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〔少年サッカー〕サッカーは教えすぎると、個性は消えてしまうの!?

少年サッカーを楽しむ、パパコーチ体験記の第11弾!

サッカー育成では、個性を育てることが大事だと言われています。

そのため、子どもの頃にサッカーを教えすぎることに反対する意見もみられます。「教えすぎると子どもの個性が消えてしまう」「中高生になったときに強みがない選手になってしまう」というわけです。
いわゆる、オーバーコーチングと言われる問題で、長男が小学生の頃からあり、今もSNSで見かけます。

では、子どもの個性を損なわないためには、どのような練習をすればよいのでしょうか?

僕も、長男と自主練していた小学生のころに、このテーマについて考えました。(誰にでもあてはまる一般解のない問題だとおもっていたのですが、育成方針に影響を与えるので)

ここでは、僕なりの考えを書きます。
もし、同じように悩んでいる方がいれば、何かの参考にしていただければ。


サッカーにおける個性って何?

そもそも、サッカー選手にとっての「個性」とは何でしょうか?

技術的な特徴? 得意なプレー? できるポジション?
「選手の個性」という時には、その選手の得意なプレーというだけでは足りません。
たとえば、「ドリブルが得意」というだけでは選手の個性とは言えない。それが試合の中で武器として発揮され、チームの勝利に貢献しなければ個性としてみなされないということです。

「サッカー選手の個性」には、「強み」という意味が含まれています。たとえば、対人守備が弱いといった弱みが「選手の個性」と言われません。
さらに、試合で発揮される強みでなければ、強みとは言われず、もっと言えば、目標とするレベルでの強みにならなければ、個性とは言われません。

「選手の個性」は、「試合で発揮される、その選手の特徴的な強味」と言えます。

小学生の時にドリブルが得意だった選手がいるとします。
(小学年代は、5人抜いて得点するプレーもたまに見られますよね)
でも、彼が中高生になって抜ききれなくなると、ドリブルはその選手の個性とはみなされなくなります。
もし、大学でもプレーをしたいのであれば、そのレベルで抜くことができなくないと、個性とはみなされなくなる。プレーの環境によって、「選手の個性」は変わってくるのです。

どうやって、個性を育てるの?

「試合で発揮される、その選手の特徴的な強味」を育成するために、僕は個性を三つの要素に分割して考えていました。

「①好きなプレースタイル」「②できるプレー」「③試合で求められること」の三つです。「選手の個性」は、この三つの合致ポイントに現れると考えていました。

試合で勝つために「求められること」を、「できるプレー」で実行する。さらに、それを「好きなプレースタイル」で実行できれば、個性が発揮された状態になる、という考え方です。

昔からある、リクルートのキャリア形成のフレームワーク、WILL(やりたいこと)、Can(できること)、Must(やるべきこと)をベースにしています。

この内で、「試合で求められること」は、将来所属するチームによって決まってきます。なので、育成段階ではわかりません。
マンチェスターシティのようなサッカーがしたいといっても、5年後、10年後に子どもが所属するチームがどんな戦略をとるかなんて、わかるはずもないのです。
できるのは、どんなプレーモデルにも戦略にも対応できるように育てていくことだけ、です。(それが可能かどうかは別問題ですが)

ラキティッチのプレーが、バルセロナ時代とセビージャ時代でまったく異なるように、「試合で求められること=タスク」は、チームや監督によって変わります。
世界のサッカートレンドによっても変わります。
岡崎選手が、ディフェンシブ・フォワードとして珍しがられたのは昔の話で、今ではサラーだろうが、ハーランドだろうが、一流のFWも、みんな激しい守備をします。

数年前になりますが、バルセロナの下部組織出身の選手よりも、レアルマドリー出身者の方がプロレベルで活躍しているという記事がでていました。
ざっくりいうと、「バルサのプレーモデルに合わせて育成された選手よりも、いろんなプレーモデルを経験して育成されたレアルの選手の方が、他のチームに適応するのが早い」ということです。

これは世界のトップトップの話ですが、レベルは違えど、どんなチームや監督の元でも活躍できるような選手になってもらった方が、試合にでやすくなりますし、サッカーを続けやすくなります!


子どもの個性を育てるために大切なのは、「①好きなプレースタイル」を磨いていくことと、「②できるプレー」を増やしていくこと、だと思います。

「できるプレーを増やす」とはどういうことでしょうか?
サッカーの試合では、できないと試合に関われないプレーがあります。ボールを止める、蹴る、運ぶといったベース技術です。
個性を語る以前に、これらがある程度はできないと、サッカーが楽しめません! 
この記事での「できるプレー」は、ベース技術はある上で、「個性になる可能性のあるプレー」をイメージしています。例えば、スピードの速いパスを蹴れる、相手が近くにいてもターンができる、などです。

子どもの強みを伸ばす? 弱みを克服する?

子どもと練習するにあたり、強みを伸ばすことと、弱みを克服することの、どちらに取り組むべきでしょうか?

結論から言うと、両方だと思います。
但し、バランスは異なります。

まずは、強みを伸ばすことから取り組むべきだと思います。
子どもの「好きなプレースタイル」を明確にして、そのプレーの中で「できるプレー」を増やしていくこと。そこに、多くの時間を割く
一年生なら10割、三年生なら8割、五年生でも7割は、好きなプレーを練習すればよい、と思います。

小学生の時に一番大事なのは、サッカーを楽しみ、好きになること」です。これはずいぶん前ですが、長友選手が言っていたことです。
「なぜなら、中学、高校、大学と進むにつれて、どんどん辛いことが増えていく。その時に支えてくれるのは、サッカーが好きだという気持ちしかない」(発言の文言は違っているかもしれませんが、内容は間違いない。たぶん)
実際に、僕の知っている子でも、小学年代にすごくサッカーがうまくて、大活躍していた選手が、中学年代でどんどんやめていくのを見てきました。
けがや、試合に出れずスタンドから試合をみる時間を乗り越えるのは、中学生にとって、本当にきついことだと思います。

サッカーで好きなプレーを増やすため、うちは練習も利き足派でした
『少年サッカー 利き足派、両足派。あなたはどっち派?』

「好きなプレースタイル」を考える時は、ドリブラーなどの抽象度の高い言葉で考えるのではなく、実際の選手でイメージすることが大事だと思います。
平たく言えば、「どんな選手が好きなのか」を土台に「どこまでそのプレーに近いことができるようになるか」という道筋で練習していく、というスタンスです。

ここで大事なのは、子ども自身が「好き」なプレーであることです。親の僕やあなたがやらせたいプレーではありません。僕はディエゴ・マラドーナのプレーが好きでしたが、長男は、チェルシー時代のディエゴ・コスタが好きでした。同じディエゴでもプレースタイルはまったく違う。
長男は、シュート練習は好きでしたが、ドリブル練習が好きではありませんでした。親と子は別の人間なので、好みが違うのも当たり前です。
「好きなもの」は小学生でも尊重されるべきです。そこには理屈なんてなくてもいい。そこを尊重しないと、子どもが何が好きなのかわからない人間になってしまうかもしれません。

好きな選手は、最初は一人でもよいですが、どんどん増やしていった方がいい。これが「できるプレー」の幅を広げることにもつながります。

長男は、高学年に入るぐらいのタイミングで、フレンキー・デ・ヨングのことも好きになりました。ディエゴ・コスタとは全然違います。
これは、僕がデ・ヨングの映像を「ここがスゴイ!」と言いながら、たくさん見せた影響だと思います。センターバックからシャドーストライカーまであらゆるポジションができる選手で、本当に学ぶべきプレーが多い。

ちょうど、アヤックスでの大活躍の後、バルセロナに移籍するタイミングでした。その移籍金額の高さをきっかけに、「すごい選手」だと長男が認識して、興味を持ち始めました。(長男には、移籍金額が高い選手=スゴイ選手となった模様)

デヨングはこちらの記事でも少し触れています。
今なら、ベリンガムが好きなプレーヤーの中の一人になると、いろいろなプレーの映像があるので教える側としてはやりやすいとおもいます。


少しずつ「弱み」を消していく

前提として、弱みにどのぐらい着目するかは、そもそもの目指すところで、決まると思います。
もし、僕たちのように「競技サッカーを大学まで続けたい」と考えるのであれば、強みを伸ばしつつ、弱みも平均レベルまで高める必要があります。

明らかな弱みがあると、高いレベルでは「選びにくい選手」になってしまいます。そうして試合にでる回数が減ると、サッカーが楽しくなくなり、辞めやすくなってしまうでしょう。

とはいっても、子どもがいつまでサッカーを続けるのかなんてわからないですよね。
なので。楽しくサッカーを続けるために、小学生の高学年のころから、弱みを平均レベルに近づける練習も少しずつ加えていくとよいのではないでしょうか。


「弱み」は、プレーの一つ上のレイヤーで捉え直してみる

例えば、「身体が小さくて、一人でボールを奪えない」選手がいるとします。この時、解決のためには二つのアプローチがあると思っています。

一つは、身体を大きくするために、たくさん食べて、しっかり寝る。
これは、「身体が小さい」という問題を、「大きくする」ということ。いわゆる、「問題の裏返し」という解決アプローチです。

話がそれますが、「たくさん食べて、しっかり寝る」のは大事なことだと思います。特に育成段階ではサッカーだけでなく、生活という意味でも重要なことです。
サッカースクールで帰りが10時になって、睡眠時間が足りないなんてのは絶対に避けた方がいい。小学生の間は、ベースとして睡眠時間を10時間で考えるべきだと思います。世界の中でも、日本の子どもの睡眠時間は短すぎると言われています。

もう一つは、「一人でボールを奪う」の抽象度を一段階上げて、「ボールを奪う」で捉え直してみるというアプローチです。

実際に、試合中に1対1の局面はそんなにありません。思いつくのは、ウィングをサイドバックが向き合う局面だけではないでしょうか。それもボランチのカバーが来る前の5~10秒間ぐらいです。
そう考えると、2対2で守れるようになれば、試合で問題になる場面は、ほぼなくなります。そのためのポジショニングや間合いの詰め方、コンタクトの仕方が上達すれば、その選手の弱みは消せたといえるのではないでしょうか。

ここでは、問題の抽象度を少し上げて、解決方法を少し広げて考えてみる。その中から、子どもができそうな解決方法を探し出す、ということをしています。
これは、ほんの少しだけ高度なアプローチです。
問題をいろんな視点で見直してみる必要があるからです。

このアプローチを、小中学生の子どもが自分だけで考えることは難しいでしょう。
ここに、大人である僕たちの出番がある。その知識と経験が役立てましょう。

おそらく、ビジネス上では普通にやっていることだと思います。何か問題が起こった時に、解決のための案をっ幅広く出して、その中から一番筋のよさそうなものを探すのは、当たり前に行われる基本動作。
ビジネスでは、「問題の裏返し」で解決できるような簡単な問題は、すぐに解決されます。残っている問題は、裏返しの解決ができなかったり、難しかったりするものだけなのです。

チームのコーチも、解決アプローチを考えてくれる大人の一人です。ただ、沢山の子どもを預かるコーチが、自分の子供にそこまで注意を払って指導してくれるかどうかはわかりません。
高学年になり、子どもの弱みが気になるようであれば、親がコーチに相談してもよいと思います。どこまで納得できる返答が得られるかは相手のコーチによりますが、練習を見てくれている人なので、何かしら参考になることはあると思います。


どのように弱みの練習をしたの?

長男は、4年生から、弱みの解消に取り組み始めました。

「オフザボールの動き出し」の練習については、少し工夫しました。
高学年の長男は、ワントップのFW。成長期でカラダが少し重く、動き出しの初速が遅いところがありました。カウンターの時に、相手のバックの足が速いとうまく裏をとれない。で、時間を稼がれてチャンスをつぶしてしまうことが多かった。

なので、こちらの記事にあるような身体操作を高める練習はしながら、並行して、動き出しの判断を早くするような練習を始めました。

よく言われるように、サッカーにはフライングはありません。なので、相手よりいいポジションから早く動き出せば、スピードに乗った状態でスペースに飛び出すことができます。
このあたりの動き方は、サッカーの書籍やYoutubeで、親が調べて、長男と一緒に自主練メニューに取り入れました。

本棚を見るとその時に買った『イタリアに学ぶストライカー練習メニュー100』がありました。他にもいろんな本を買いましたが、イタリアはこのあたりの動きも細かくて、興味深かった。同じ円を描く動きでも、半円と三日月を区別します。笑

他の弱みとして、左足の速いインサイドキックやヘディングがありました。左足はスピードはそれなりにですのですが、どうしてもカーブ回転がかかって、パスがぶれてしまう。ヘディングは落下地点を読んで、競り合うことができませんでした。
このような苦手技術については、練習するしかありません。子どものフォームをスマホでとって確認しながら、毎朝の練習で、左足のキックを10本蹴るというメニューを入れるというようなことです。

ヘディングについては、当時イングランドで脳への影響が話題になっていました。なので、あまり練習しませんでした。サッカーは大好きでしたが、脳に対するリスクを取るのはないと判断しました。
やったのは軽いバレーボールでロングキックを蹴って、それを数回ヘディングやキャッチする練習ぐらい。空間認知力は鍛えたいと思っていました。
ヘディングについては、ジュニアユース年代のはじめは苦労していましたが、中学3年の間に少しずつ様になってきました。

個性は生まれるもの


ジュニアユース時代を振り返ってみると、その3年弱の時間の中で、長男の個性は、はっきりと変わってきました。
一番の要因は、ポジションがコンバートされたことです。

チームのコーチと話をする限りでは、対人の守備力、ロングパスの精度、味方に指示を出して動かす能力が、今の長男の個性として認められているようです。(本当?)

その強みには、小学生の長男がディエゴ・コスタをイメージして練習したボディコンタクト技術は対人の強さに活かされていますし、シュート練習で培ったキック精度は、ミドル、ロングパスの精度として、「ジュニアユース年代の長男の個性」に活きていると感じています。
しかしそれでも、このような個性をもった選手になることを、昔の僕はまったくイメージしていませんでした。

ここまで書いてきた僕の実感として、個性は「つくるもの」というより「生まれるもの」と捉える方がしっくりきます。

小学生の段階で、親は子どもの個性を決めつけることなく、変化していくものだと捉えるのがよいと思います。

ここで最初の問いに戻ります。


Q. サッカーを教えすぎると、個性は消えてしまうのか?

A. 親に、教えすぎはない。
  そもそも、個性は教えてつくれるものではない。


親が、子どもと一緒にいろんなプレーを見て「好きなプレースタイル」について学ぶ。それを「できるプレー」にするための自主練をする。
ここにおいて、教えすぎはない、と言い切れます。(断言!)

但し、親の好みの押しつけはNG。あくまでも子どもの「好き」主導で、親はそれをサポートする位置づけがよいと思います。
また、サッカーチームのコーチが、子どもの判断の場を奪うような指導をするのはよくないかもしれません。


長男は、今年でジュニアユースを卒業し、ユースに進みます。
サッカーの戦略が進化し、選手に求められるタスクが変わる中で、長男の「個性」は、これから先も変わっていくだろうと感じています。
ポジションも、まだ変わるでしょう。

数年後に子どもがどう成長するのか、サッカーの戦術トレンドがどう変わるのかなんてわかりようがありません。
そして、将来の子どもの個性も、どうなるのかはわからない!

どうせわからないのであればそれを認めた上で、子どもの変化の過程を楽しみたいと思っています。

海外のサッカーのインタビューで、移籍について選手や監督が、「どうなるか、見てみようじゃないか」という言葉でインタビューを終えるのをよく見ます。
初めて見た時は、自分のことなのに「自分のコントロールできないこと」として語っている印象があり、違和感を感じました。(移籍するのは誰? あなたではないの?)

今では、少し理解できます。
彼らには、「複数の関係者が複雑にかかわる移籍は、だれにもコントロールできないものである」という認識がある。だからこそ「経緯を見守る」のが誠実な態度だと考えているのでしょう。
サッカーに限らず、子どもの成長は、いろんな要素が絡まる複雑系です。僕たちは親としてやれることをやった後は、経緯を見守るしかないのかもしれません。


読んでいただきありがとうございました。

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京都 白峯神宮





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