前に確認して、早送りをしながら見ることで対応です!)

高校生のぐらいの頃に読んだマラドーナの本で、なんのためにプレーするのか、という話を読んだことが記憶に残っています。

「子どもの頃は、僕より上手いプレーヤーもいた。でも、彼のプレーは、気が向いたら3人抜いてラストパスを出す、という感じで、気まぐれなものだった。その技術を勝つために使うことができなかったんだ。そのうちに彼は見ることがなくなってしまった。そこで僕は、勝つためにプレーすることが大事だと気づいたんだ」
(30年前の記憶をもとに書いてます。内容はあっていると思いますが、文面は大きく異なっている可能性があります)

ベリンガムは、100%「勝つためにプレー」している選手。
勝利が義務付けられていたレアル・マドリーにピッタリの選手です。

『マラドーナのスーパーサッカー』より、記憶に基づいて抜粋。



そのために、何をトレーニングするの?

もちろん、ベリンガムのような認知・判断力をジュニア年代で身につけることは難しいでしょう。(もちろん、20歳であろうが30歳であろうが、ベリンガムのレベルに到達するのは難しいですが…)

それでも、ベリンガムのプレーをイメージして練習することは、将来の子どものプレーによい影響があると思います。

では、そのために、ジュニア期には、どんなトレーニングをするべきでしょうか。

まずベースとして一番重要なのは、「周りを見ること(=認知)」が、無意識の習慣として、できるようになることだと思います。
(それ以外にも、強度などいろいろありますが、一番はコレ!)

「認知」ができると、ジュニアユース以降のチーム戦術の中で、
自分で「選択肢」を見つけやすくくなり、「判断」をする機会が増えます。

そして、「判断」の機会が増えると、成功と失敗から学ぶ回数が増え、結果として判断力が磨かれることになります。

遠藤亘選手は「奪いに行くかどうか迷ったら、行く」「行ってみると、意外と奪えることがある」と言っています。
「どんな時に奪えて、どんな時に奪えないか」の判断は、経験を通じて日々アップデートしていくことが必要だということだと思います。
そして、これはブンデスリーガとプレミアリーグでも異なります。リバプールに移籍した遠藤選手は、今その判断基準のアップデート中ということではないでしょうか。

サッカーでも、料理でも、仕事でもなんでもそうですが、チャレンジの回数だけ、判断力は磨かれるということです。

そのチャレンジためのベースが「認知」であり、それができないと「判断」の経験回数が減り、結果として判断力が磨きにくくなってしまいます

「認知」を鍛えるため、何をすればよい?


長男は、下の四つのことができるように、トレーニングをしました。
❶コントロールの時に、ギリギリまで周りを見られるようにすること。
❷コントロールの時に、ギリギリまで相手を見た上で、
  相手に取られない位置にボールを置く技術を身に着けること。
❸ドリブルで運びながら、周りを見られるようにすること。
❹プレー中に、遠くの相手とスペースを見る癖をつけること。(特に
オフザボールの時)

❹は、中村憲剛選手が言っていたことです。
「例えば、ピッチの真ん中にいるとしたら最終ライン、右サイドにいるとしたら左サイドの奥の方とか。そうやって遠くを見ておくと、自然と手前の方も見えるようになってくるんです。」
「若くてもできるような選手はいるし、それはセンスだと思います。僕の場合は培ってきたというか、普段からそういう風にやろうとしていて、だんだん見えてきたという感じです。最初は遠くに蹴られるようになりたいなと思って、遠くを見るようにしていたら、だんだん見られるようになってきたというか」
この話は、長男に、何度も話をしていました。
少しはプレー中に意識していたと思いたい。(願望)
(中村選手のインタビュー記事)

やるべき練習は、これまでにも紹介したパスコントロールや、高速ドリブルなどでよいと思います。ただ、練習の時に、子どもに認知をより強く意識させるように伝えることが大事だと思います。
可能であれば、ボールは間接視野で見てプレーするように伝えます。

また、子どもは「首を振っていても、何も見えていない」こともあるので、練習の時に何を見るのかは決めておいた方がよいです。見る対象は、親の手の動き、近くにある木や街灯などなんでもありです。
(たとえば、パスコントロールの時に、親の手がグーならば右へコントロール、パーであれば左へコントロール、チョキであればリターンなど、条件づけをしてもよい)

練習の効果は、「こどもの意識」と「親の声がけ」によって変わります。(間違いない!)

下の2つは、これまでに書いた練習内容です。
詳しくはこちらを見てください。


1.ドリブル・タイムトライアル

これは、U5~8ぐらいに実施していた練習方法です。

センターサークルぐらいの円をグラウンドや家の周りにみつけて、その一周のドリブル・タイムを毎日数回、計っていました。所要時間は5分未満。

2.高速パス・コントロール

これは、U5~U11に実施しました。
左右にマーカーを置いて、強いパスで行う対面パスです。所要時間は5分。
子どもは、コントロールを左右のコーンの外側に行います。
コントロールで1、キックで2のツータッチでボールを返します。リズムはイチニの二拍。

みんながやってるパスコンですが、大切なのはパススピード、止めてから蹴るまでのスピードです。


最近は、無意識下のプレーを鍛えるヴィセラル・トレーニングというのもあるようです。(本がでているようですが、読んでません!)
この記事では「スキャン」という言葉で認知のことが語られています。


他にも、長男が小学生当時に流行していた、「脳の反応を鍛える」ライフキネティックなどもやってみました。ただ、そんなに頻繁にやるほど時間に余裕がない(子どもが許容する自主練時間はそんなに長くない)ので、継続的には実施できませんでした。
認知力を高めるために、脳にいろんな刺激を与えるのはよいことだと考え、いろいろなことをちょっとだけ試していました。

『ドイツサッカーに学ぶサッカートレーニング術』より。参考になる点の多いよい本でした。


フレンキーのプレーを見せて、U9ごろから認知を意識して練習してきたはずの長男は、ジュニアユース最終学年の現在、それなりに認知力を発揮しています。

プレーの選択肢が、どこまで見えているのかわかりませんが、パス10本に1、2本は、リスクのあるパスにチャレンジをしています。
相手チームのハイプレスをひっくり返すナナメのロングパスや、相手の逆をついて差し込む縦パスなど、「そこが見えていたか」というプレーが、極たまにあります。
その頻度が低すぎることが気になるところですが、それはとりあえず「これから楽しみ」としておきます。


読んでいただきありがとうございました。

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